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piece2 紹介してくれないか?
4人の友情
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恐怖が、不安が、悲しみが、拭われていく。
独りで怯えていた心が、柔らかく解けていく。
そうだ。私たちは、何にも悪いことはしていない。
胸を張って、両親にも、学校にも言えるんだ。
私たち4人の、友情は。
その確信は、悠里の心を、明るく奮い立たせた。
悠里は涙を堪え、しっかりと顔を上げる。
剛士に、そして彩奈と拓真に向かい、微笑んでみせた。
「……はい。2人のこと、ぜひ紹介させてください」
剛士が、優しい微笑を浮かべる。
「うん。ありがとな、悠里」
彩奈と拓真も、ホッとしたように笑顔になった。
「さあ、そうと決まったら善は急げだ! いつにしたらいいかな?」
拓真が悠里を見つめる。
剛士も頷き、付け加えた。
「悠里。俺たちは、ご両親の都合にいつでも合わせる。悪いけど、日程を決めてくれるか?」
「は、はい!」
2人が、ここまで言ってくれているのだ。
悠里は、スマートフォンを取り出した。
「いま、母に電話してみます」
彩奈が優しく問いかける。
「大丈夫?ママ、お仕事中じゃない?」
「大丈夫! いちおう定時は過ぎてるし、電話出てくれると思う」
ありがと、と彩奈に微笑みかけると、悠里は電話を繋いだ。
母は、すぐに応答してくれた。
悠里は、努めて明るい声で話し始める。
「お母さん? ごめんね、お仕事中に。いま、大丈夫?」
『大丈夫よ。何か、あった?』
いつもの母の優しい声は、悠里の心を落ち着かせてくれた。
悠里は、そっと深呼吸をし、早速本題に入る。
「……あのね。私と彩奈がよく遊んでる、勇誠学園のお友だち、いるでしょう?」
気恥ずかしさに負けないように、悠里は必死に声の明るさを保つ。
「実は、お母さんとお父さんに、紹介、したくて」
『あら、嬉しい』
母の声が弾んだ。
『このところ、悠里が本当に楽しそうだから。お母さん、お会いしてみたかったのよ』
「う、うん」
止めようもなく、悠里の頬が赤くなる。
「……あの、それでね? お母さんたち、いつ空いてるかなあって」
『ええと……』
カタカタとパソコンのキーボードを叩く音が聞こえ、母がスケジュールを確認しているのがわかる。
『そうね。直近なら、今週の土曜日が、ゆっくり時間取れるわよ。日曜日は、ごめんね。お母さんたち、またイベントの出張で前乗りの予定なの』
「土曜日……」
『ええ。どうかしら』
思わず悠里は、顔を曇らせた。
先週金曜日に電話で聞いた、剛士の言葉を思い返す。
『来週の土曜日に、会って話すことにしたよ』
そう。つまり今度の土曜日は、剛士はエリカと話し合いをする予定が入っているはずだ。
独りで怯えていた心が、柔らかく解けていく。
そうだ。私たちは、何にも悪いことはしていない。
胸を張って、両親にも、学校にも言えるんだ。
私たち4人の、友情は。
その確信は、悠里の心を、明るく奮い立たせた。
悠里は涙を堪え、しっかりと顔を上げる。
剛士に、そして彩奈と拓真に向かい、微笑んでみせた。
「……はい。2人のこと、ぜひ紹介させてください」
剛士が、優しい微笑を浮かべる。
「うん。ありがとな、悠里」
彩奈と拓真も、ホッとしたように笑顔になった。
「さあ、そうと決まったら善は急げだ! いつにしたらいいかな?」
拓真が悠里を見つめる。
剛士も頷き、付け加えた。
「悠里。俺たちは、ご両親の都合にいつでも合わせる。悪いけど、日程を決めてくれるか?」
「は、はい!」
2人が、ここまで言ってくれているのだ。
悠里は、スマートフォンを取り出した。
「いま、母に電話してみます」
彩奈が優しく問いかける。
「大丈夫?ママ、お仕事中じゃない?」
「大丈夫! いちおう定時は過ぎてるし、電話出てくれると思う」
ありがと、と彩奈に微笑みかけると、悠里は電話を繋いだ。
母は、すぐに応答してくれた。
悠里は、努めて明るい声で話し始める。
「お母さん? ごめんね、お仕事中に。いま、大丈夫?」
『大丈夫よ。何か、あった?』
いつもの母の優しい声は、悠里の心を落ち着かせてくれた。
悠里は、そっと深呼吸をし、早速本題に入る。
「……あのね。私と彩奈がよく遊んでる、勇誠学園のお友だち、いるでしょう?」
気恥ずかしさに負けないように、悠里は必死に声の明るさを保つ。
「実は、お母さんとお父さんに、紹介、したくて」
『あら、嬉しい』
母の声が弾んだ。
『このところ、悠里が本当に楽しそうだから。お母さん、お会いしてみたかったのよ』
「う、うん」
止めようもなく、悠里の頬が赤くなる。
「……あの、それでね? お母さんたち、いつ空いてるかなあって」
『ええと……』
カタカタとパソコンのキーボードを叩く音が聞こえ、母がスケジュールを確認しているのがわかる。
『そうね。直近なら、今週の土曜日が、ゆっくり時間取れるわよ。日曜日は、ごめんね。お母さんたち、またイベントの出張で前乗りの予定なの』
「土曜日……」
『ええ。どうかしら』
思わず悠里は、顔を曇らせた。
先週金曜日に電話で聞いた、剛士の言葉を思い返す。
『来週の土曜日に、会って話すことにしたよ』
そう。つまり今度の土曜日は、剛士はエリカと話し合いをする予定が入っているはずだ。
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