62 / 68
piece7 青春の共犯者
焚き火のシメといえば
しおりを挟む
「おーい、やっとるかあ?」
4人のお焚き上げが終わりに差し掛かった頃。
見計らったかのように、谷が元気よく手を振りながら戻ってきた。
「先生、おそーい!」
彩奈が立ち上がり、手を振り返しながら答える。
「何持って来たの?」
拓真が谷の方に寄っていき、その手元を見て笑い出す。
「えっマシュマロ!?」
「焚き火のシメと言えば、マシュマロだろうが」
「あははは、先生、女子力高っ」
「これでも、休日は娘と買い物や食事に行く父親だからな」
彩奈の笑顔に、谷も上機嫌だ。
「ふふっ。先生、娘さんがいらっしゃるんですね」
娘というワードを発した瞬間、笑みの柔らかくなった谷が微笑ましくて、悠里も笑ってしまう。
「うん。大学1年生だから、橘さんや石川さんの、ちょっとお姉さんだな」
「へえ! 大学生の娘さんとデートなんて、素敵なパパさんじゃん!」
彩奈も悠里の傍に来て、キラキラとした目を谷に向けた。
「いいだろう?」
谷が嬉しそうに胸を張ったのを見て、拓真も笑う。
「先生、確か息子さんもいるよね?」
「おお、いるぞ。そっちは今度、中3になる」
谷が優しい目をして、拓真と剛士を見た。
「やることは、しっかりやって。友だちとバカやって、先生をこき使って。青春を謳歌して貰いたいもんだよ。お前らみたいにな?」
「ははっ!オレたち、褒められたみたいね?」
楽しげに笑い、拓真は剛士の肩を叩く。
剛士も微笑んで応えた。
「まあ、先生の息子なら大丈夫でしょ」
谷が鼻歌交じりに、細い焚き木をくべていき、安定した焚き火を作り上げる。
「手慣れてますね」
谷を手伝いながら、剛士が楽しげに話しかける。
「おうよ。生活指導教員たる者、証拠隠滅、お焚き上げ、お手のものさ」
谷の冗談に、皆は顔を見合わせ笑った。
穏やかな空気の中、谷が皆にバーベキュー用の長い串を配る。
「ほら、これでマシュマロ刺して炙ってみろ。美味いぞ?」
「わーい、焼きマシュマロ~!」
彩奈と拓真が歓声を上げて、皿に出されたマシュマロに飛びついた。
それを微笑ましく見つめる悠里と剛士に、彩奈が手招きする。
「ほらほら、2人とも早く! みんなで焼こうよ!」
団子のように、マシュマロを3つ串刺しにする拓真に負けじと、彩奈も3つ串に刺している。
「俺はとりあえず、様子見で1個」
「ふふっ、私も」
剛士と悠里も、マシュマロを1つずつ串の先に刺すと、4人で焚き火台を囲んだ。
「火傷にだけは気をつけろよー」
「はぁい!」
谷の声に揃って返事をし、皆で串を火に掲げた。
間もなく、香ばしくて、ふわふわとした甘い匂いが立ち込める。
くるくると串を回転させながら、悠里は綺麗にマシュマロを炙っていく。
彼女のマシュマロは、キツネ色の焦げ目がつき、とても美味しそうだ。
「……ふふ、焼けた」
「おお。悠里、上手だな」
感心したように、剛士が微笑む。
4人のお焚き上げが終わりに差し掛かった頃。
見計らったかのように、谷が元気よく手を振りながら戻ってきた。
「先生、おそーい!」
彩奈が立ち上がり、手を振り返しながら答える。
「何持って来たの?」
拓真が谷の方に寄っていき、その手元を見て笑い出す。
「えっマシュマロ!?」
「焚き火のシメと言えば、マシュマロだろうが」
「あははは、先生、女子力高っ」
「これでも、休日は娘と買い物や食事に行く父親だからな」
彩奈の笑顔に、谷も上機嫌だ。
「ふふっ。先生、娘さんがいらっしゃるんですね」
娘というワードを発した瞬間、笑みの柔らかくなった谷が微笑ましくて、悠里も笑ってしまう。
「うん。大学1年生だから、橘さんや石川さんの、ちょっとお姉さんだな」
「へえ! 大学生の娘さんとデートなんて、素敵なパパさんじゃん!」
彩奈も悠里の傍に来て、キラキラとした目を谷に向けた。
「いいだろう?」
谷が嬉しそうに胸を張ったのを見て、拓真も笑う。
「先生、確か息子さんもいるよね?」
「おお、いるぞ。そっちは今度、中3になる」
谷が優しい目をして、拓真と剛士を見た。
「やることは、しっかりやって。友だちとバカやって、先生をこき使って。青春を謳歌して貰いたいもんだよ。お前らみたいにな?」
「ははっ!オレたち、褒められたみたいね?」
楽しげに笑い、拓真は剛士の肩を叩く。
剛士も微笑んで応えた。
「まあ、先生の息子なら大丈夫でしょ」
谷が鼻歌交じりに、細い焚き木をくべていき、安定した焚き火を作り上げる。
「手慣れてますね」
谷を手伝いながら、剛士が楽しげに話しかける。
「おうよ。生活指導教員たる者、証拠隠滅、お焚き上げ、お手のものさ」
谷の冗談に、皆は顔を見合わせ笑った。
穏やかな空気の中、谷が皆にバーベキュー用の長い串を配る。
「ほら、これでマシュマロ刺して炙ってみろ。美味いぞ?」
「わーい、焼きマシュマロ~!」
彩奈と拓真が歓声を上げて、皿に出されたマシュマロに飛びついた。
それを微笑ましく見つめる悠里と剛士に、彩奈が手招きする。
「ほらほら、2人とも早く! みんなで焼こうよ!」
団子のように、マシュマロを3つ串刺しにする拓真に負けじと、彩奈も3つ串に刺している。
「俺はとりあえず、様子見で1個」
「ふふっ、私も」
剛士と悠里も、マシュマロを1つずつ串の先に刺すと、4人で焚き火台を囲んだ。
「火傷にだけは気をつけろよー」
「はぁい!」
谷の声に揃って返事をし、皆で串を火に掲げた。
間もなく、香ばしくて、ふわふわとした甘い匂いが立ち込める。
くるくると串を回転させながら、悠里は綺麗にマシュマロを炙っていく。
彼女のマシュマロは、キツネ色の焦げ目がつき、とても美味しそうだ。
「……ふふ、焼けた」
「おお。悠里、上手だな」
感心したように、剛士が微笑む。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
会社の後輩が諦めてくれません
碧井夢夏
恋愛
満員電車で助けた就活生が会社まで追いかけてきた。
彼女、赤堀結は恩返しをするために入社した鶴だと言った。
亀じゃなくて良かったな・・
と思ったのは、松味食品の営業部エース、茶谷吾郎。
結は吾郎が何度振っても諦めない。
むしろ、変に条件を出してくる。
誰に対しても失礼な男と、彼のことが大好きな彼女のラブコメディ。
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
#秒恋7 それぞれの翌日――壊れた日常を取り戻すために
ReN
恋愛
#秒恋7 それぞれの翌日――壊れた日常を取り戻すために
悠里と剛士を襲った悲しい大事件の翌日と翌々日を描いた今作。
それぞれの家族や、剛士の部活、そして2人の親友を巻き込み、悲しみが膨れ上がっていきます。
壊れてしまった幸せな日常を、傷つき閉ざされてしまった悠里の心を、剛士は取り戻すことはできるのでしょうか。
過去に登場した悠里の弟や、これまで登場したことのなかった剛士の家族。
そして、剛士のバスケ部のメンバー。
何より、親友の彩奈と拓真。
周りの人々に助けられながら、壊れた日常を取り戻そうと足掻いていきます。
やはりあの日の大事件のショックは大きくて、簡単にハッピーエンドとはいかないようです……
それでも、2人がもう一度、手を取り合って、抱き合って。
心から笑い合える未来を掴むために、剛士くんも悠里ちゃんもがんばっていきます。
心の傷。トラウマ。
少しずつ、乗り越えていきます。
ぜひ見守ってあげてください!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
愛、焦がれ
環流 虹向
恋愛
みせいねん、らめっ。
転載防止のため、毎話末に[環流 虹向/愛、焦がれ]をつけています。
あぶないってことは分かってる
けど、会ってみたいから会いにいく
愛が欲しいから会いにいく
だから今日も見える愛を求めて君に会いにいく
まいべすと
下北バンドマンと女子高生の夜 / ぽわん
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる