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piece5 楽しい観覧車
剛士の思い出
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トイレに向かい歩き出しながら、剛士がすまなそうに言った。
「悪い、俺のためだよな」
悠里は、悪戯っぽく微笑む。
「ふふ。トイレに行きたいのも、フリーフォールがちょっと苦手なのも、ホント」
悠里は、そっと剛士の指を握った。
「ゴウさん。観覧車は、平気?」
「うん」
「じゃあ、一緒に乗ろうね」
彼を見上げ、悠里はにっこり微笑んだ。
剛士も柔らかく微笑すると、悠里の手をしっかりと握り直す。
「……俺、兄貴がいるって言っただろ?」
「うん」
「小さい頃、そいつに無理やり絶叫マシン乗せられたせいで、今でも苦手なんだ」
悠里は目を丸くした。
「そうだったの。それは可哀想」
「親も、自分たちは乗りたくないもんだから、代わってくれないしな」
当時を思い出しているのか、剛士は苦笑いしながらも、穏やかな声で言う。
「何回も乗せられたせいで、トラウマだよ」
4つも年上の兄ならば、遊園地のアトラクションの好みも、だいぶ差があっただろう。
兄に付き合わされて、恐怖体験を繰り返す羽目になった小さな頃の剛士を思うと、少し気の毒だった。
「油断した。ここなら絶叫系は無いと思ってたのにな」
剛士が溜め息混じりにぼやく。
「うん。まさかこんなにグレードアップしてるなんて思わなかったね」
「だよな。やられたわ」
クスクスと笑う悠里を見て、ふっと剛士は微笑んだ。
「……でも、今日久しぶりに乗ったら、思ってたよりは大丈夫だった気がする」
「本当?良かった!」
「ん、お前が隣にいたからかな」
ポンポン、と頭を撫でられる。
嬉しくて、悠里は繋いだ手をきゅっと握った。
「この先ずっと兄貴のトラウマ引き摺ってるのも癪だし、これを機に克服しようかな」
「え? じゃあフリーフォール、乗りますか?」
「……いや、それは……また、今度」
「あはは」
「笑うな」
クシャクシャと髪を撫でられ、悠里はますます笑い出す。
「ゴウさんの意外な弱点が知れて、嬉しかったよ」
剛士は苦笑いを浮かべる。
「お前の記憶、消したい」
「ふふ、ダメ」
悠里は悪戯っぽく微笑んだ。
「ゴウさんのこと、全部知りたいもん」
「......悠里って、たまにすごいこと言うよな」
ふっと挑発的な微笑を浮かべた剛士に顔を覗き込まれ、悠里は慌てる。
「えっ? あ、あの.......」
「じゃあお前も。俺に全部、見せろよ?」
強い輝きを持つ剛士の瞳が、優しく悠里の心を掴んだ。
この目に見つめられたら、もう、自分の心は身動きが取れなくなるのだ。
トクン、トクンと、甘い胸の音が聞こえる。
「.......はい」
悠里は、熱に浮かされたような返事をした。
剛士の柔らかい微笑が、悠里の熱を受け止めた。
「悪い、俺のためだよな」
悠里は、悪戯っぽく微笑む。
「ふふ。トイレに行きたいのも、フリーフォールがちょっと苦手なのも、ホント」
悠里は、そっと剛士の指を握った。
「ゴウさん。観覧車は、平気?」
「うん」
「じゃあ、一緒に乗ろうね」
彼を見上げ、悠里はにっこり微笑んだ。
剛士も柔らかく微笑すると、悠里の手をしっかりと握り直す。
「……俺、兄貴がいるって言っただろ?」
「うん」
「小さい頃、そいつに無理やり絶叫マシン乗せられたせいで、今でも苦手なんだ」
悠里は目を丸くした。
「そうだったの。それは可哀想」
「親も、自分たちは乗りたくないもんだから、代わってくれないしな」
当時を思い出しているのか、剛士は苦笑いしながらも、穏やかな声で言う。
「何回も乗せられたせいで、トラウマだよ」
4つも年上の兄ならば、遊園地のアトラクションの好みも、だいぶ差があっただろう。
兄に付き合わされて、恐怖体験を繰り返す羽目になった小さな頃の剛士を思うと、少し気の毒だった。
「油断した。ここなら絶叫系は無いと思ってたのにな」
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「うん。まさかこんなにグレードアップしてるなんて思わなかったね」
「だよな。やられたわ」
クスクスと笑う悠里を見て、ふっと剛士は微笑んだ。
「……でも、今日久しぶりに乗ったら、思ってたよりは大丈夫だった気がする」
「本当?良かった!」
「ん、お前が隣にいたからかな」
ポンポン、と頭を撫でられる。
嬉しくて、悠里は繋いだ手をきゅっと握った。
「この先ずっと兄貴のトラウマ引き摺ってるのも癪だし、これを機に克服しようかな」
「え? じゃあフリーフォール、乗りますか?」
「……いや、それは……また、今度」
「あはは」
「笑うな」
クシャクシャと髪を撫でられ、悠里はますます笑い出す。
「ゴウさんの意外な弱点が知れて、嬉しかったよ」
剛士は苦笑いを浮かべる。
「お前の記憶、消したい」
「ふふ、ダメ」
悠里は悪戯っぽく微笑んだ。
「ゴウさんのこと、全部知りたいもん」
「......悠里って、たまにすごいこと言うよな」
ふっと挑発的な微笑を浮かべた剛士に顔を覗き込まれ、悠里は慌てる。
「えっ? あ、あの.......」
「じゃあお前も。俺に全部、見せろよ?」
強い輝きを持つ剛士の瞳が、優しく悠里の心を掴んだ。
この目に見つめられたら、もう、自分の心は身動きが取れなくなるのだ。
トクン、トクンと、甘い胸の音が聞こえる。
「.......はい」
悠里は、熱に浮かされたような返事をした。
剛士の柔らかい微笑が、悠里の熱を受け止めた。
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