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piece5 2人の恋、4人の友情の始まりは
校長の尋問
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翌日のことだった。
2限目の授業を受けていると、教室に谷が顔を出す。
「柴崎、ちょっといいか?」
谷は授業を担当していた教師に何か耳打ちすると、剛士に声を掛けた。
「なにー、生活指導の谷から呼び出しって」
「剛士、お前何やったんだよー」
どっと笑い声が起こり、クラスの友人たちから軽口を叩かれる。
「うっせ」
ため息交じりに剛士は応える。
昨日の一件は、まだ表沙汰になっていない。クラスメートたちは、何も知らないのだ。
「……事情聴取ってとこ?」
ただ1人、状況を把握している拓真が、小声で剛士に問う。
「……だな」
「がんばれよー」
拓真の声援を背に受け、しぶしぶ剛士は席を立つ。
「ドンマイ剛士ー!」
クラスメイトからも、暖かいヤジが飛ぶ。
剛士はもう一度、長いため息をついた。
「すまんな、授業中に」
連れ立って廊下を進みながら、谷が言う。
「朝から、校長があいつらと面談してるんだが……校長が至急で、お前からも話を聞きたいと仰ってな」
校長室の重々しい扉が見えてきた。
「失礼します」
心持ち姿勢を正し、谷が扉を開けた。
重厚なソファには、髭をたくわえた初老の校長と、例の3人組が縮こまって座っていた。
剛士が鋭い目で睨みつけると、彼らは更に首を竦めて小さくなる。
「柴崎君。すまないね」
校長が柔和な微笑を浮かべる。
しかし、その瞳の奥には厳しい光が宿ったままだった。
その表情と3人組の様子から、相当に厳しい聴取が行われていることが想像できた。
剛士は促されるまま、ソファに腰掛けた。
続いて谷も彼の隣に腰を下ろす。
彼らが座るやいなや、校長の尋問が始まった。
「柴崎君。彼らとは、友人かね?」
剛士は、改めて3人組に目を向ける。
小太りの男。背の高い男。そして、目つきの悪い痩せぎすの男。
勇誠学園は学年ごとにネクタイの差し色が違う。
彼らは剛士と同じ、赤と白の差色が入っているので、2年生だ。
しかし、名前も知らなければ、廊下ですれ違った記憶すらなかった。
剛士は切れ長の瞳を怒りに燃やしたまま、質問に答える。
「いや、知らないです」
「ひ、ひどいよ柴崎くん。僕ら、トモダチだろ?……」
小太りの男がすり寄るように話しかけてきたが、剛士が再び睨みつけると、あとの言葉を飲み込んだ。
剛士の言葉を裏付けるように、谷が言う。
「校長。柴崎は理系コースで、こいつらは文系。クラスの場所も離れています。加えて、柴崎はバスケ部所属、こいつらはどこにも所属していません。柴崎とは、大した接点もないでしょう」
「……そのようだね」
冷たい目で校長が3人を見つめ、その目を剛士に移す。
「彼らは、柴崎君とは友達で、彼女を連れだしたのは柴崎君に頼まれてのこと。つまり、この件の首謀者は君だと言ったが」
剛士は、予想外の話に目を丸くする。
「いや、知らないですね」
先程と同じ答えを返す。
校長は頷いた。
「そのようだね」
剛士は怒りすら通り越し、呆れた目で3人組を見た。
「……だから、やめとこうって言ったんだよ」
「バレるに決まってるって……」
諦めたようにうな垂れる小太りと背の高い男をよそに、目つきの悪い男だけが、顔を歪めながら校長を見た。
「なんで、柴崎くんの方を信じるんですか? 柴崎くんが、自分だけ無実になろうとして、オレタチを陥れてるかも知れないですよね?」
片方の言い分を一方的に信用するなんて、不公平でしょ、と彼は掠れた声で訴えた。
「君たちの顔と、柴崎君の顔を見比べれば、どちらが嘘を付いているかなど、一目瞭然だよ」
校長が、低い声で答えた。
2限目の授業を受けていると、教室に谷が顔を出す。
「柴崎、ちょっといいか?」
谷は授業を担当していた教師に何か耳打ちすると、剛士に声を掛けた。
「なにー、生活指導の谷から呼び出しって」
「剛士、お前何やったんだよー」
どっと笑い声が起こり、クラスの友人たちから軽口を叩かれる。
「うっせ」
ため息交じりに剛士は応える。
昨日の一件は、まだ表沙汰になっていない。クラスメートたちは、何も知らないのだ。
「……事情聴取ってとこ?」
ただ1人、状況を把握している拓真が、小声で剛士に問う。
「……だな」
「がんばれよー」
拓真の声援を背に受け、しぶしぶ剛士は席を立つ。
「ドンマイ剛士ー!」
クラスメイトからも、暖かいヤジが飛ぶ。
剛士はもう一度、長いため息をついた。
「すまんな、授業中に」
連れ立って廊下を進みながら、谷が言う。
「朝から、校長があいつらと面談してるんだが……校長が至急で、お前からも話を聞きたいと仰ってな」
校長室の重々しい扉が見えてきた。
「失礼します」
心持ち姿勢を正し、谷が扉を開けた。
重厚なソファには、髭をたくわえた初老の校長と、例の3人組が縮こまって座っていた。
剛士が鋭い目で睨みつけると、彼らは更に首を竦めて小さくなる。
「柴崎君。すまないね」
校長が柔和な微笑を浮かべる。
しかし、その瞳の奥には厳しい光が宿ったままだった。
その表情と3人組の様子から、相当に厳しい聴取が行われていることが想像できた。
剛士は促されるまま、ソファに腰掛けた。
続いて谷も彼の隣に腰を下ろす。
彼らが座るやいなや、校長の尋問が始まった。
「柴崎君。彼らとは、友人かね?」
剛士は、改めて3人組に目を向ける。
小太りの男。背の高い男。そして、目つきの悪い痩せぎすの男。
勇誠学園は学年ごとにネクタイの差し色が違う。
彼らは剛士と同じ、赤と白の差色が入っているので、2年生だ。
しかし、名前も知らなければ、廊下ですれ違った記憶すらなかった。
剛士は切れ長の瞳を怒りに燃やしたまま、質問に答える。
「いや、知らないです」
「ひ、ひどいよ柴崎くん。僕ら、トモダチだろ?……」
小太りの男がすり寄るように話しかけてきたが、剛士が再び睨みつけると、あとの言葉を飲み込んだ。
剛士の言葉を裏付けるように、谷が言う。
「校長。柴崎は理系コースで、こいつらは文系。クラスの場所も離れています。加えて、柴崎はバスケ部所属、こいつらはどこにも所属していません。柴崎とは、大した接点もないでしょう」
「……そのようだね」
冷たい目で校長が3人を見つめ、その目を剛士に移す。
「彼らは、柴崎君とは友達で、彼女を連れだしたのは柴崎君に頼まれてのこと。つまり、この件の首謀者は君だと言ったが」
剛士は、予想外の話に目を丸くする。
「いや、知らないですね」
先程と同じ答えを返す。
校長は頷いた。
「そのようだね」
剛士は怒りすら通り越し、呆れた目で3人組を見た。
「……だから、やめとこうって言ったんだよ」
「バレるに決まってるって……」
諦めたようにうな垂れる小太りと背の高い男をよそに、目つきの悪い男だけが、顔を歪めながら校長を見た。
「なんで、柴崎くんの方を信じるんですか? 柴崎くんが、自分だけ無実になろうとして、オレタチを陥れてるかも知れないですよね?」
片方の言い分を一方的に信用するなんて、不公平でしょ、と彼は掠れた声で訴えた。
「君たちの顔と、柴崎君の顔を見比べれば、どちらが嘘を付いているかなど、一目瞭然だよ」
校長が、低い声で答えた。
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