#秒恋5 恋人同士まで、秒読みの、筈だった

ReN

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piece1 密告

大切な人を守ること

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悠里は、グッと唇を噛み締める。
指導教諭は、容赦なく言った。
「行動をするときは常に、周囲からどう見られるかを、想像しておくべきです」
「……はい」
悠里は溢れ出しそうな気持ちを何とか堪え、返事をした。

「不適切な交友関係だと疑われるような態度を、貴女がとっていたのだとしたら。そこは正す必要があります。いま一度、ご自身の行動を振り返っていただけますか?」
「はい」
悠里はもう一度、真摯に頷く。

指導教諭の厳しい目が、幾分和らいだ。
そして、悠里の心に刻み込むように、ゆっくりと言った。

「行動に気を配り、周囲に心を配ることは、ご自分の身と名誉を守ることに繋がります。それは、ご自身の傍にいてくださる、大切な人を守ることでもあるのです」

「大切な人を……守る」
「その通りです」
真剣な瞳で言葉を復唱した悠里に、指導教諭は微笑んで頷いた。


「本件は、この面談をもって不問と致します。しかしながら、今回のようなメールが続いたり、他の問題が持ち上がるようであれば、学校としても、もう一歩踏み込んだ対処をせざるを得ません」

「……はい」
指導教諭の眼差しに、悠里は真っ直ぐに応える。
「橘さん。周囲の人の信頼を喪うことのないよう。何より、ご自分の尊厳を、ご自身の力で守ることができるよう。どうか気を引き締めて、生活をしてください」
「はい」

しっかりと頷く悠里を見つめ、指導教諭は最後に、ふっと柔らかな微笑を見せた。
「もう結構ですよ」
悠里、そして皆川は立ち上がり、深々と頭を下げた。


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