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piece7 青春の共犯者
残る問題は
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「……さて、残る問題は、」
拓真がテーブルに置いたままだったカラオケの写真と、フォトブックに目を落とした。
「これらをどうするか、かな?」
「んなもん、捨てればいいだろ」
にべもなく剛士が吐き捨てる。
そして、忌々しげにカラオケの写真の束を纏め、封筒に突っ込んでいく。
「こんなの俺持ってたら、写真に写ってる男の顔覚えて、全員ぶっ飛ばしに行きたくなる」
勇誠の奴もいるしな、と低い声で呟いた剛士に、慌てて悠里は言う。
「ゴウさん、勇誠の人は私を逃がしてくれたの。いい人たちだったよ」
剛士が、ムッとした顔をする。
更に慌てる悠里を見て、我に返ったのか、剛士は目を伏せた。
「……いや、ごめん。なら感謝しなきゃいけないのは、わかるんだけど、」
「はは、何だよゴウ! 嫉妬しちゃった?」
拓真の揶揄いに乗せられ、剛士はまた、ムキになってしまう。
「は?違ぇよ。俺はただ、悠里が他の男に頼らざるを得なかったのが嫌なだけ……」
「やっぱ嫉妬じゃねーか」
「うっせえ!」
「イッタイ!」
パシーンと勢いよく剛士に叩かれ、金髪頭が傾いた。
「まあまあ、気持ちはわかるんだけどさあ、」
拓真は頭をさすりながらも、笑って剛士を宥めに入る。
「ゴウ、ちょっと動揺し過ぎ。どした? 落ち着けって」
やはり拓真の目から見ても、剛士の反応は過剰に思えるのだろう。
悠里も、心配そうに剛士の様子を窺う。
「……悪い」
拓真の捨て身の行動により、剛士の頭は冷えたようだ。
笑顔のままの拓真に対し、小さく頭を下げる。
そうして、ふっと息をつき、剛士は気持ちを抑え込むように唇を引き結んだ。
僅かな沈黙を置いた後、剛士は真剣な声音で、拓真に意見を求める。
「……この写真、証拠として保管する必要、あるかな」
拓真も真面目な調子に戻り、思案の色を浮かべた。
「んー。例えば先生とかに、安藤カンナの件を相談するなら、必要だろうけど……」
「うん」
剛士が、同じ意見だというふうに頷いた。
「正直、この件を勇誠の先生に言っても、あまり意味はないよな」
「だね。言うとしたら、マリ女の先生だよね」
ここで剛士の瞳が、悠里に向いた。
「悠里。今日、お前が生活指導室に呼び出されたのも、この写真のことか?」
悠里は唇を噛み、小さく頷いた。
「うん……この写真を、生活指導の先生宛に、郵送されていたの」
剛士の切れ長の瞳が、曇った。
「そうか……先生には、安藤のこと相談したのか?」
悠里は首を横に振る。
「ううん。名前は、言わなかった」
「……そうか」
悠里が、エリカや剛士に問題が飛び火するのを恐れたのだと、彼にも容易に察しがついた。
「……お前らしいよな」
「んん……」
悠里は、肯定とも否定ともつかない声を漏らし、苦笑した。
拓真がテーブルに置いたままだったカラオケの写真と、フォトブックに目を落とした。
「これらをどうするか、かな?」
「んなもん、捨てればいいだろ」
にべもなく剛士が吐き捨てる。
そして、忌々しげにカラオケの写真の束を纏め、封筒に突っ込んでいく。
「こんなの俺持ってたら、写真に写ってる男の顔覚えて、全員ぶっ飛ばしに行きたくなる」
勇誠の奴もいるしな、と低い声で呟いた剛士に、慌てて悠里は言う。
「ゴウさん、勇誠の人は私を逃がしてくれたの。いい人たちだったよ」
剛士が、ムッとした顔をする。
更に慌てる悠里を見て、我に返ったのか、剛士は目を伏せた。
「……いや、ごめん。なら感謝しなきゃいけないのは、わかるんだけど、」
「はは、何だよゴウ! 嫉妬しちゃった?」
拓真の揶揄いに乗せられ、剛士はまた、ムキになってしまう。
「は?違ぇよ。俺はただ、悠里が他の男に頼らざるを得なかったのが嫌なだけ……」
「やっぱ嫉妬じゃねーか」
「うっせえ!」
「イッタイ!」
パシーンと勢いよく剛士に叩かれ、金髪頭が傾いた。
「まあまあ、気持ちはわかるんだけどさあ、」
拓真は頭をさすりながらも、笑って剛士を宥めに入る。
「ゴウ、ちょっと動揺し過ぎ。どした? 落ち着けって」
やはり拓真の目から見ても、剛士の反応は過剰に思えるのだろう。
悠里も、心配そうに剛士の様子を窺う。
「……悪い」
拓真の捨て身の行動により、剛士の頭は冷えたようだ。
笑顔のままの拓真に対し、小さく頭を下げる。
そうして、ふっと息をつき、剛士は気持ちを抑え込むように唇を引き結んだ。
僅かな沈黙を置いた後、剛士は真剣な声音で、拓真に意見を求める。
「……この写真、証拠として保管する必要、あるかな」
拓真も真面目な調子に戻り、思案の色を浮かべた。
「んー。例えば先生とかに、安藤カンナの件を相談するなら、必要だろうけど……」
「うん」
剛士が、同じ意見だというふうに頷いた。
「正直、この件を勇誠の先生に言っても、あまり意味はないよな」
「だね。言うとしたら、マリ女の先生だよね」
ここで剛士の瞳が、悠里に向いた。
「悠里。今日、お前が生活指導室に呼び出されたのも、この写真のことか?」
悠里は唇を噛み、小さく頷いた。
「うん……この写真を、生活指導の先生宛に、郵送されていたの」
剛士の切れ長の瞳が、曇った。
「そうか……先生には、安藤のこと相談したのか?」
悠里は首を横に振る。
「ううん。名前は、言わなかった」
「……そうか」
悠里が、エリカや剛士に問題が飛び火するのを恐れたのだと、彼にも容易に察しがついた。
「……お前らしいよな」
「んん……」
悠里は、肯定とも否定ともつかない声を漏らし、苦笑した。
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