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あいつは何をするかわからない
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ただ1人、剛士だけは真顔だった。
「……俺、送り迎えする」
「えっ?」
悠里は、目を丸くして剛士を見つめる。
「そ、そんな。大丈夫だよ。今まで、校外で接触されたことはなかったし、そこまでしなくても……」
「駄目」
悠里の言葉を斬るように、剛士は遮った。
「あいつは、何をするかわからない」
剛士の強い懸念に、緩みかけていた悠里の心に力が入る。
どうして彼は、ここまでカンナを警戒するのだろう。
剛士の反応が、いささか過剰な気がする。
いや、皆に話したことで、自分が安心し過ぎているのだろうか?
どちらとも判断がつかず、ただ悠里の頭の奥でまた、ジリジリと警鐘が鳴り響く。
剛士の声音は、固かった。
「お前、何かあっても相談できるって言ったけどさ。それじゃ駄目なんだよ」
「ゴウ、さん……」
「これ以上、悠里に何かあったら、俺は嫌だ」
切れ長の瞳が、縋るように悠里を見つめた。
悠里は困惑しながらも、自分の気持ちを訴える。
「で、でも私、ゴウさんの部活の邪魔は、したくないよ」
「邪魔じゃねえって」
「だって、前もそうだったもん!」
思わず悠里は、声を高めてしまう。
「私がストーカーされたときも、ゴウさんは部活を遅刻早退して、毎日送り迎えしてくれたでしょ」
「俺がそうしたかっただけなんだから、お前は気にしなくていいよ」
「でも、私が部活の邪魔しちゃったのは変わらないよ」
剛士と言い合いなどしたくないが、これだけは譲れない。
悠里は、必死に言い募る。
「私、もうバスケ部の迷惑になりたくない!」
「頑固かお前!」
「ゴウさんだって!」
拓真と彩奈は顔を見合わせ、微笑ましい半分、呆れ半分の笑いを零して仲裁に入った。
「おいおい、痴話喧嘩すんなよー」
「あはは! まあでも、ちょっと感心したかも」
彩奈が、笑いながら頷く。
「悠里が人と言い争うの、初めて見たわ」
親友たちに笑われ、悠里も剛士も、勢いを削がれてしまう。
そのまま2人は、困ったように互いを見つめ合った。
「あー、じゃあさ。こうしない?」
拓真が、剛士と悠里を交互に見ながら、提案した。
「登校と下校で、分担するの」
「分担?」
すかさず彩奈が、身を乗り出して問う。
うん、と拓真がいつもの柔らかな微笑みを見せた。
「悠里ちゃんの気持ちも、ゴウの言い分も、どっちもわかる。だからさ、2人の負担を軽くするために、オレと彩奈ちゃんが協力しよう!」
「……俺、送り迎えする」
「えっ?」
悠里は、目を丸くして剛士を見つめる。
「そ、そんな。大丈夫だよ。今まで、校外で接触されたことはなかったし、そこまでしなくても……」
「駄目」
悠里の言葉を斬るように、剛士は遮った。
「あいつは、何をするかわからない」
剛士の強い懸念に、緩みかけていた悠里の心に力が入る。
どうして彼は、ここまでカンナを警戒するのだろう。
剛士の反応が、いささか過剰な気がする。
いや、皆に話したことで、自分が安心し過ぎているのだろうか?
どちらとも判断がつかず、ただ悠里の頭の奥でまた、ジリジリと警鐘が鳴り響く。
剛士の声音は、固かった。
「お前、何かあっても相談できるって言ったけどさ。それじゃ駄目なんだよ」
「ゴウ、さん……」
「これ以上、悠里に何かあったら、俺は嫌だ」
切れ長の瞳が、縋るように悠里を見つめた。
悠里は困惑しながらも、自分の気持ちを訴える。
「で、でも私、ゴウさんの部活の邪魔は、したくないよ」
「邪魔じゃねえって」
「だって、前もそうだったもん!」
思わず悠里は、声を高めてしまう。
「私がストーカーされたときも、ゴウさんは部活を遅刻早退して、毎日送り迎えしてくれたでしょ」
「俺がそうしたかっただけなんだから、お前は気にしなくていいよ」
「でも、私が部活の邪魔しちゃったのは変わらないよ」
剛士と言い合いなどしたくないが、これだけは譲れない。
悠里は、必死に言い募る。
「私、もうバスケ部の迷惑になりたくない!」
「頑固かお前!」
「ゴウさんだって!」
拓真と彩奈は顔を見合わせ、微笑ましい半分、呆れ半分の笑いを零して仲裁に入った。
「おいおい、痴話喧嘩すんなよー」
「あはは! まあでも、ちょっと感心したかも」
彩奈が、笑いながら頷く。
「悠里が人と言い争うの、初めて見たわ」
親友たちに笑われ、悠里も剛士も、勢いを削がれてしまう。
そのまま2人は、困ったように互いを見つめ合った。
「あー、じゃあさ。こうしない?」
拓真が、剛士と悠里を交互に見ながら、提案した。
「登校と下校で、分担するの」
「分担?」
すかさず彩奈が、身を乗り出して問う。
うん、と拓真がいつもの柔らかな微笑みを見せた。
「悠里ちゃんの気持ちも、ゴウの言い分も、どっちもわかる。だからさ、2人の負担を軽くするために、オレと彩奈ちゃんが協力しよう!」
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