#秒恋3 友だち以上恋人未満の貴方に、甘い甘いサプライズを〜貴方に贈るハッピーバースデー〜

ReN

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piece6 サプライズ作戦開始!

ハッピーバースデー!

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「そだ!ろうそくつけよー!」

彩奈が喜々としてマッチを取り出し、花のキャンドルを灯し始める。
ふわふわと揺れる幻想的な炎が現れた。

悠里はそっと剛士の腕に触れ、微笑む。
「このキャンドルね、彩奈が用意してくれたの。それに、壁のデコレーションも」

「そうだったのか。綺麗だな」
剛士が壁を見つめ、ふっと優しい笑顔を浮かべた。
「やっぱり写真部だけあって、センスいいな。ありがとな、彩奈」
「あはは、どういたしまして!」
彩奈が嬉しそうに笑った。

「あ、そうそう。一応これも準備しといたんで!」
そう言って、剛士に例のバースデーメガネとタスキを手渡す。

「……前言撤回するわ」
剛士が吹き出す。
「清々しいほどダセェ!」
「あははははは!」
彩奈が大爆笑しながら親指を立てて見せる。

「しょうがねえな」
言いながら、剛士はタスキに腕を通すと、さらりと前髪を掻き上げ、メガネをかけた。

彩奈、そして悠里が手を叩いて笑い出す。
「今日、ノリいいじゃんゴウ!」
拓真も嬉しそうに笑った。
「まあな」


「よし!ろうそくも点いたことだし、誕生日らしいことやりますか!」
拓真が手拍子を始め、誕生日の歌の前奏を歌い出す。

「はい!ハッピバースデートゥーユー!」
手拍子をしながら歌い、剛士が綺麗にキャンドルを吹き消し、皆で笑い合った。


「はいはい、お2人さん!写真撮るよー!」
彩奈が、いそいそと一眼レフを手にし、悠里と剛士に並ぶよう指示を出す。

2人は彩奈が飾りつけてくれた壁をバックに、ケーキとキャンドルを置いたテーブルの傍に立った。

剛士の腕が肩に回され、そっと抱き寄せられる。
首筋から肩にかけて、心地よく伝わる、彼の温もり。
ハッと悠里は頬を熱くする。

「おっ、いいねえ!」
彩奈が楽しそうに笑い、シャッターを切った。
「……うん!めちゃめちゃ可愛い悠里が撮れた」

満足げに彩奈は頷いた。
「まあ、シバさんがアホみたいなメガネ掛けてるのが玉に瑕だけど!」
「お前がよこしたんだろうが」
また剛士が笑い出す。

そして、彩奈が持っているカメラを指して言った。
「それ、タイマー付いてるよな? みんなで撮ろうぜ」
「オッケー!任せて」

彩奈がカウンターキッチンにカメラを置き、画面を覗き込む。
「ん~、拓真くん、もう少し右に詰められる?……ん、オッケー!」
タイマーをセットし、彩奈が笑顔で悠里の隣に走り込む。

「3、2、1!」
「いぇーい!」
パシャリ、と軽快なシャッター音が鳴った。
彩奈が撮れた写真を確認し、嬉しそうにオーケーサインを出した。


「悠里、俺もケーキの写真撮っていい?」
タスキとメガネを取った剛士が、切れ長の瞳で真っ直ぐに悠里を見つめる。

「うん、もちろん!」
悠里が微笑みながら頷くと、剛士はスマートフォンを取り出し、撮影を始めた。

真剣な瞳で、全体像と、ひとつひとつのパーツを撮り始める剛士に拓真が笑い出す。
「ゴウが食べ物の写真を撮るとこ、初めて見た!」

「だって、これは撮るだろ?」
剛士が撮影しながら応える。
「うんうん、わかるわ」
「な、すごいよな。ゴールもボールもすごいけど、ユニフォームな。これ、俺じゃん」

頷く拓真に、剛士は声を弾ませてユニフォームのクッキーを指差した。
気がついてくれたんだ、と悠里は嬉しくなる。

「あと、このプレート、得点板だよな」
剛士が笑顔で振り返り、悠里を見つめた。
「あ、うん!見えるかな?」
悠里は、ニコニコと首を傾げる。

「うん、見える。本当すごいわ」
撮影を終えた剛士が立ち上がり、悠里の頭を撫でた。
「こんなすごいの、作るの大変だったろ。本当……ありがとな」
「ううん。私が作りたかったの」

大切な、剛士の誕生日だから。
頬を染め、悠里は優しい黒の瞳を見上げて微笑んだ。

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