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piece3 明確な悪意

カレシ募集中なんでしょ?

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「……え?」
予想をしていなかった出来事に、悠里の思考が止まってしまう。

男子生徒が、4、5人。勇誠学園の制服だ。

「カレシ募集中なんでしょ?ねえ、オレとか、どう?」
「いやいやオレだって立候補するわ!優しくするよー!」
「マジで、めちゃくちゃタイプなんだけど!付き合おうよ!」

口々に自分へと向けられる、身に覚えのない言葉に、悠里は身を固くする。


「なんですか、これ……」
やっとの思いで、カンナに問いかける。

彼女は悠里を見下ろし、微笑を浮かべた。
「私もね、昨日のこと、反省したんだ。イキナリ剛士くんを諦めろって言っても、アンタもタダじゃ引き下がれないよね」

そうして、悠里の手首を掴んだまま、門の方へ歩いていく。
男子生徒が歓声を上げるなか、カンナはガラガラと西門を開いた。

「だからさ。交換条件に、オトコ紹介してやろうと思って!」


ドン、と強い力で男子生徒の方に突き飛ばされた。

「おっと。あっぶね、大丈夫?」
1人の男子生徒に受け止められ、そのまま肩を抱かれる。

ビクッと悠里は身を竦ませ、慌ててその手から逃れた。
「す、すみません、大丈夫です」
震える声で、悠里は言った。

「逃げられてやんのー!」
他の男子生徒が囃し立てる。
「オマエじゃ、イヤだってよ!」
「え?じゃあ、オレはー?」
別の男子生徒が、反対側から肩を抱いてくる。

「やっ、やめて、ください」
必死に身体を捩り、その生徒からも逃げる。
すると今度は前に回り込まれ、頭を撫でられた。
「きゃっ」

「つうか、逃げ方かわいくね? 小動物っぽい」
「わかる! 声もかわいっ」
後ろからも、腕が伸びてくる。

男子たちの大きな笑い声が響き渡った。


それは、悠里の傷を呼び覚ます。
彼女をストーカーした3人の男子生徒の笑い声を。
そう、彼らも勇誠学園の生徒だった。

悠里の胸が、異常な速さで脈打つ。
怖い。怖い。どうしようもなく。

「いやっ!」
恐怖に突き動かされ、悠里は何とか男子生徒たちの傍から離れた。
走ったわけでもないのに、息が苦しい。


カンナが笑いながら、悠里の背を叩く。
「ほら、アンタの好きな、勇誠のオトコだよ。好きなの選びな?」
そうしてもう一度、思い切り悠里を突き飛ばした。
「何なら、全員でもいいし?」

バランスを崩して転んだ悠里を見下ろし、カンナは手を振った。
「じゃ、私帰るから。あとはよろしくー」


足が震えて、立てない。
悠里は転んだ体勢のまま、後ずさる。
「大丈夫ー?」
男子生徒に腕を取られ、抱えあげられるようにして立たされた。
「わっ、ケガしちゃってんじゃん。膝から血ぃ出てる」

両膝をつくようにして転んだため、擦りむいてしまっていた。
しかし今の悠里には、それに構う余裕はない。

「大丈夫? オレ、絆創膏持ってるよ?」
「やっ!」
脚に触れられそうになり、悠里は悲鳴を上げて逃げようとする。

「つっても、手当てしないとさあ。どっか座れるとこあるかな」
「あ、じゃとりあえず、みんなでカラオケ行く?」

男子生徒たちが、口々に賛同の声を上げる。
「いいじゃん! とりあえず、出会った記念ってことで!」

手を握られ、悠里は必死に振りほどく。
その拍子に、また転んでしまった。

「え?うっそ、ドジっ子?」
「かわいーんだけど!でも待って、ケガ増えるって」

悠里は首を横に振った。
「やだ……やめ、て……」
涙で視界が滲んでいく。
頭を抱えるようにして、悠里は震える身体を縮こまらせた。

「あれ? えっと……」
男子生徒が言葉を見失う。

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