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悠里のケガ
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「……ねえ、悠里ちゃん」
拓真が、済まなそうに口を開いた。
「ごめん、聞いちゃうけど。悠里ちゃんさ、ケガしてたことあったよね。それって、もしかして……」
「ケガ?」
剛士と彩奈が、同時に聞き返す。
拓真は頷き、2人に説明をする。
「こないだ、4人で遊んだでしょ? その前日、たまたま悠里ちゃんに会ったときにさ、」
拓真が悠里に対して、同情と、話してごめんねの視線を向けた。
「悠里ちゃん、転んだって言って、膝をケガしてたんだ……」
剛士と彩奈が、口々にあの日の小さな違和感を振り返った。
「あの……悠里っぽくない服のときか」
「だから悠里、スカート履いてなかったんだ……」
剛士の切れ長の瞳が、鋭さを増す。
「……悠里。あいつに、何された?」
彼の表情に気負され、悠里はしどろもどろに答える。
「あ、あのときは……安藤さんに初めて呼び出されて。そしたら、勇誠の人がいて……」
自分の通う学校の名が出た瞬間、剛士の目が更に、厳しい光を帯びた。
悠里は、ますます萎縮してしまう。
「で、でも、その人たちには、何もされてないよ。私が、安藤さんに突き飛ばされたときに、転んじゃっただけで……」
「あの野郎……!」
これでも、彼なりに抑えてはいるのかも知れない。
しかし、剛士の激しい怒りを前に、悠里はそれ以上、口をきけなくなってしまった。
悠里が口をつぐんでしまうと、剛士の怒りの目は、隣りへ向かった。
「拓真。てめえ、知ってたんなら何ですぐ言わなかった」
「ゴ、ゴウさん、拓真さんは私に気を遣ってくれて……」
慌てて剛士を止めようとする悠里をチラリと見て、拓真は大丈夫だと微笑む。
そして剛士に向かって、戯けたように手を合わせた。
「ごめんな、ゴウ! だってオレ、手当てするためとはいえ、悠里ちゃんの御御足を触っちゃったからさあ。ゴウに言ったら、身の危険を感じるじゃん?」
「はあ? バカじゃねえの?」
剛士が、勢いよく拓真の頭をはたく。
「いってえ! ねえゴウ、どっちで怒ってる? オレが黙ってたこと? それとも、悠里ちゃんの脚触っちゃったこと?」
「うっせえ!どっちもだよ!」
剛士が両手の拳で、拓真のこめかみをグリグリと押さえつける。
「ちょっ? いった!? イッタイ!うめぼしー!!」
拓真が大袈裟な悲鳴を上げている。
悠里と彩奈は、呆気に取られた後、顔を見合わせ、思わず笑い出してしまった。
笑っている場合ではないのかも知れない。
しかし、拓真の捨て身の戦法により、4人の心を覆った苦しい空気が、ふっと緩んだ。
拓真が、済まなそうに口を開いた。
「ごめん、聞いちゃうけど。悠里ちゃんさ、ケガしてたことあったよね。それって、もしかして……」
「ケガ?」
剛士と彩奈が、同時に聞き返す。
拓真は頷き、2人に説明をする。
「こないだ、4人で遊んだでしょ? その前日、たまたま悠里ちゃんに会ったときにさ、」
拓真が悠里に対して、同情と、話してごめんねの視線を向けた。
「悠里ちゃん、転んだって言って、膝をケガしてたんだ……」
剛士と彩奈が、口々にあの日の小さな違和感を振り返った。
「あの……悠里っぽくない服のときか」
「だから悠里、スカート履いてなかったんだ……」
剛士の切れ長の瞳が、鋭さを増す。
「……悠里。あいつに、何された?」
彼の表情に気負され、悠里はしどろもどろに答える。
「あ、あのときは……安藤さんに初めて呼び出されて。そしたら、勇誠の人がいて……」
自分の通う学校の名が出た瞬間、剛士の目が更に、厳しい光を帯びた。
悠里は、ますます萎縮してしまう。
「で、でも、その人たちには、何もされてないよ。私が、安藤さんに突き飛ばされたときに、転んじゃっただけで……」
「あの野郎……!」
これでも、彼なりに抑えてはいるのかも知れない。
しかし、剛士の激しい怒りを前に、悠里はそれ以上、口をきけなくなってしまった。
悠里が口をつぐんでしまうと、剛士の怒りの目は、隣りへ向かった。
「拓真。てめえ、知ってたんなら何ですぐ言わなかった」
「ゴ、ゴウさん、拓真さんは私に気を遣ってくれて……」
慌てて剛士を止めようとする悠里をチラリと見て、拓真は大丈夫だと微笑む。
そして剛士に向かって、戯けたように手を合わせた。
「ごめんな、ゴウ! だってオレ、手当てするためとはいえ、悠里ちゃんの御御足を触っちゃったからさあ。ゴウに言ったら、身の危険を感じるじゃん?」
「はあ? バカじゃねえの?」
剛士が、勢いよく拓真の頭をはたく。
「いってえ! ねえゴウ、どっちで怒ってる? オレが黙ってたこと? それとも、悠里ちゃんの脚触っちゃったこと?」
「うっせえ!どっちもだよ!」
剛士が両手の拳で、拓真のこめかみをグリグリと押さえつける。
「ちょっ? いった!? イッタイ!うめぼしー!!」
拓真が大袈裟な悲鳴を上げている。
悠里と彩奈は、呆気に取られた後、顔を見合わせ、思わず笑い出してしまった。
笑っている場合ではないのかも知れない。
しかし、拓真の捨て身の戦法により、4人の心を覆った苦しい空気が、ふっと緩んだ。
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