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エリカとの会話
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拓真が長い溜め息をついた。
「そっかあ……しっかし、卑怯なマネするよなあ、そいつ」
彩奈もそれに同意し、隣りに座る悠里を見つめる。
「つまり、シバさんを元サヤにしようと、悠里に嫌がらせしたのは、安藤カンナの独断ってこと?」
「うん。安藤さんは、エリカさんの気持ちを無視して、1人で行動していたの」
そこで彩奈が、幾分済まなそうに、ちらりと剛士を見てから、また悠里に問いかけた。
「ごめん、聞いちゃうけど。安藤カンナの嫌がらせの件、元カノは本当に、何も知らなかったの?」
悠里は、しっかりと頷いた。
「うん。それはエリカさんに、直接確認できた」
悠里は息を吸い、またひとつ、告白する。
「……ごめんね、彩奈。私、卒業式の前日準備のとき、暫く教室に戻らなかったでしょう?」
「……うん」
悠里は、彩奈、そして剛士、拓真と順番に視線を合わせてから、言った。
「実はあのとき、エリカさんと偶然会って、話してたんだ」
彩奈は赤メガネの奥の目を驚きに見開いた後、納得したというように首を縦に振った。
「そうだったんだ……あん時の悠里、なんかいろんなもん、抱えてたよね」
彩奈が難しい顔をしながらも、微かに微笑む。
「泣きそうにも見えたけど、なんか、ホッとしてるような、嬉しそうな……でもやっぱり悲しいような。とにかく、複雑な顔してたよ」
エリカと屋上で話したときの気持ちが蘇り、悠里は少しだけ、泣きそうになる。
しかし、強い気持ちで口元に微笑みを浮かべ、話を続けた。
「エリカさんと偶然会ったとき、後ろから安藤さんが来てね。私、咄嗟に逃げちゃったの。そしたらエリカさんが、安藤さんが私に何かしたんだって気づいてくれて、話を聞いてくれたんだ」
彩奈と拓真は顔を見合わせたが、そのまま黙して、悠里の言葉に耳を傾けた。
剛士は、綺麗な黒い目を逸らさずに、じっと悠里を見守っている。
悠里はその優しい瞳を見つめ、話し続けた。
「エリカさん、私に謝ってくれて……励ましてくれたの。それで……」
エリカの心情を思うと、辛い。
悠里は涙を押し込むように、唇を噛み締める。
少しだけ沈黙し気持ちを立て直すと、不器用に微笑んでみせた。
「これから安藤さんをシメてくるって……笑ってくれた。私と別れた後、嫌がらせをやめるようにって。説得してくれたんだと思う」
震えてしまった悠里の声を気遣い、隣りの彩奈はそっと、悠里の背を撫でる。
悠里は自分の親友を見やり、小さく微笑を浮かべた。
「そっかあ……しっかし、卑怯なマネするよなあ、そいつ」
彩奈もそれに同意し、隣りに座る悠里を見つめる。
「つまり、シバさんを元サヤにしようと、悠里に嫌がらせしたのは、安藤カンナの独断ってこと?」
「うん。安藤さんは、エリカさんの気持ちを無視して、1人で行動していたの」
そこで彩奈が、幾分済まなそうに、ちらりと剛士を見てから、また悠里に問いかけた。
「ごめん、聞いちゃうけど。安藤カンナの嫌がらせの件、元カノは本当に、何も知らなかったの?」
悠里は、しっかりと頷いた。
「うん。それはエリカさんに、直接確認できた」
悠里は息を吸い、またひとつ、告白する。
「……ごめんね、彩奈。私、卒業式の前日準備のとき、暫く教室に戻らなかったでしょう?」
「……うん」
悠里は、彩奈、そして剛士、拓真と順番に視線を合わせてから、言った。
「実はあのとき、エリカさんと偶然会って、話してたんだ」
彩奈は赤メガネの奥の目を驚きに見開いた後、納得したというように首を縦に振った。
「そうだったんだ……あん時の悠里、なんかいろんなもん、抱えてたよね」
彩奈が難しい顔をしながらも、微かに微笑む。
「泣きそうにも見えたけど、なんか、ホッとしてるような、嬉しそうな……でもやっぱり悲しいような。とにかく、複雑な顔してたよ」
エリカと屋上で話したときの気持ちが蘇り、悠里は少しだけ、泣きそうになる。
しかし、強い気持ちで口元に微笑みを浮かべ、話を続けた。
「エリカさんと偶然会ったとき、後ろから安藤さんが来てね。私、咄嗟に逃げちゃったの。そしたらエリカさんが、安藤さんが私に何かしたんだって気づいてくれて、話を聞いてくれたんだ」
彩奈と拓真は顔を見合わせたが、そのまま黙して、悠里の言葉に耳を傾けた。
剛士は、綺麗な黒い目を逸らさずに、じっと悠里を見守っている。
悠里はその優しい瞳を見つめ、話し続けた。
「エリカさん、私に謝ってくれて……励ましてくれたの。それで……」
エリカの心情を思うと、辛い。
悠里は涙を押し込むように、唇を噛み締める。
少しだけ沈黙し気持ちを立て直すと、不器用に微笑んでみせた。
「これから安藤さんをシメてくるって……笑ってくれた。私と別れた後、嫌がらせをやめるようにって。説得してくれたんだと思う」
震えてしまった悠里の声を気遣い、隣りの彩奈はそっと、悠里の背を撫でる。
悠里は自分の親友を見やり、小さく微笑を浮かべた。
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