5 / 94
piece1 花のような笑顔
なんて綺麗に笑う人だろう
しおりを挟む
エリカがふうっと息をつき、手をパンパンと払う。
「よし、終わった!帰ろう!」
資料保管室の鍵を閉めながら、エリカは微笑んだ。
「手伝ってくれてありがとうね」
めちゃめちゃ助かったよ、とエリカが屈託なく笑う。
その笑顔につられて、悠里も微笑んだ。
「じゃあ私は、部室に行かなきゃいけないから、ここで。気をつけて帰ってね」
「はい。失礼します」
会釈をして踵を返した悠里に、エリカが呼びかけた。
「……悠里ちゃん」
「?はい」
悠里は立ち止まり、エリカを振り返る。
エリカが、小さく息を吸って問いかけた。
「学内で見かけたら、また、声掛けてもいい?」
少し緊張している様子のエリカに、悠里は笑いを誘われてしまう。
「ふふ、いいですよ。私も、声掛けますね」
「……ありがとう!」
エリカの顔に、今日1番の大きな華が咲いた。
なんて綺麗に笑う人だろう。
悠里はそう思った。
キリッとした目と、ショートヘアが相まって、クールな印象の強いエリカ。
それが、ひとたび笑うと大輪の華が咲き誇るような、匂い立つ美しさが溢れ出す。
懸念。疑問。あるいは、敵対心。
客観的に見れば、そういう感情を持って相対しても、おかしくない人だと思う。
しかし、そんな暗い感情を抱く余地もない。
エリカの笑顔は、あまりにも明るく晴れ晴れとしていて、美しいと思わずにはいられなかった。
エリカの輝きを眩しい気持ちで見つめ、悠里も、にっこり微笑んだ。
悠里が学校を出ると、既に夜の帳が下りていた。
時刻は、17時半になるところだ。
不思議だなあ、と悠里は1人、夕闇の帰り道を歩きながら考える。
エリカの顔を見た瞬間は、剛士の傷を知ったあの日のことを思い出し、苦しかった。
しかし彼女の屈託のない笑顔は、悠里のわだかまりを隅にやり、純粋に見惚れさせる引力があった。
まるで包み込まれるような、暖かささえ感じた。
もしかするとエリカと剛士は、既に何かを話しているのかも知れない、と思った。
エリカは作業の間、剛士のことをひと言も口にしなかった。
その様子からは、悠里への気遣いを感じた。
それに彼女は、剛士とエリカの過去のことを、悠里が知っていると認識していた。
その上で、バスケ部に関する質問にも、率直に答えてくれたのだ。
「よし、終わった!帰ろう!」
資料保管室の鍵を閉めながら、エリカは微笑んだ。
「手伝ってくれてありがとうね」
めちゃめちゃ助かったよ、とエリカが屈託なく笑う。
その笑顔につられて、悠里も微笑んだ。
「じゃあ私は、部室に行かなきゃいけないから、ここで。気をつけて帰ってね」
「はい。失礼します」
会釈をして踵を返した悠里に、エリカが呼びかけた。
「……悠里ちゃん」
「?はい」
悠里は立ち止まり、エリカを振り返る。
エリカが、小さく息を吸って問いかけた。
「学内で見かけたら、また、声掛けてもいい?」
少し緊張している様子のエリカに、悠里は笑いを誘われてしまう。
「ふふ、いいですよ。私も、声掛けますね」
「……ありがとう!」
エリカの顔に、今日1番の大きな華が咲いた。
なんて綺麗に笑う人だろう。
悠里はそう思った。
キリッとした目と、ショートヘアが相まって、クールな印象の強いエリカ。
それが、ひとたび笑うと大輪の華が咲き誇るような、匂い立つ美しさが溢れ出す。
懸念。疑問。あるいは、敵対心。
客観的に見れば、そういう感情を持って相対しても、おかしくない人だと思う。
しかし、そんな暗い感情を抱く余地もない。
エリカの笑顔は、あまりにも明るく晴れ晴れとしていて、美しいと思わずにはいられなかった。
エリカの輝きを眩しい気持ちで見つめ、悠里も、にっこり微笑んだ。
悠里が学校を出ると、既に夜の帳が下りていた。
時刻は、17時半になるところだ。
不思議だなあ、と悠里は1人、夕闇の帰り道を歩きながら考える。
エリカの顔を見た瞬間は、剛士の傷を知ったあの日のことを思い出し、苦しかった。
しかし彼女の屈託のない笑顔は、悠里のわだかまりを隅にやり、純粋に見惚れさせる引力があった。
まるで包み込まれるような、暖かささえ感じた。
もしかするとエリカと剛士は、既に何かを話しているのかも知れない、と思った。
エリカは作業の間、剛士のことをひと言も口にしなかった。
その様子からは、悠里への気遣いを感じた。
それに彼女は、剛士とエリカの過去のことを、悠里が知っていると認識していた。
その上で、バスケ部に関する質問にも、率直に答えてくれたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。
カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~
伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華
結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空
幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。
割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。
思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。
二人の結婚生活は一体どうなる?
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中ーー完結!!】
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
二十年の裏切りの果て、その事実だけを抱え、離縁状を置いて家を出た。
そこで待っていたのは、凍てつく絶望――。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と縋られても、
死の淵を彷徨った私には、裏切ったあなたを許す力など残っていない。
「でも、子供たちの心だけは、
必ず取り戻す」
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔い、歪な愛でもいいと手を伸ばした彼女が辿り着いた先。
それは、「歪で、完全な幸福」か、それとも――。
これは、"石"に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる