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piece1 サプライズ計画
2人の気持ち
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2月上旬の放課後。
悠里と彩奈は、駅前のファストフード店でお茶をしつつ、お喋りに興じていた。
剛士はバスケ部の勉強会、拓真はライトミュージック部の練習日で、この場にはいない。
悠里と彩奈は、学校でもずっと一緒にいるのに、それでも話は尽きない。
外が夕暮れの色に移り変わるまで、窓際の席で笑いの花を咲かせ続けた。
「……ところで、シバさんの勉強会って、なあに? バスケの試合でも観るの?」
彩奈からの問いかけに、悠里は微笑みながら首を横に振る。
「2月下旬の学年末テストに向けて、後輩のために試験対策をするんだって。出そうな問題の解説をしたり、わからないところを教えたり」
「ええー!?すっごい!」
彩奈が目を見開いた。
「わざわざ後輩部員の勉強を見てあげるの? 面倒見良すぎない?」
「バスケ部って、文武両道が部のモットーらしくて。監督さんが、成績に関しても厳しいんだって」
「そうなの?」
「うん。テストで平均70点行かなかったら、試合に出して貰えなくなるとか。あまりに成績が良くないと、練習に出るのを禁止されたり」
「うわあ、大変だ」
感心したように彩奈は頷き、それからニヤリと目を細めた。
「さすが悠里。シバさんの内部事情に詳しいじゃん」
「な、内部事情って」
カアッと悠里の頬が熱くなる。
彩奈のニヤニヤ笑いが大きくなるのを見て、悠里は慌てて弁解を始めた。
「そんなんじゃないよ。私も彩奈と同じこと思ったから、ゴウさんに聞いただけ」
「うんうん。いつの間にか2人っきりで、いろいろ会話してるわけだ」
「もう、彩奈!」
真っ赤になってむくれた悠里が可笑しかったのか、彩奈はお腹を抱えて笑い出した。
「これで、まだ付き合ってないなんて、信じらんないなあ」
「え?」
彩奈が頬杖をつき、探るように悠里を見つめる。
「付き合わないの?」
悠里は言葉を探すために、少しだけ沈黙した。
うーん、と言いながら、半分以上減っている飲み物を、ストローでくるくるとかき回す。
「……ゴウさんも言ってたんだけどね。私たちの始まりって、あんな感じだったじゃない?」
「……うん」
悠里のストーカー被害を思い返したのだろう、彩奈の眉間に深い皺が寄った。
そんな友人の表情を和らげようと、悠里は努めて明るい声で続ける。
「だからね。これからは、たくさんの日常を、一緒に過ごそうねって。ゴウさんと、話したんだ」
12月、初めて2人で出かけたときに話した、たくさんのこと。
剛士の抱える傷と、打ち明けてくれた本心。
彼の過去に関する繊細な話を、悠里の口から彩奈に伝えることはできない。
けれど、自分と剛士の未来については、彩奈には正直に話したい。
悠里は真っ直ぐに彼女を見つめ、微笑んだ。
「……そっかあ」
彩奈が頷き、温かい笑みを浮かべた。
「なんか、いい感じだね! これからたくさんの日常を過ごして、ちょっとずつ2人の関係を深めたいってことなんだね?」
明確に言葉にされると気恥ずかしい。
悠里は俯きながらも、首を縦に振ってみせる。
彩奈が手を伸ばし、向かい側に座る悠里の頭を撫でた。
「2人のキモチを知ってる私や拓真くんからしたら、ちょっと焦れったくはあるけど!でもまあ、2人で決めたことなら応援するよ!」
「……ん?」
2人のキモチ?
真っ赤な顔のまま首を傾げた悠里に、彩奈は笑みを深める。
「いやもう、傍から見てたら悠里もシバさんも、お互いのこと大好きー!って感じだからさあ」
「彩奈!」
耐え切れなくなり、悠里は両手で顔を隠した。
悠里と彩奈は、駅前のファストフード店でお茶をしつつ、お喋りに興じていた。
剛士はバスケ部の勉強会、拓真はライトミュージック部の練習日で、この場にはいない。
悠里と彩奈は、学校でもずっと一緒にいるのに、それでも話は尽きない。
外が夕暮れの色に移り変わるまで、窓際の席で笑いの花を咲かせ続けた。
「……ところで、シバさんの勉強会って、なあに? バスケの試合でも観るの?」
彩奈からの問いかけに、悠里は微笑みながら首を横に振る。
「2月下旬の学年末テストに向けて、後輩のために試験対策をするんだって。出そうな問題の解説をしたり、わからないところを教えたり」
「ええー!?すっごい!」
彩奈が目を見開いた。
「わざわざ後輩部員の勉強を見てあげるの? 面倒見良すぎない?」
「バスケ部って、文武両道が部のモットーらしくて。監督さんが、成績に関しても厳しいんだって」
「そうなの?」
「うん。テストで平均70点行かなかったら、試合に出して貰えなくなるとか。あまりに成績が良くないと、練習に出るのを禁止されたり」
「うわあ、大変だ」
感心したように彩奈は頷き、それからニヤリと目を細めた。
「さすが悠里。シバさんの内部事情に詳しいじゃん」
「な、内部事情って」
カアッと悠里の頬が熱くなる。
彩奈のニヤニヤ笑いが大きくなるのを見て、悠里は慌てて弁解を始めた。
「そんなんじゃないよ。私も彩奈と同じこと思ったから、ゴウさんに聞いただけ」
「うんうん。いつの間にか2人っきりで、いろいろ会話してるわけだ」
「もう、彩奈!」
真っ赤になってむくれた悠里が可笑しかったのか、彩奈はお腹を抱えて笑い出した。
「これで、まだ付き合ってないなんて、信じらんないなあ」
「え?」
彩奈が頬杖をつき、探るように悠里を見つめる。
「付き合わないの?」
悠里は言葉を探すために、少しだけ沈黙した。
うーん、と言いながら、半分以上減っている飲み物を、ストローでくるくるとかき回す。
「……ゴウさんも言ってたんだけどね。私たちの始まりって、あんな感じだったじゃない?」
「……うん」
悠里のストーカー被害を思い返したのだろう、彩奈の眉間に深い皺が寄った。
そんな友人の表情を和らげようと、悠里は努めて明るい声で続ける。
「だからね。これからは、たくさんの日常を、一緒に過ごそうねって。ゴウさんと、話したんだ」
12月、初めて2人で出かけたときに話した、たくさんのこと。
剛士の抱える傷と、打ち明けてくれた本心。
彼の過去に関する繊細な話を、悠里の口から彩奈に伝えることはできない。
けれど、自分と剛士の未来については、彩奈には正直に話したい。
悠里は真っ直ぐに彼女を見つめ、微笑んだ。
「……そっかあ」
彩奈が頷き、温かい笑みを浮かべた。
「なんか、いい感じだね! これからたくさんの日常を過ごして、ちょっとずつ2人の関係を深めたいってことなんだね?」
明確に言葉にされると気恥ずかしい。
悠里は俯きながらも、首を縦に振ってみせる。
彩奈が手を伸ばし、向かい側に座る悠里の頭を撫でた。
「2人のキモチを知ってる私や拓真くんからしたら、ちょっと焦れったくはあるけど!でもまあ、2人で決めたことなら応援するよ!」
「……ん?」
2人のキモチ?
真っ赤な顔のまま首を傾げた悠里に、彩奈は笑みを深める。
「いやもう、傍から見てたら悠里もシバさんも、お互いのこと大好きー!って感じだからさあ」
「彩奈!」
耐え切れなくなり、悠里は両手で顔を隠した。
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