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piece7 青春の共犯者
潜入成功!
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5分ほどで、勇誠学園に着いた。
悠里の手をしっかりと握ったまま、剛士は女子2人に言う。
「裏門には、こっちの脇道から行く」
彩奈が、ニヤニヤと笑っているのが気恥ずかしくて、悠里は顔を赤らめる。
それでも、優しく手を引いてくれる剛士の手は温かくて、離し難かった。
目的の裏門が見えてきた。
「鍵は、谷が開けてくれてるから、なるべく音を立てずに入るぞ」
「オッケー。念のため、オレが先に入って、周囲を確認する」
拓真が、ピシッと敬礼をし、音もなく裏門から侵入を開始した。
ほどなくして、拓真からオッケーサインが出る。
彩奈、そして剛士と悠里が順番に、裏門を潜り抜けた。
「よし、潜入成功!」
拓真が戯けて片目を瞑り、笑顔で剛士に問うた。
「どうすればいいの? 生活指導室?」
「いや。このまま、指導室の窓から見える庭みたいなとこに行く」
「へー!打ち合わせバッチリじゃん!」
「あそこなら、敷地の端で人も来ないし、職員室からも死角なんだってさ」
剛士が、悪戯っぽい小さな微笑を浮かべた。
指導室近くの庭に着くと、大きな人影があった。
悠里の手をそっと離すと、剛士は人影に声を掛けた。
「先生」
「お、来たか」
谷が、楽しげな笑みを浮かべて振り返った。
剛士も笑い、悠里と彩奈を指す。
「ほら、橘悠里さんと、友だちの石川彩奈さん。彩奈のことも、覚えてるでしょ?」
「ああ、覚えてるぞ」
谷の笑顔が、2人に向いた。
「こんばんは。その節はお世話になりました」
「先生、お久しぶりです!」
悠里と彩奈は、揃って挨拶をした。
「おお、2人とも元気にしてたか?」
「はい!」
まるで自分の生徒のように、気安く暖かく声を掛けてくれる谷に、悠里たちも嬉しくなってしまう。
谷が笑いながら、剛士の肩に腕を回す。
「お前も先生使いが荒くなったなあ、柴崎?」
「頼りにしてるってことですよ。それよりも、」
剛士も笑い、谷の準備品を指差した。
「何すか、この楽しそうな道具」
「はっはっは。いいだろ?」
その視線の先には、ソロキャンプで使うような、折りたたみ式の焚き火台が設置されていた。
焚き火台の傍には、小さなスツールが2脚置いてある。
「椅子は女子用だぞ?」
「気が利くじゃん、先生!」
拓真も笑い、悠里と彩奈に座るよう勧める。
悠里の手をしっかりと握ったまま、剛士は女子2人に言う。
「裏門には、こっちの脇道から行く」
彩奈が、ニヤニヤと笑っているのが気恥ずかしくて、悠里は顔を赤らめる。
それでも、優しく手を引いてくれる剛士の手は温かくて、離し難かった。
目的の裏門が見えてきた。
「鍵は、谷が開けてくれてるから、なるべく音を立てずに入るぞ」
「オッケー。念のため、オレが先に入って、周囲を確認する」
拓真が、ピシッと敬礼をし、音もなく裏門から侵入を開始した。
ほどなくして、拓真からオッケーサインが出る。
彩奈、そして剛士と悠里が順番に、裏門を潜り抜けた。
「よし、潜入成功!」
拓真が戯けて片目を瞑り、笑顔で剛士に問うた。
「どうすればいいの? 生活指導室?」
「いや。このまま、指導室の窓から見える庭みたいなとこに行く」
「へー!打ち合わせバッチリじゃん!」
「あそこなら、敷地の端で人も来ないし、職員室からも死角なんだってさ」
剛士が、悪戯っぽい小さな微笑を浮かべた。
指導室近くの庭に着くと、大きな人影があった。
悠里の手をそっと離すと、剛士は人影に声を掛けた。
「先生」
「お、来たか」
谷が、楽しげな笑みを浮かべて振り返った。
剛士も笑い、悠里と彩奈を指す。
「ほら、橘悠里さんと、友だちの石川彩奈さん。彩奈のことも、覚えてるでしょ?」
「ああ、覚えてるぞ」
谷の笑顔が、2人に向いた。
「こんばんは。その節はお世話になりました」
「先生、お久しぶりです!」
悠里と彩奈は、揃って挨拶をした。
「おお、2人とも元気にしてたか?」
「はい!」
まるで自分の生徒のように、気安く暖かく声を掛けてくれる谷に、悠里たちも嬉しくなってしまう。
谷が笑いながら、剛士の肩に腕を回す。
「お前も先生使いが荒くなったなあ、柴崎?」
「頼りにしてるってことですよ。それよりも、」
剛士も笑い、谷の準備品を指差した。
「何すか、この楽しそうな道具」
「はっはっは。いいだろ?」
その視線の先には、ソロキャンプで使うような、折りたたみ式の焚き火台が設置されていた。
焚き火台の傍には、小さなスツールが2脚置いてある。
「椅子は女子用だぞ?」
「気が利くじゃん、先生!」
拓真も笑い、悠里と彩奈に座るよう勧める。
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