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piece7 バレンタイン・サプライズ
彩奈と拓真のサプライズ
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ピザもケーキも食べ終わり、時間は16時過ぎ。
皆でくつろいでいるときに、ふと悠里は思い立った。
剛士に用意した、ささやかなプレゼント。
編み上げたネックウォーマーは丁寧にラッピングし、2階の自分の部屋に置いてある。
皆が帰るときに、そっと剛士に渡すつもりだった。
スムーズに渡すことができるように、今のうちに、こっそり持ってきておこうと思った。
ちょうど良いタイミングで、剛士がお手洗いに立った。
「私、ちょっと2階に行ってくるね」
談笑を続けている彩奈と拓真に伝え、悠里は足取り軽く階段を昇った。
机の上にある、小さなプレゼント。
そっと手に取り、抱きしめる。
――喜んで貰えたらいいな……
心地よく胸が高鳴った。
目立たないようにシンプルな紙袋に入れ、悠里は再び1階に降りた。
リビングの扉を開けると、そこは、もぬけの殻だった。
「……え?」
状況が飲み込めず、悠里は扉を開けたまま立ち尽くす。
「悠里。どうした?」
トイレから戻ってきた剛士が、背後から声を掛けた。
「ゴウさん」
目を丸くしたまま、悠里は振り返る。
剛士がリビングに目を向けた。
「……え?あいつら、どこに行ったんだ?」
彼らの使っていた皿もコップも、そこにある。
しかし、彩奈と拓真の荷物は無くなっていた。
「……まさか、帰ったのか?」
玄関を見に行くと、案の定、2人の靴が消えていた。
剛士が靴を履いて扉を開け、確かめるように外を見回す。
やはり2人は、影も形も見当たらなかった。
「はあ……何考えてんだ、あいつら」
呆れたように剛士が溜め息をつく。
恐らくは、悠里と剛士を2人きりにしようというサプライズだ。
悠里の胸が、俄かに激しく音を立てる。
急にこんな状況に置かれても、心の準備が整うはずもない。
「......お前も、嵌められたってことだよな?」
「......そうみたい」
蚊の鳴くような声で悠里が応えると、剛士が笑った。
「仕掛け人の1人だったはずなのにな」
剛士が玄関に入り、扉の鍵をかける。
「……あ、拓真さんにお礼、渡しそびれちゃった」
ハッとして、悠里は呟いた。
剛士が悠里を見つめ、首を傾げる。
「拓真へのバレンタイン?」
「うん。拓真さんにも、とてもお世話になってるし、今日のサプライズ、声を掛けてくれたのは拓真さんだから」
剛士を見上げ、にっこりと悠里は微笑む。
「それに、拓真さんが教えてくれたおかげで、ゴウさんのお誕生日をお祝いできたんだもん」
「……ん、そうだよな」
剛士は少しだけ照れたように微笑み返すと、悠里の髪を優しく撫でた。
「俺も、あいつに感謝しないとな」
「ふふ、うん!」
「俺が預かって、明日学校で渡しとくか?」
「本当? じゃあ、お願いしちゃおうかな」
剛士が悪戯っぽく笑う。
「まあ、中身は俺が食っちまうかも知れねえけど」
「あはは」
可愛らしい冗談に、思わず悠里は笑ってしまう。
「ゴウさんの分も、あるよ?」
悠里は頬を染め、恥ずかしそうに微笑んだ。
「え?本当に?」
「ふふ、貰ってくれる?」
「貰う」
嬉しそうに即答してくれる剛士に、悠里はまた笑いを誘われた。
皆でくつろいでいるときに、ふと悠里は思い立った。
剛士に用意した、ささやかなプレゼント。
編み上げたネックウォーマーは丁寧にラッピングし、2階の自分の部屋に置いてある。
皆が帰るときに、そっと剛士に渡すつもりだった。
スムーズに渡すことができるように、今のうちに、こっそり持ってきておこうと思った。
ちょうど良いタイミングで、剛士がお手洗いに立った。
「私、ちょっと2階に行ってくるね」
談笑を続けている彩奈と拓真に伝え、悠里は足取り軽く階段を昇った。
机の上にある、小さなプレゼント。
そっと手に取り、抱きしめる。
――喜んで貰えたらいいな……
心地よく胸が高鳴った。
目立たないようにシンプルな紙袋に入れ、悠里は再び1階に降りた。
リビングの扉を開けると、そこは、もぬけの殻だった。
「……え?」
状況が飲み込めず、悠里は扉を開けたまま立ち尽くす。
「悠里。どうした?」
トイレから戻ってきた剛士が、背後から声を掛けた。
「ゴウさん」
目を丸くしたまま、悠里は振り返る。
剛士がリビングに目を向けた。
「……え?あいつら、どこに行ったんだ?」
彼らの使っていた皿もコップも、そこにある。
しかし、彩奈と拓真の荷物は無くなっていた。
「……まさか、帰ったのか?」
玄関を見に行くと、案の定、2人の靴が消えていた。
剛士が靴を履いて扉を開け、確かめるように外を見回す。
やはり2人は、影も形も見当たらなかった。
「はあ……何考えてんだ、あいつら」
呆れたように剛士が溜め息をつく。
恐らくは、悠里と剛士を2人きりにしようというサプライズだ。
悠里の胸が、俄かに激しく音を立てる。
急にこんな状況に置かれても、心の準備が整うはずもない。
「......お前も、嵌められたってことだよな?」
「......そうみたい」
蚊の鳴くような声で悠里が応えると、剛士が笑った。
「仕掛け人の1人だったはずなのにな」
剛士が玄関に入り、扉の鍵をかける。
「……あ、拓真さんにお礼、渡しそびれちゃった」
ハッとして、悠里は呟いた。
剛士が悠里を見つめ、首を傾げる。
「拓真へのバレンタイン?」
「うん。拓真さんにも、とてもお世話になってるし、今日のサプライズ、声を掛けてくれたのは拓真さんだから」
剛士を見上げ、にっこりと悠里は微笑む。
「それに、拓真さんが教えてくれたおかげで、ゴウさんのお誕生日をお祝いできたんだもん」
「……ん、そうだよな」
剛士は少しだけ照れたように微笑み返すと、悠里の髪を優しく撫でた。
「俺も、あいつに感謝しないとな」
「ふふ、うん!」
「俺が預かって、明日学校で渡しとくか?」
「本当? じゃあ、お願いしちゃおうかな」
剛士が悪戯っぽく笑う。
「まあ、中身は俺が食っちまうかも知れねえけど」
「あはは」
可愛らしい冗談に、思わず悠里は笑ってしまう。
「ゴウさんの分も、あるよ?」
悠里は頬を染め、恥ずかしそうに微笑んだ。
「え?本当に?」
「ふふ、貰ってくれる?」
「貰う」
嬉しそうに即答してくれる剛士に、悠里はまた笑いを誘われた。
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