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piece3 恥ずかしいことも、貴方と一緒なら。
先輩との約束
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「ゴウさん、いらっしゃい!」
玄関の扉を開け、悠里は花がほころぶような明るい笑顔を見せる。
「よお」
剛士は玄関に入ると、彼女の頭を撫で、微笑んだ。
「ごめんな、急に来て」
「ふふ、ううん。嬉しい!」
悠里は甘えるように、剛士の腕にしがみついた。
今日、剛士はバスケ部の先輩と会う予定だった。
しかし昨夜、先輩から急遽アルバイトに入ることになったと、連絡があったそうだ。
先輩との約束が延期になった剛士は、すぐに悠里に電話をくれた。
そうして今日は、お家デートを楽しむことになったのだった。
「先輩、残念だったね」
「うん。バイト先の人が体調崩したらしくて、急遽ヘルプで出勤になったんだってさ」
あの人、そういうとき絶対助けに行くタイプだからさ、と剛士が誇らしげに笑う。
「ふふ、そうだよね」
つられるように、悠里も微笑んだ。
仲間の危機を、自分のことのように憂い、全力でぶつかっていく。
先輩は、そういう人なんだろうな、と悠里は思う。
その先輩は、剛士が1年生の頃、バスケ部のキャプテンだった人。
過去の剛士が、恋愛で大きな傷を負ったとき、傍にいた人物だ。
彼は、剛士を思い、剛士のために怒り、そして陰になり日向になり、動いてくれた。
剛士が、最もお世話になった先輩である。
剛士が、逆境を乗り越えることができたのも。
バスケ部のキャプテンとして活躍できたのも。
先輩の存在が、大きな力となった。助けとなったのだ。
その先輩とは、悠里も一度、会ったことがある。
剛士が少しだけ照れながら、『俺の彼女です』と、悠里を紹介してくれた。
そのときの嬉しさは、いまでも大切に覚えている。
先輩は、『そうか、剛士……良かったな』と、本当に嬉しそうに破顔した。
剛士の頭をグシャグシャと撫で、笑ってくれた先輩の目は、少し赤くなっていた。
『悠里さん。剛士のこと、よろしくお願いします!』
悠里の両手を、ぎゅっと握った大きな手と、暖かい瞳。
悠里は、『はい! こちらこそ、よろしくお願いします』と、先輩の手を握り返した。
悠里はそのとき、剛士の笑顔を、一生守り続ける、と。
剛士の大切な先輩に、誓ったのだ。
そのときの、強く暖かい気持ちを思い出し、悠里は笑む。
悠里は、傍らの剛士を見上げて言った。
「近いうち、先輩と会えたらいいね」
剛士も微笑み、頷いた。
「うん。先輩のバイトが落ち着いたら、また約束する。決まったらお前にも連絡するよ」
「ふふ、うん!」
現在、大学2回生の先輩の近況報告が聞けることも、とても楽しみだ。
悠里は、にっこりと微笑んだ。
玄関の扉を開け、悠里は花がほころぶような明るい笑顔を見せる。
「よお」
剛士は玄関に入ると、彼女の頭を撫で、微笑んだ。
「ごめんな、急に来て」
「ふふ、ううん。嬉しい!」
悠里は甘えるように、剛士の腕にしがみついた。
今日、剛士はバスケ部の先輩と会う予定だった。
しかし昨夜、先輩から急遽アルバイトに入ることになったと、連絡があったそうだ。
先輩との約束が延期になった剛士は、すぐに悠里に電話をくれた。
そうして今日は、お家デートを楽しむことになったのだった。
「先輩、残念だったね」
「うん。バイト先の人が体調崩したらしくて、急遽ヘルプで出勤になったんだってさ」
あの人、そういうとき絶対助けに行くタイプだからさ、と剛士が誇らしげに笑う。
「ふふ、そうだよね」
つられるように、悠里も微笑んだ。
仲間の危機を、自分のことのように憂い、全力でぶつかっていく。
先輩は、そういう人なんだろうな、と悠里は思う。
その先輩は、剛士が1年生の頃、バスケ部のキャプテンだった人。
過去の剛士が、恋愛で大きな傷を負ったとき、傍にいた人物だ。
彼は、剛士を思い、剛士のために怒り、そして陰になり日向になり、動いてくれた。
剛士が、最もお世話になった先輩である。
剛士が、逆境を乗り越えることができたのも。
バスケ部のキャプテンとして活躍できたのも。
先輩の存在が、大きな力となった。助けとなったのだ。
その先輩とは、悠里も一度、会ったことがある。
剛士が少しだけ照れながら、『俺の彼女です』と、悠里を紹介してくれた。
そのときの嬉しさは、いまでも大切に覚えている。
先輩は、『そうか、剛士……良かったな』と、本当に嬉しそうに破顔した。
剛士の頭をグシャグシャと撫で、笑ってくれた先輩の目は、少し赤くなっていた。
『悠里さん。剛士のこと、よろしくお願いします!』
悠里の両手を、ぎゅっと握った大きな手と、暖かい瞳。
悠里は、『はい! こちらこそ、よろしくお願いします』と、先輩の手を握り返した。
悠里はそのとき、剛士の笑顔を、一生守り続ける、と。
剛士の大切な先輩に、誓ったのだ。
そのときの、強く暖かい気持ちを思い出し、悠里は笑む。
悠里は、傍らの剛士を見上げて言った。
「近いうち、先輩と会えたらいいね」
剛士も微笑み、頷いた。
「うん。先輩のバイトが落ち着いたら、また約束する。決まったらお前にも連絡するよ」
「ふふ、うん!」
現在、大学2回生の先輩の近況報告が聞けることも、とても楽しみだ。
悠里は、にっこりと微笑んだ。
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