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piece4 ストーカーの正体
3人の男に囲まれて
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悠里は、体育館の奥に位置する用具室の前まで引き摺られていった。
「離して。離してください!」
掴まれていた腕を振り払い、悠里はできる限り、彼らから距離を取ろうとする。
通路は薄暗く、人の気配はない。
試合の歓声が、遠くに聞こえる。
不安に背筋が凍りそうだった。
男たちは、下卑た笑いを浮かべながら、彼女を見つめている。
「バスケ部の試合、絶対にキミ、観に来ると思ってたんだよ」
「柴崎クンが、出てるもんねえ?」
男たちが笑う。
悠里は唇を噛み、彼らの言葉を聞いた。
剛士の知り合いなのだろうか。
しかし、彼らの口から出た「柴崎」という声音に、友好的な感情は見えなかった。
「危ないよ、悠里ちゃん? そんな簡単に1人になっちゃってさあ。まさに、飛んで火にいる……ってヤツだよ?」
「オレタチにとっては、ビッグチャンスだったけどね?」
男たちは顔を見合わせ、笑った。
悠里は、気丈に男たちを睨む。
「……誰なんですか。大声出しますよ」
3人は、にいっと一層笑いを深めた。
「とか言っちゃって、震えてる? かっわいいー」
「大丈夫だよー、ゆーりちゃーん」
目つきの悪い男が手を伸ばした。
無遠慮に頭を撫でられ、悠里は身を竦める。
「やっ……」
後ずさりするが、通路の端に追いやられ、逃げられない。
「やめてください……!」
悠里は必死に、声を振り絞った。
かわいー、と男たちは笑う。
「そんな、嫌がらないでよ。オレタチ、毎日電話した仲じゃん」
「アツいラブレターも、出したでしょ?」
悠里の頭に、A4サイズの茶封筒がよみがえった。
膨大な数の写真、そして手紙。
書かれていた、おびただしい欲望の言葉。
悠里の身体が強張る。
「……気づいてくれた?」
男たちはニヤニヤと笑いながら、近づいてきた。
「そう。オレタチだよ?」
悠里は震えながら呟いた。
「どうして……」
「どうしてって、」
男たちが、悠里をゆっくりと取り囲む。
「キミのファンだからに、決まってるじゃない」
「マリ女の学祭の写真で、キミのこと知ってさあ」
「もう、一目惚れだよねえ」
『ウチは男子校だから、他校の女子をチェックして、情報を回すヤツがいるんだよね』
『写真が出回っちゃったり』
拓真が言っていた言葉を、思い出す。
自分の知らないところで、自分が人に見られ、執着される。
その恐怖を眼前に突き付けられ、胸が竦んだ。
「……こんなふうにさあ」
目つきの悪い男が、一歩足を踏み出し囁く。
「キミと喋って、キミに触るの、夢だったよお?」
肩に手を置かれ、悠里は思わず、か細い悲鳴を上げた。
「ねえ、仲良くしようよ。悠里ちゃん……」
背はとうに通路の壁にぶつかっており、逃げ場がない。
涙を堪えて、悠里は反撃した。
「……こんな、卑劣なことする人とは、仲良くできません」
「……は?」
恐怖に痛む心臓を押さえつつ、悠里は続ける。
「仲良くしたいなら、普通に声を掛ければいいじゃないですか。それを、イタズラ電話や変な手紙を送りつけたり。こんな……」
悠里は、真っ直ぐに男たちを睨みつけた。
「無理矢理、こんなことするなんて……最低です」
男たちの目の色が、変わった。
「普通に、声掛けるって……なに? できるワケなくない?」
「そんな正論、ぶつけてこられたってさあ……」
男たちの声質が、硬く、冷たいものに変わったのを感じ、悠里は唇を噛む。
「オレたちみたいな、キモいのが声掛けたって、どうせ女はムシするじゃん」
目つきの悪い男が言う。
「そりゃあ、柴崎みたいなヤツならさ、簡単に声掛けれるだろうね? キミも、簡単に相合傘したり、家まで送ってもらっちゃったり、するんだよねえ?」
ゾクリ、と胸が震える。
悠里の表情から思考を読み取ったのか、男たちはニヤリと笑った。
「そう!キミが柴崎とぶつかったのも。柴崎に会いにウチの学校来たのも。電車のホームで喋ってたのも」
「家に送ってもらって、しかも、家に上げちゃったのもね……知ってるよ? 全部!」
彼らは、悠里と剛士との出会いから今日までの全てを、監視していたのだ。
零れ出しそうな悲鳴を堪えるために、悠里は口を押さえた。
目つきの悪い男が言う。
「オレタチのこと、キモいって思ったでしょ。でもさ……柴崎だってどうせ、考えてることはオレタチと同じだよ?」
悠里は身を固くして、彼を見た。
背の高い男と、小太りの男も同調する。
「柴崎のコト、優しいとか思ってるんだろうけどさぁ。アイツだってどうせ、頭ん中はエロイことでイッパイだよ」
「なんでキミに優しくするかって、ヤリたいからに決まってんじゃん」
どうせ下心満載なんだよ、と3人はせせら笑った。
「騙されちゃダメだよ、悠里ちゃん? アイツもさ、もしかしてキミと仲良くなるために、わざとあの雨の日にぶつかってきたんじゃない? 」
「キミに近づくチャンスを、狙ってたのかも」
歪んだ笑みを貼り付け、目つきの悪い男が言った。
「手段が違うだけでさあ。柴崎もしょせん、オレタチと同類なんだよ……?」
「離して。離してください!」
掴まれていた腕を振り払い、悠里はできる限り、彼らから距離を取ろうとする。
通路は薄暗く、人の気配はない。
試合の歓声が、遠くに聞こえる。
不安に背筋が凍りそうだった。
男たちは、下卑た笑いを浮かべながら、彼女を見つめている。
「バスケ部の試合、絶対にキミ、観に来ると思ってたんだよ」
「柴崎クンが、出てるもんねえ?」
男たちが笑う。
悠里は唇を噛み、彼らの言葉を聞いた。
剛士の知り合いなのだろうか。
しかし、彼らの口から出た「柴崎」という声音に、友好的な感情は見えなかった。
「危ないよ、悠里ちゃん? そんな簡単に1人になっちゃってさあ。まさに、飛んで火にいる……ってヤツだよ?」
「オレタチにとっては、ビッグチャンスだったけどね?」
男たちは顔を見合わせ、笑った。
悠里は、気丈に男たちを睨む。
「……誰なんですか。大声出しますよ」
3人は、にいっと一層笑いを深めた。
「とか言っちゃって、震えてる? かっわいいー」
「大丈夫だよー、ゆーりちゃーん」
目つきの悪い男が手を伸ばした。
無遠慮に頭を撫でられ、悠里は身を竦める。
「やっ……」
後ずさりするが、通路の端に追いやられ、逃げられない。
「やめてください……!」
悠里は必死に、声を振り絞った。
かわいー、と男たちは笑う。
「そんな、嫌がらないでよ。オレタチ、毎日電話した仲じゃん」
「アツいラブレターも、出したでしょ?」
悠里の頭に、A4サイズの茶封筒がよみがえった。
膨大な数の写真、そして手紙。
書かれていた、おびただしい欲望の言葉。
悠里の身体が強張る。
「……気づいてくれた?」
男たちはニヤニヤと笑いながら、近づいてきた。
「そう。オレタチだよ?」
悠里は震えながら呟いた。
「どうして……」
「どうしてって、」
男たちが、悠里をゆっくりと取り囲む。
「キミのファンだからに、決まってるじゃない」
「マリ女の学祭の写真で、キミのこと知ってさあ」
「もう、一目惚れだよねえ」
『ウチは男子校だから、他校の女子をチェックして、情報を回すヤツがいるんだよね』
『写真が出回っちゃったり』
拓真が言っていた言葉を、思い出す。
自分の知らないところで、自分が人に見られ、執着される。
その恐怖を眼前に突き付けられ、胸が竦んだ。
「……こんなふうにさあ」
目つきの悪い男が、一歩足を踏み出し囁く。
「キミと喋って、キミに触るの、夢だったよお?」
肩に手を置かれ、悠里は思わず、か細い悲鳴を上げた。
「ねえ、仲良くしようよ。悠里ちゃん……」
背はとうに通路の壁にぶつかっており、逃げ場がない。
涙を堪えて、悠里は反撃した。
「……こんな、卑劣なことする人とは、仲良くできません」
「……は?」
恐怖に痛む心臓を押さえつつ、悠里は続ける。
「仲良くしたいなら、普通に声を掛ければいいじゃないですか。それを、イタズラ電話や変な手紙を送りつけたり。こんな……」
悠里は、真っ直ぐに男たちを睨みつけた。
「無理矢理、こんなことするなんて……最低です」
男たちの目の色が、変わった。
「普通に、声掛けるって……なに? できるワケなくない?」
「そんな正論、ぶつけてこられたってさあ……」
男たちの声質が、硬く、冷たいものに変わったのを感じ、悠里は唇を噛む。
「オレたちみたいな、キモいのが声掛けたって、どうせ女はムシするじゃん」
目つきの悪い男が言う。
「そりゃあ、柴崎みたいなヤツならさ、簡単に声掛けれるだろうね? キミも、簡単に相合傘したり、家まで送ってもらっちゃったり、するんだよねえ?」
ゾクリ、と胸が震える。
悠里の表情から思考を読み取ったのか、男たちはニヤリと笑った。
「そう!キミが柴崎とぶつかったのも。柴崎に会いにウチの学校来たのも。電車のホームで喋ってたのも」
「家に送ってもらって、しかも、家に上げちゃったのもね……知ってるよ? 全部!」
彼らは、悠里と剛士との出会いから今日までの全てを、監視していたのだ。
零れ出しそうな悲鳴を堪えるために、悠里は口を押さえた。
目つきの悪い男が言う。
「オレタチのこと、キモいって思ったでしょ。でもさ……柴崎だってどうせ、考えてることはオレタチと同じだよ?」
悠里は身を固くして、彼を見た。
背の高い男と、小太りの男も同調する。
「柴崎のコト、優しいとか思ってるんだろうけどさぁ。アイツだってどうせ、頭ん中はエロイことでイッパイだよ」
「なんでキミに優しくするかって、ヤリたいからに決まってんじゃん」
どうせ下心満載なんだよ、と3人はせせら笑った。
「騙されちゃダメだよ、悠里ちゃん? アイツもさ、もしかしてキミと仲良くなるために、わざとあの雨の日にぶつかってきたんじゃない? 」
「キミに近づくチャンスを、狙ってたのかも」
歪んだ笑みを貼り付け、目つきの悪い男が言った。
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