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piece3 剛士の練習試合

拓真のサプライズ。呼べばいいじゃん!

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剛士は、この一件を悠里たちにも、――拓真にさえも秘密にしていた。
谷の言うとおり、犯人の正体を掴むまでは、事を大きくしない方が得策だと考えたからだ。
それに何よりも、拓真に嫌がらせが飛び火することを避けたかった。


こうして表向きは何事もなく、さらに3日が過ぎた。
放課後、剛士は親友に声を掛けた。
「拓真。俺は今日、練習試合だから遅くなる。悪いけど、今日だけ代わりに悠里を送ってくれ」

本当のことを言えば、拓真に頼むのは気が引ける。
しかし試合終了は、いつもの活動時間よりも遅くなる。
それまで悠里を待たせるわけにもいかなかった。

「え、そうなの? 練習試合って、他校の生徒も観に来ていいんでしょ? 悠里ちゃんたち、呼べばいいじゃん!」
拓真の金髪頭が振り返り、目を丸くしている。

「言うなよ?」
部活に行く用意をしながら、剛士は鋭く釘を刺す。
「見に来られたら面倒だ。適当にごまかしとけ」
「……へーい」
肩をすくめ、拓真は返事をする。
剛士は、頼んだと言い残し、体育館へと向かった。


もちろん剛士の意図は、悠里を勇誠学園に来させるのが危険だということだ。
しかし剛士への嫌がらせの件を知らない拓真は、剛士の言葉を、ただの「照れ」だと解釈する。
拓真はイタズラっぽい微笑を浮かべ、スマートフォンを手に取った。  


悠里のスマートフォンが光り、メッセージの受信を知らせる。
「拓真さんからだ……」
「なになに?」
彩奈が内容を問う。
悠里は目を丸くした。
「……柴崎さん、今日、練習試合なんだって」

「試合? バスケ部の?」
「うん。だから、観に来ないか?って」
「ウソウソー! 行こうよ!」
彩奈が勢いよく立ち上がる。
「うん……でも、いいのかな」

剛士からの直接の連絡ではないことが、微かに悠里の心に引っ掛かる。
それを押し切るように、彩奈が早口で問いかけた。
「何言ってんの! 柴崎さんの勇姿が見れるチャンスじゃん! 見たいでしょ!?」
「う、うん……」

勇誠学園 籠球部。
初めて勇誠学園に行ったときに見た、黒のジャージを着た長身。
それは、毎日のように悠里の脳裏をよぎっていた。
登下校以外の彼に会ったことは、あの他にはない。
悠里の頬が、ふわっと色づいた。


知りたい。もっと他の場所での、彼のことを。
剛士の、バスケ部で躍動する姿を、見てみたい。
その気持ちは、小さな違和感を吹き飛ばすには充分だった。

彩奈が笑い、大きく頷いた。
「決まり! 急いで行こう!」
興奮に掻き立てられ、2人はバタバタと教室を飛び出した。  
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