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piece1 密告
担任の皆川
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指導教諭は更に問う。
「男子生徒を家に呼ぶとき、ご両親は在宅されていますか?」
痛いところを突かれた。
悠里は目を伏せ、答える。
「いいえ」
「ご両親に、その男子生徒を紹介していますか?」
「……いいえ」
悠里は手を握り、勇気を振り絞った。
「でも自宅に招待するときは、毎回必ず、両親に許可を取っています」
「……なるほど」
指導教諭は2、3度、小さく頷いた。
それまで黙って見守っていた担任の皆川が、遠慮がちに指導教諭に進言する。
「先生。橘さんは、共働きで多忙なご両親に代わり、積極的に家事をこなして、ご家族を支えていらっしゃいます。日頃から生活態度も良く、非常に真面目な生徒です」
皆川は、傍らにいる悠里を気遣いながら、続けた。
「今回の件は橘さんからお話があった通り、ご友人を昼間ご自宅に招待したというだけのようです。ご両親も、このことをご存知であれば、特に問題はないと考えます」
指導教諭は口を挟まず、担任教師を見据えている。
皆川は、懸命に語りかけた。
「何か、誤解があったのでしょう。メールの文面にあるような、不適切な交友関係ではありません。橘さんは決して、そのようなことをする生徒ではありません」
「……わかりました」
皆川の話に対して、指導教諭は軽く頷いた。
そして指導教諭は、表情を変えずに悠里に視線を移す。
「我が校の規則は、異性との交遊を禁止するものではありません。したがって、今回の件が橘さんの仰る通りであれば、学校として問題とするところはないでしょう」
ホッと息をつきかけた悠里の喉元に切先を突きつけるように、指導教諭の言葉は続いた。
「しかしながら、今回のような相談メールが寄せられる事態を招くことは、問題ですよ」
「男子生徒を家に呼ぶとき、ご両親は在宅されていますか?」
痛いところを突かれた。
悠里は目を伏せ、答える。
「いいえ」
「ご両親に、その男子生徒を紹介していますか?」
「……いいえ」
悠里は手を握り、勇気を振り絞った。
「でも自宅に招待するときは、毎回必ず、両親に許可を取っています」
「……なるほど」
指導教諭は2、3度、小さく頷いた。
それまで黙って見守っていた担任の皆川が、遠慮がちに指導教諭に進言する。
「先生。橘さんは、共働きで多忙なご両親に代わり、積極的に家事をこなして、ご家族を支えていらっしゃいます。日頃から生活態度も良く、非常に真面目な生徒です」
皆川は、傍らにいる悠里を気遣いながら、続けた。
「今回の件は橘さんからお話があった通り、ご友人を昼間ご自宅に招待したというだけのようです。ご両親も、このことをご存知であれば、特に問題はないと考えます」
指導教諭は口を挟まず、担任教師を見据えている。
皆川は、懸命に語りかけた。
「何か、誤解があったのでしょう。メールの文面にあるような、不適切な交友関係ではありません。橘さんは決して、そのようなことをする生徒ではありません」
「……わかりました」
皆川の話に対して、指導教諭は軽く頷いた。
そして指導教諭は、表情を変えずに悠里に視線を移す。
「我が校の規則は、異性との交遊を禁止するものではありません。したがって、今回の件が橘さんの仰る通りであれば、学校として問題とするところはないでしょう」
ホッと息をつきかけた悠里の喉元に切先を突きつけるように、指導教諭の言葉は続いた。
「しかしながら、今回のような相談メールが寄せられる事態を招くことは、問題ですよ」
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