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piece4 ストーカーの正体

柴崎さんはそんな人じゃない

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――同類。
その言葉に、悠里は顔を上げた。
「……違います」
その瞳には涙が浮かんだままだったが、悠里はキッと彼らを睨みつける。
「……は? 何が?」
「柴崎さんは、そんな人じゃありません」

男たちの空気が凍りつく。
「そんな人じゃないって、なんでわかるの?」
「どうせ、顔で判断してんでしょ?」
「悠里ちゃんも、アイツがイケメンだから、仲よくしてるだけでしょ?」
男たちが口にする表面上の話を、悠里はきっぱりと否定する。
「違います」

悠里は、自分のことを見つめる、切れ長の優しい瞳を思い返した。
初めて会ったときも。
イタズラ電話をとった夜、駅で再会したときも。
彼の瞳は心配そうに、そして暖かく、悠里のことを見つめていた。

『お前は、俺が守るから』

ストーカーの恐怖に崩れ落ちそうになっていた悠里に、彼がくれた優しさ。
大きな手が、自分の手を包んでくれた。
悠里の怯えた心は、彼の温もりに励まされた。力をもらえた。
剛士の外見ではない。
剛士の暖かい言葉と行動で、悠里は彼を信じたのだ。

悠里はしっかりと顔を上げ、言った。
「柴崎さんの目を見たら分かります。柴崎さんは、私のことを本当に心配して、助けてくれてるんです。柴崎さんは……」
「柴崎、柴崎って、うるせえな!」

ガン! と目つきの悪い男が、突然壁を蹴りつけた。
悠里は小さな悲鳴を上げ、身を竦める。
「何が、目を見たら分かるだよ。なんでそんなに、柴崎の肩、持つわけ?」
男が、ぐっと顔を近づけてきた。
「もしかして……家に上げたとき、柴崎と、ヤッちゃったの?」

突如ぶつけられる下卑た憶測に、悠里の心が震えた。
「……そんな。そんなこと……してません」
必死の思いで、首を横に振る。
どうして、こんな酷いことを言われなければならないのだろう。
自分だけではない。
自分を心から心配して、手を差し伸べてくれた剛士の暖かさまでも、汚らしく踏みにじられた気がした。

涙声で悠里は叫ぶ。
「柴崎さんは、そんな人じゃありません! あなたたちと一緒にしないで!」
「はいはい。どうせオレタチはキモくて、柴崎はカッコイイですよ」
男は荒い息を吐き、小太りの男と背の高い男の方を見る。

「……ねえ? 悠里ちゃん、柴崎と、ヤッてないってさ」
目つきの悪い男が、ゆっくりと囁いた。
「じゃあ、オレタチが先に、ヤッちゃえば……良くない?」
そうすれば、柴崎から、悠里ちゃんを取り返せるじゃん。笑い交じりに、男は言った。
ゴクリ、と男たちの唾を飲む音が聞こえた。

悠里は戦慄した。手足が、すうっと冷たくなっていく。
「……そうだな」
「やっちゃおうぜ」
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