#秒恋5 恋人同士まで、秒読みの、筈だった

ReN

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piece5 がんばろうよ

俺が、悪かった

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剛士がそっと、2人に歩み寄る。
そして両手を伸ばし、彼女らの手を掴んだ。

剛士は、ぎゅっと、それぞれの手を握る。
「ごめん……俺が、悪かった」
静かで、穏やかで、悲しい声だった。

彼は、深く頭を下げる。
「ごめんな。お前らに、こんなケンカをさせて。本当に、ごめん……」

2人の手を優しく引き寄せ、剛士は両手で包み込む。
「お前らが、こんなふうに離れたら、駄目だよ。仲直りしよう……お願い」


暫くの間、口をきけなかった。

悠里は、膜が張ってしまったような、ぼんやりとした感覚の中で、そっと指先だけを動かしてみる。

自分の手のすぐ傍にある、冷え切ってしまった親友の手。
それから、自分たちの手を包み込んでくれている、大きな手の温もり。


――しっかり、しなきゃ。

思考を放棄してしまっていた心に、鞭を打つ。
泣いている場合じゃない。
こんなになるまで親友を傷つけてしまった自分に、泣く権利なんかない。


悠里は、グッと唇を噛み締め、ボタボタと零れ続ける涙を堰き止める。
そうして勇気を出して、親友の手をしっかりと握った。
振り払われても振り払われても、何度でも掴もうと、心を奮い立たせた。


彩奈は、ビクッと指を強張らせた。
彼女が逡巡しているのが、悠里にも、そして剛士にも伝わってくる。
悠里は、目の前にいる親友の手を決して離さないように、思いを込めた。


やがて少しだけ、彩奈の手が、悠里に思いを返してくれる。

「彩奈……」
涙に掠れてしまう声を奮い立たせ、悠里は彼女に呼びかけた。
彩奈が、恐る恐る顔を上げる。
「彩奈」
もう一度、悠里は必死に呼びかける。
彩奈は、悠里と目が合った瞬間、くしゃり、と顔を歪めた。
「……悠里」


近くにいた剛士を吹き飛ばす勢いで、彩奈は悠里に抱きついた。
「ごめん……悠里、ごめん!!」
悠里も思い切り、自分より少しだけ背の高い親友を抱き締める。
「違う、違うよ、彩奈。ごめんは私だから!」
彩奈が強く首を横に振った。
「ごめん!…… 大好き! 悠里、大好き!!」

その言葉を聞いた瞬間、堰き止めていた悠里の涙も溢れ出す。
「私も……私も、大好き彩奈!」
「ごめんね!悠里、ごめんね!!」
「彩奈! ごめんね!」


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