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piece7 バレンタイン・サプライズ

悠里のサプライズ

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甘い熱に浮かされながら、悠里は勇気を振り絞る。

「......あのね、ゴウさん」
「ん?」
悠里は、自分の背後に隠すようにして持っていた紙袋を差し出した。
「お誕生日、おめでとう」

剛士は一瞬、切れ長の瞳に驚きを浮かべた後、優しく微笑んだ。
「あんなすごいケーキ貰ったのに、更に?」

悠里は慌てて応える。
「そんな、全然大したものじゃないの」
剛士がプレゼントに目を落とす。
「開けてもいい?」

緊張に早鐘を打つ胸を押さえながら、悠里は頷いた。
剛士は紙袋から丁寧に、プレゼントを取り出した。
長い指が、するするとラッピングのリボンを解いていく。


「お、」
剛士の笑みが大きくなった。
「ネックウォーマー?」
「うん!」
剛士は早速身につけてみせた。
その自然な優しさが、悠里の心に響く。

「……うん、暖かい」
彼をイメージした黒い毛糸は、思っていた通り、剛士の綺麗な黒髪と瞳に映えた。
「ありがとな。俺、寒いの苦手だから、毎日使うわ」
「ふふ、良かった」
そういえば、朝の電車で言ってたなあと思い出し、悠里は微笑んだ。

「簡単なものしか作れなかったんだけど、良かったら使ってください」
悠里の言葉を聞いた瞬間、剛士が目を丸くする。
「え?これ、悠里の手作り?」
「あ、う、うん」

頷きながら、やっぱり手作りなんて重かったかな、と俄かに後悔の念が頭をもたげる。
どうしようと悠里が頭を巡らせようとしたとき、剛士が声を弾ませた。
「ありがとう、すげえ嬉しい」

そっと様子を窺うと、剛士は感心したようにネックウォーマーを触っていた。
「すごい綺麗だし、触り心地いいから、普通に店のだと思った」

剛士の優しい瞳が悠里に向き直り、微笑んだ。
大きな手が、彼女の手に重ねられる。
「ケーキもだし、お前、本当すごいな」
悠里は真っ赤になりながらも、ほっとして笑顔になった。


「……でも、お前さ」
剛士がすまなそうな顔をして、彼女の目を覗き込む。
「このために最近、寝不足だったんだろ」
「え?」

きょとんと、悠里は目を丸くする。
「金曜日も眠そうな顔してたから、ちょっと心配してたんだぞ?」

悠里は困ったように眉尻を下げた。
「私、そんなに眠そうだった?」
「うん。今日もな」

観覧車の出来事が、悠里の頭をよぎる。
「ごめん。私、寝ちゃったもんね……」
「まあ、可愛かったけど……よっぽど眠かったんだよな」
優しく笑い、剛士は慰めるような声音で答えた。

「ごめんなさい。つい夢中になっちゃって」
「俺のために、無理はすんなよ?」
「はい……」
クシャクシャと髪を撫でられる。

「でも本当……ありがとな」
「ゴウさん……」
優しい切れ長の瞳に間近で見つめられ、悠里の心は、更に熱を持った。
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