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piece7 青春の共犯者
宝物
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彩奈が微笑み、悠里を抱きしめてくれる。
「よしよし。偉いぞ、悠里」
その温もりに抱かれていると、涙が込み上げてきた。
「彩奈ー」
悠里は甘えるように、ぎゅっと彩奈に抱きつく。
彩奈が笑いながら、髪を撫でてくれた。
そうして、優しい声で言う。
「でも、悠里がこの写真を捨てられなかった気持ち。すごいわかる」
「えー? そんなもん?」
拓真が問いかけると、彩奈が大きく頷いた。
「そりゃそうだよ! だって、知り合う前の写真だよ? ホントなら見られなかったはずの、好きな人の昔の姿だよ? こんな、いい笑顔のさ。もし元カノが写ってなければ、宝物でしょ」
「ああ~、なるほどねえ」
拓真が、感心したように相槌を打った。
気持ちを理解して、代弁してくれる親友に、悠里は胸がいっぱいになる。
彩奈は悠里を慰めるように、もう一度、よしよしと髪を撫でた。
そして、拓真と剛士を見つめて言う。
「そういうのも見越して、アイツは悠里に、このフォトブックを渡したわけ。ホント悪質だよ」
拓真は深く頷き、呟いた。
「なるほど……彩奈ちゃんの言葉を聞いたら、安藤カンナのやり口の酷さが、尚更よくわかるよ」
剛士も小さく首を縦に振り、彩奈の腕に包まれたままの悠里を、悲しげに見つめた。
「……ごめんな、悠里。お前がどんな気持ちで、この写真を持ってたのか……俺、わかってあげてなかった」
「ううん。私こそ、ごめんなさい」
悠里はそっと顔を上げ、剛士の気持ちに寄り添った。
「彩奈の言う通りだよね……思い出をこんなふうに使われて、悲しいのはゴウさんなのに。捨てたくないなんて言って、ごめんなさい」
剛士は、優しい笑みを浮かべて答えた。
「うん。俺はいま……悠里の目の前にいるから。いまの俺を見て、信じてくれたら嬉しい」
「……うん」
「あと、単純に俺の昔の写真要るなら、送るから」
「ふふ……うん!」
嬉しそうに笑った悠里を見て、剛士はスマートフォンを取り出し、カメラロールを探り始めた。
長い指が、暫くスクロールを繰り返していたが、ピタリとその動きを止めた。
「いや、よく考えたら、俺のスマホに俺の写真なんかねぇわ」
「無いのかよ!」
弾かれたように拓真が笑い出す。
「ねぇよ。自分の写真なんか撮らないだろ」
「まあ、そりゃそうか」
2人の気の抜けたやり取りに、思わず悠里と彩奈も笑ってしまった。
「いや、ごめん。バスケ部のパソコンにはあるはず……探しときます」
困ったように頭を掻いた剛士を見て、彩奈が冗談めかして言う。
「まーた元カノ込みの写真じゃないでしょうね?」
「なわけないだろ」
剛士が、溜め息混じりに否定した。
「そもそも、俺と元カノが写ってる写真を、よくこんだけ掻き集めてきたなって、感心したくらいだよ」
「これで全部ってくらい、フォトブックに網羅されてる?」
「ああ……まあ、そうなんじゃないか? 部活の写真なんか、何百何千とあるだろうに、無駄な労力使いやがって」
剛士としても、いろいろ吹っ切れたのだろう。
彩奈からの、あけすけな質問にも、軽い調子で答えてくる。
それが、またひとつ剛士との距離が縮まった証拠にも思えて、何だか悠里の胸も軽くなった。
「よしよし。偉いぞ、悠里」
その温もりに抱かれていると、涙が込み上げてきた。
「彩奈ー」
悠里は甘えるように、ぎゅっと彩奈に抱きつく。
彩奈が笑いながら、髪を撫でてくれた。
そうして、優しい声で言う。
「でも、悠里がこの写真を捨てられなかった気持ち。すごいわかる」
「えー? そんなもん?」
拓真が問いかけると、彩奈が大きく頷いた。
「そりゃそうだよ! だって、知り合う前の写真だよ? ホントなら見られなかったはずの、好きな人の昔の姿だよ? こんな、いい笑顔のさ。もし元カノが写ってなければ、宝物でしょ」
「ああ~、なるほどねえ」
拓真が、感心したように相槌を打った。
気持ちを理解して、代弁してくれる親友に、悠里は胸がいっぱいになる。
彩奈は悠里を慰めるように、もう一度、よしよしと髪を撫でた。
そして、拓真と剛士を見つめて言う。
「そういうのも見越して、アイツは悠里に、このフォトブックを渡したわけ。ホント悪質だよ」
拓真は深く頷き、呟いた。
「なるほど……彩奈ちゃんの言葉を聞いたら、安藤カンナのやり口の酷さが、尚更よくわかるよ」
剛士も小さく首を縦に振り、彩奈の腕に包まれたままの悠里を、悲しげに見つめた。
「……ごめんな、悠里。お前がどんな気持ちで、この写真を持ってたのか……俺、わかってあげてなかった」
「ううん。私こそ、ごめんなさい」
悠里はそっと顔を上げ、剛士の気持ちに寄り添った。
「彩奈の言う通りだよね……思い出をこんなふうに使われて、悲しいのはゴウさんなのに。捨てたくないなんて言って、ごめんなさい」
剛士は、優しい笑みを浮かべて答えた。
「うん。俺はいま……悠里の目の前にいるから。いまの俺を見て、信じてくれたら嬉しい」
「……うん」
「あと、単純に俺の昔の写真要るなら、送るから」
「ふふ……うん!」
嬉しそうに笑った悠里を見て、剛士はスマートフォンを取り出し、カメラロールを探り始めた。
長い指が、暫くスクロールを繰り返していたが、ピタリとその動きを止めた。
「いや、よく考えたら、俺のスマホに俺の写真なんかねぇわ」
「無いのかよ!」
弾かれたように拓真が笑い出す。
「ねぇよ。自分の写真なんか撮らないだろ」
「まあ、そりゃそうか」
2人の気の抜けたやり取りに、思わず悠里と彩奈も笑ってしまった。
「いや、ごめん。バスケ部のパソコンにはあるはず……探しときます」
困ったように頭を掻いた剛士を見て、彩奈が冗談めかして言う。
「まーた元カノ込みの写真じゃないでしょうね?」
「なわけないだろ」
剛士が、溜め息混じりに否定した。
「そもそも、俺と元カノが写ってる写真を、よくこんだけ掻き集めてきたなって、感心したくらいだよ」
「これで全部ってくらい、フォトブックに網羅されてる?」
「ああ……まあ、そうなんじゃないか? 部活の写真なんか、何百何千とあるだろうに、無駄な労力使いやがって」
剛士としても、いろいろ吹っ切れたのだろう。
彩奈からの、あけすけな質問にも、軽い調子で答えてくる。
それが、またひとつ剛士との距離が縮まった証拠にも思えて、何だか悠里の胸も軽くなった。
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