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piece1 サプライズ計画

もうすぐバレンタインデーじゃん

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「……っと」
そのとき、彩奈のスマートフォンが着信を告げた。

「あ、拓真くんじゃん」
スマートフォンを持ち、彩奈が応答する。
拓真の元気な声は、向かいにいる悠里の耳にも聞こえるほどだ。

「いま?うん、悠里と駅前の店にいるよー?合流する?」
オッケー、待ってるよ、と答え通話が終了した。

彩奈が、悠里を見て笑った。
「部活終わったらしいよ。いま悠里と一緒にいるって言ったら、来たい!って言うからさ」

ホント、ウチらって仲良しだよねぇと、彩奈は楽しそうに言った。
そして、いそいそと悠里の隣に移動する。
「拓真くん来るなら、私はこっちに座ろっと」


そうして2人で笑い合っていると、程なく拓真が、ジュースを片手に姿を見せる。
「やっほー!2人ともお待たせ!」

「やっほー」
ヒラヒラと彩奈が手を振り、向かいの席を指し示す。
「しかし拓真くんも好きだねぇ、ウチらといるの」
「あはは、まあねー」
笑いながら拓真が向かいに着席した。

「っていうか、2人に話したいことあって!」


悠里たちは、顔を見合わせる。
そんな2人を見つめ、拓真はワクワクとした表情で言った。

「あのね、もうすぐバレンタインじゃん。その日、ゴウの誕生日!」

「ええ!そうなの?」
彩奈が素っ頓狂な声を上げる。
拓真は満足げに頷き、視線を悠里に移した。

「悠里ちゃんも、知らなかったでしょ?」
「うん……知らなかった」
目を丸くして、悠里は頷いた。

「やっぱりなー。ゴウって、そういうの、ちゃんと教えなそうだもん」
意外と照れ屋だからアイツ、と拓真が笑う。
つられて悠里も微笑む。
「ありがとう拓真さん。教えてくれて」


考えてみれば、どうして自分は今まで、剛士の誕生日を確認していなかったのだろう。
拓真が教えてくれなければ、知らぬまま、大切な日を通り過ぎてしまうところだった。
悠里は内心、自分の失態を猛省する。


拓真が明るい声で続けた。
「だからさ!みんなで、サプライズしない?」
「サプライズ?」
「バレンタインデー、日曜じゃん。普通にみんなで遊ぶと見せかけて、サプライズパーティー、やっちゃおうよ!」

彩奈が目を輝かせる。
「それ、いい!普通にどこか出かけてから、サプライズする?」
「うん!オレ実は、みんなで行きたいとこあるんだよね」

「へえ、どこ?」
赤メガネを指で押し上げながら、彩奈が問うた。
「多分、2人も行ったことあるんじゃないかな? ほらあそこ!」


そう言って拓真が示したのは、地元にある小さな遊園地だった。

悠里と彩奈は、ああ!と手を打って笑う。
「懐かしい! 昔よく行ったわ。でもあそこ、子ども向けじゃない?」
「ところがどっこい、案外楽しめるのよ」

彩奈の問いかけに、拓真がにんまりと微笑を浮かべる。
「オレたちの子どもの頃よりも、結構パワーアップしててね? こないだ、イトコと一緒に行ったんだけど、オレの方が楽しんじゃったくらい」

「へえ。イトコは何才?」
彩奈が口を挟む。
「幼稚園の年中だから、5才?女の子!」
可愛いんだよね、これが、と拓真が微笑む。

「拓真くんなら、同じレベルで遊んでそう!」
「そうそう、オレの脳ミソ5才児レベル……って、失敬な!優しいお兄ちゃんって慕われてんの!」

彩奈のからかいに、拓真がいつもの調子で乗っかる。

「でも、ちょうどいいと思うんだよね。ガチの遊園地に行っちゃうと1日遊べちゃうから、サプライズする余地もなくなるでしょ」
「ああ、なるほど」
彩奈が後を受ける。

「あそこなら、半日で充分回りきれる。その後にサプライズパーティーができるってわけね?」
「そういうこと!」
我が意を得たり!といった体で、拓真が親指を立ててみせた。

「じゃあ、遊園地でまずは普通に遊ぶでしょ?」
彩奈が紙ナプキンをメモ帳代わりに、計画を書き始めた。

「サプライズ!……は、遊園地じゃ難しいよね。場所変えないと」
彩奈が頬杖をついて思案の色を浮かべた。
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