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piece2 歪んだ友情

火種

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「ひゃっ?」
ふいに首を触られ、悠里はひっくり返った声を上げた。

ここは図書室だ。悠里は慌てて、口を押さえて振り返る。


てっきり、彩奈のイタズラだと思っていた。
しかし後ろにいた人物は、もっと背が高かった。

「エリカさん!」
悠里に名前を呼ばれた彼女は、笑いを噛み殺しながら小さく手を振った。

図書室に常駐する司書の咳払いと、鋭い視線が飛んでくる。
悠里は首を縮めて、頭を下げた。


「ご、ごめん。そんなカワイイ声出されるなんて思わなくて」
エリカが小声で謝ってくる。
そうして、ふわっと華が咲き誇るような微笑を浮かべた。
「昨日は、ありがとうね」
つられるように、悠里も微笑んだ。


「……エリカ?」
後ろの棚から、彼女の友人らしき生徒が現れる。
「ああ、カンナ」
カンナと呼ばれた友人は、視線を悠里に移し、すうっと目を細めた。

「……何、話してたの?」
「ん?別に。見かけたから、嬉しくて声かけただけ」
エリカがとりなすように、明るく言った。

カンナの冷ややかな視線に、居心地の悪さを感じながらも、悠里は丁寧に会釈をした。
しかし、その視線は和らぐどころか、一層鋭さを増す。
悠里は気負されながらも、彼女のことを思い出した。


――この人。
あのカラオケの日、エリカさんと一緒にいた人だ……

カンナの表情から察するに、彼女も悠里の顔を覚えていたのだろう。
3人の間に、なんとも言えない気まずい沈黙が落ちた。


「あ、いたいた悠里……って、え?」
別の棚を見ていた彩奈が、戻ってきた。
悠里と上級生2人の姿を認め、キョトンとする。

しかし、悠里以上に記憶力があり、観察眼の鋭い彼女だ。
一瞬で気がついたらしい。

「アンタ……」
赤メガネの奥の目が、吊り上がった。
「あ、彩奈……」
「はあ?3年に向かって、アンタって言った?」
彩奈の言葉を捕まえ、カンナが牙を剥く。
「ちょ、やめなって」

悠里とエリカが慌てて、本来は無関係であるはずの互いの友人を宥める羽目になる。
「す、すみません、エリカさん。失礼しますね」
「う、うん、ごめんね。じゃまた」
悠里は頭を下げると、彩奈の手を引き、図書室を後にした。

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