14 / 50
piece3 パーティー前日
悠里のケーキ作り
しおりを挟む
部屋のデコレーションは彩奈に任せ、悠里はケーキ作りを開始する。
材料の計量を終え、ハンドミキサーで卵白を泡立てる。
ふわふわに泡立ち、グラニュー糖を加えて更に混ぜていくと、ツヤのあるメレンゲに変わっていく。
こうして手を加えていくごとに、美味しくなるための変化が訪れる。
その工程を見るのが、悠里は好きだ。
鼻歌を零しながら、悠里はひとつひとつの作業に、丁寧に向き合った。
生地の準備ができあがり、型に流し込む。
空気を抜くために型を少し高いところから落としていると、彩奈がワクワクした顔でキッチンにやって来た。
「順調?」
「彩奈!」
悠里が笑顔で迎える。
「うん!今からオーブンに入れるところだよ」
彩奈が楽しそうに型の中を覗き込む。
「ああ~もう既に、美味しそうな予感が、ぷんぷんする!」
「あはは、ありがと!」
悠里は笑いながらオーブンの蓋を開けた。
願いを込めて、ケーキの型を送り出す。
「美味しくなあれ!」
2人は両手を合わせて、オーブンに祈りを捧げた。
ケーキが焼けるまでは、約40分。
その間に悠里は、デコレーションに使うアイシングクッキーの仕上げをする。
「見ててもいい?」
「もちろん!」
傍らに立つ彩奈に、悠里はにっこりと微笑みかけた。
悠里は嬉しそうに、昨夜のうちに下塗りしておいたクッキーを取り出す。
「わあ!可愛い!もうここまで出来上がってるんだ!」
彩奈が歓声を上げた。
悠里は微笑んで頷く。
「うん!アイシングが固まるのに時間がかかるから、下地の色は昨日塗って乾かしておいたんだ」
今日は枠を描いたり、文字を書いたりするよ!と悠里は道具を取り出した。
彩奈は、悠里が手慣れた様子でボールの線を描いたり、ゴールネットを描く様子を感心して見つめた。
「……悠里、マジで、めちゃめちゃ練習したんだね」
「え?」
アイシングを入れたコルネを持ったまま、きょとんと悠里は彩奈を見つめる。
「だって、こんな難しいのをさ、そんなにスラスラ綺麗に描けないでしょ普通! 練習の跡が見えまくりですよ。本当、がんばったね」
愛の成せる技だねえ、としみじみした口調で言い、彩奈は彼女の頭を撫でた。
「そ、そんな……」
パッと悠里は頬を赤らめる。
「練習してたら、楽しくなっちゃっただけ。ゴウさんの誕生日をお祝いできると思ったら、嬉しくて……」
「嬉しくて!」
彩奈が歓声を上げた。
「そっかそっかあ。嬉しいんだね、悠里!」
暖かい笑みを浮かべ、彩奈が頷く。
赤メガネの下の目が、キラキラと輝いていた。
時には悠里をからかいながらも、いつも見守り、励まし、助けてくれる彩奈。
彼女がいるから、自分はがんばれるのだと悠里は思う。
「彩奈。……見ててね」
これからも見守っていてね、とは気恥ずかしさが勝って言えない。
あくまで今のアイシング作業のことを示すように悠里は言い、彩奈に笑いかけた。
無事にユニフォーム型クッキーの文字入れも完成し、悠里はホッとひと息つく。
「完成?」
ワクワクした声で、彩奈が問いかけてくる。
悠里はにっこり笑って頷いた。
それから嬉しそうに冷蔵庫を開ける。
「そうそう、これ見て!」
取り出したのは、彩奈のアイディアで作った、スコアボード風の日付プレートだった。
これはホワイトチョコとビターチョコで作っており、アイシング作業が必要ないパーツなので、昨夜のうちに完成させたのだ。
彩奈が目を輝かせる。
「わあ、すごい!めちゃめちゃスコアボードだ!日付書いてある!ボール付いてる!Goushiって書いてあるー!」
手を叩いて喜んでくれる彩奈に、思わず悠里は笑ってしまう。
「彩奈のおかげだよ?」
「全然!悠里の実力です!愛です!」
「あははっ」
はしゃぐ2人の仲間に入ろうとするように、オーブンが、ケーキの焼き上がりを告げる。
悠里はいそいそとオーブンを開け、焼け具合をチェックした。
「……うん、大丈夫!」
ケーキに刺した竹串を確認し、悠里は微笑む。
キッチンミトンを両手に付けてケーキ型を取り出すと、えいっ!と掛け声をあげて、型を落とした。
「おわっ!?悠里、大丈夫なの?」
目を丸くする彩奈を見て、悠里は笑いながら答えた。
「こうやって、焼けてすぐに型ごと落とすと、焼き縮みしないんだよ」
「へえ~!」
お菓子作りは奥が深いねえ、と彩奈はしみじみと頷いた。
悠里は鼻歌混じりに濡れ布巾を用意し、型からケーキを取り出した。
「こうして、冷めるまで置いておくよ」
網に乗せたケーキの上に、丁寧に濡れ布巾をかけて、悠里は微笑んだ。
「あ、じゃあ休憩?」
彩奈が悪戯っぽく首を傾げる。
「うん!そうだね!お茶淹れるよ」
「やったあ」
彩奈はパチパチと手を叩いてから、嬉しそうに言った。
「休憩がてら、リビングのデコレーション、見てくれる?」
悠里は大きく頷いた。
「うん!ありがとうね!」
材料の計量を終え、ハンドミキサーで卵白を泡立てる。
ふわふわに泡立ち、グラニュー糖を加えて更に混ぜていくと、ツヤのあるメレンゲに変わっていく。
こうして手を加えていくごとに、美味しくなるための変化が訪れる。
その工程を見るのが、悠里は好きだ。
鼻歌を零しながら、悠里はひとつひとつの作業に、丁寧に向き合った。
生地の準備ができあがり、型に流し込む。
空気を抜くために型を少し高いところから落としていると、彩奈がワクワクした顔でキッチンにやって来た。
「順調?」
「彩奈!」
悠里が笑顔で迎える。
「うん!今からオーブンに入れるところだよ」
彩奈が楽しそうに型の中を覗き込む。
「ああ~もう既に、美味しそうな予感が、ぷんぷんする!」
「あはは、ありがと!」
悠里は笑いながらオーブンの蓋を開けた。
願いを込めて、ケーキの型を送り出す。
「美味しくなあれ!」
2人は両手を合わせて、オーブンに祈りを捧げた。
ケーキが焼けるまでは、約40分。
その間に悠里は、デコレーションに使うアイシングクッキーの仕上げをする。
「見ててもいい?」
「もちろん!」
傍らに立つ彩奈に、悠里はにっこりと微笑みかけた。
悠里は嬉しそうに、昨夜のうちに下塗りしておいたクッキーを取り出す。
「わあ!可愛い!もうここまで出来上がってるんだ!」
彩奈が歓声を上げた。
悠里は微笑んで頷く。
「うん!アイシングが固まるのに時間がかかるから、下地の色は昨日塗って乾かしておいたんだ」
今日は枠を描いたり、文字を書いたりするよ!と悠里は道具を取り出した。
彩奈は、悠里が手慣れた様子でボールの線を描いたり、ゴールネットを描く様子を感心して見つめた。
「……悠里、マジで、めちゃめちゃ練習したんだね」
「え?」
アイシングを入れたコルネを持ったまま、きょとんと悠里は彩奈を見つめる。
「だって、こんな難しいのをさ、そんなにスラスラ綺麗に描けないでしょ普通! 練習の跡が見えまくりですよ。本当、がんばったね」
愛の成せる技だねえ、としみじみした口調で言い、彩奈は彼女の頭を撫でた。
「そ、そんな……」
パッと悠里は頬を赤らめる。
「練習してたら、楽しくなっちゃっただけ。ゴウさんの誕生日をお祝いできると思ったら、嬉しくて……」
「嬉しくて!」
彩奈が歓声を上げた。
「そっかそっかあ。嬉しいんだね、悠里!」
暖かい笑みを浮かべ、彩奈が頷く。
赤メガネの下の目が、キラキラと輝いていた。
時には悠里をからかいながらも、いつも見守り、励まし、助けてくれる彩奈。
彼女がいるから、自分はがんばれるのだと悠里は思う。
「彩奈。……見ててね」
これからも見守っていてね、とは気恥ずかしさが勝って言えない。
あくまで今のアイシング作業のことを示すように悠里は言い、彩奈に笑いかけた。
無事にユニフォーム型クッキーの文字入れも完成し、悠里はホッとひと息つく。
「完成?」
ワクワクした声で、彩奈が問いかけてくる。
悠里はにっこり笑って頷いた。
それから嬉しそうに冷蔵庫を開ける。
「そうそう、これ見て!」
取り出したのは、彩奈のアイディアで作った、スコアボード風の日付プレートだった。
これはホワイトチョコとビターチョコで作っており、アイシング作業が必要ないパーツなので、昨夜のうちに完成させたのだ。
彩奈が目を輝かせる。
「わあ、すごい!めちゃめちゃスコアボードだ!日付書いてある!ボール付いてる!Goushiって書いてあるー!」
手を叩いて喜んでくれる彩奈に、思わず悠里は笑ってしまう。
「彩奈のおかげだよ?」
「全然!悠里の実力です!愛です!」
「あははっ」
はしゃぐ2人の仲間に入ろうとするように、オーブンが、ケーキの焼き上がりを告げる。
悠里はいそいそとオーブンを開け、焼け具合をチェックした。
「……うん、大丈夫!」
ケーキに刺した竹串を確認し、悠里は微笑む。
キッチンミトンを両手に付けてケーキ型を取り出すと、えいっ!と掛け声をあげて、型を落とした。
「おわっ!?悠里、大丈夫なの?」
目を丸くする彩奈を見て、悠里は笑いながら答えた。
「こうやって、焼けてすぐに型ごと落とすと、焼き縮みしないんだよ」
「へえ~!」
お菓子作りは奥が深いねえ、と彩奈はしみじみと頷いた。
悠里は鼻歌混じりに濡れ布巾を用意し、型からケーキを取り出した。
「こうして、冷めるまで置いておくよ」
網に乗せたケーキの上に、丁寧に濡れ布巾をかけて、悠里は微笑んだ。
「あ、じゃあ休憩?」
彩奈が悪戯っぽく首を傾げる。
「うん!そうだね!お茶淹れるよ」
「やったあ」
彩奈はパチパチと手を叩いてから、嬉しそうに言った。
「休憩がてら、リビングのデコレーション、見てくれる?」
悠里は大きく頷いた。
「うん!ありがとうね!」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
R18 溺愛カレシと、甘い甘いエッチ♡ オトナの#秒恋 〜貴方と刻む、幸せなミライ〜
ReN
恋愛
♡R18 ラブラブな2人の激甘エッチ短篇集♡
愛溢れる幸せなエッチ短篇集♡
互いを思い合う、2人の気持ちが伝わりますように。
本編 #秒恋(学園ものラブコメ)もよろしくお願いします!
・第1章は、2人の初エッチ♡
前半は、2人で買い物をしたりお料理をしたりする、全年齢OKの甘々エピソード。
後半は、愛し合う2人の、初めてのエッチ♡
優しい言葉をかけられながら、たくさん愛される、R18エピソードです。
・第2章
初エッチから、2週間後の2人。
初めて、舌でイかされちゃったり、愛の証をつけられちゃうお話♡
・第3章
まだまだ初々しい悠里。
でも、だんだん剛士に慣らされて?
無意識に、いやらしく腰を振っちゃう可愛い悠里に、夢中になってしまう剛士のお話♡
・第4章
今回は、攻守交代。
クラスメイトと、彼の悦ばせ方の話をした悠里は、剛士に「教えて?」とおねだり。
剛士に優しく教えられながら、一生懸命に彼を手とお口で愛してあげる……
健気でエッチな悠里、必見♡
・第5章
学校帰り、初めて剛士の家にお呼ばれ♡
剛士の部屋で、剛士のベッドで組み敷かれて……
甘い甘い、制服エッチ♡
・第6章、11/18公開!
いわゆる、彼シャツなお話♡
自分の服を着た悠里に欲情しちゃう剛士をお楽しみください♡
★こちらは、 #秒恋シリーズの、少し未来のお話。
さまざまな試練を乗り越え、恋人になった後の甘々ストーリーになります♡
本編では、まだまだ恋人への道のりは遠い2人。
ただいま恋の障害を執筆中で、折れそうになる作者の心を奮い立たせるために書いた、エッチな番外編です(笑)
なので、更新は不定期です(笑)
お気に入りに登録していただきましたら、更新情報が通知されますので、ぜひ!
2人のなれそめに、ご興味を持ってくださったら、
本編#秒恋シリーズもよろしくお願いします!
#秒恋 タグで検索♡
★1
『私の恋はドキドキと、貴方への恋を刻む』
ストーカーに襲われた女子高の生徒を救う男子高のバスケ部イケメンの話
★2
『2人の日常を積み重ねて。恋のトラウマ、一緒に乗り越えましょう』
剛士と元彼女とのトラウマの話
★3
『友だち以上恋人未満の貴方に甘い甘いサプライズを』
2/14バレンタインデーは、剛士の誕生日だった!
親友たちとともに仕掛ける、甘い甘いバースデーサプライズの話
★4
『恋の試練は元カノじゃなく、元カノの親友だった件』
恋人秒読みと思われた悠里と剛士の間に立ち塞がる、元カノの親友という試練のお話
2人の心が試される、辛くて長い試練の始まりです…
よろしくお願いします!
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる