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【第37話】未成年者の飲酒は禁じられています
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モナ、エルミー、アンヌ先生、そして俺。
王宮に向かう4人の旅は、ひとまず1日目を終えようとしていた。
「そろそろ日が暮れるわね。このへんで野営しましょうか」
旅慣れているアンヌ先生の提案に、俺たちは応じた。
「なあ先生、あとどのぐらいで王宮に着くんだ?」
「そうね……このまま天気がよければ、明日の夕方ぐらいには着くでしょう」
「そんなに早いのか! 馬ってすごいな」
「なによ、今さら。王宮まで歩いていくなんて、あなたいったい何を考えてるのよ」
「うるさいな! それより腹へった。メシにしよう!」
「いいえ。まずは安全な場所を探してテントを張るのが先。食事はそれからよ」
「ちぇっ」
夜中に魔物などが近づいてきたとき、すぐに応戦できるような見晴らしのよい場所にテントを設営。
見張りの順番を決めてから、俺たちはそれぞれが持ち寄った食糧をシェアして舌つづみを打った。
夕日に赤く染まっていた空が、少しずつ夕闇へと変わり始める。
「そろそろだ」
3人の女性陣はテントに注目した。
しばらくするとテントの中から、いつもの黒いワンピースを身にまとったコトネが現れた。
モナ、エルミー、アンヌ先生は驚きを隠せなかった。
「本当に……ラケットが女の子になった……!」
「……かわいい」
「っていうか、ヤニックさん。もうちょっと旅人らしい服はなかったの?」
「そこまで気が回らなかったんだよ!」
モナはコトネに声をかけた。
「はじめましてコトネさん。私はモナっていって、ヤッちゃんの……」
「知ってる」
「えっ? なんで?」
「ラケットに変容しているときも、周囲は見えている。そっちがエルミーで、アンヌ」
「大正解! ふっしぎ~! ラケットに目があるんだ!?」
アンヌ先生はコップにブドウ酒をそそいだ。
「コトネさん、こっちに来て乾杯しましょ」
「おいおい、教師が子どもに酒を勧めるのか!」
「ヤニックさん、カタいこといわないでよ。ねえコトネさん、1杯ぐらい飲めるでしょ?」
「飲んだことがない」
「やめとけ! モナとエルミーも、なんとかいってくれ──」
と2人のほうを見ると、すでにコップを持って顔を赤らめていた。
「なんら~ヤッちゃん?」
「おいしいのねェ~ン」
「──って、飲んでるのかよ!」
俺がツッコミを入れている間に、アンヌ先生はコトネにブドウ酒を飲ませてしまった。
こうして4人の酔っぱらいが完成した。
「ヤッちゃんも飲みなよ。おいひいよ」
「バカいえ! 夜の見張りは誰がやるんだよ! アンヌ先生も、もうコトネに飲ませるのはやめろ!」
「いいから、いいから。5人いれば、どんな敵も倒せるわよ」
「アホか! 5人のうち4人が酔っ払いで、どうやって戦うんだよ!」
「いいから、いいから。ヤニックさんも飲みなさい。ほら」
そういってアンヌ先生は、俺のコップの水を捨ててブドウ酒をついでしまった。
「こらーっ! あんたそれでも教師か!」
「もう教師はやめたもんね~」
「くっ……そうだった。いや、そういう問題じゃない。今、敵襲がきたら、みんな死ぬぞ」
「大丈夫、大丈夫。あなたにはすごいラケットがあるじゃない」
「だから! 今、あのラケットはないんだってば! 人間に変容してるんだっつーの!」
「うるさいな~。先生に歯向かう気~?」
「もう先生じゃないだろ!」
だめだこりゃ。
もう、こうなったら俺が寝ずの番をするしかないな。
そう覚悟したときだった。
「フフフ……スキあり!」
いつのまにか俺の背後に回り込んでいたアンヌ先生は、またしても俺の両腕をロックした。
アンヌ先生の胸の感触、再び。
「こら! やめろ!」
「同じ罠にかかるとは甘いな、少年。コトネさん、少年にブドウ酒を」
「わかった」
コトネがコップを俺の口元に持ってきた。
「こらコトネ! 裏切り者! 俺が飲んだら全滅するぞ!」
飲んだらおしまいだ。
俺は必死に歯を食いしばる。
「口を開かない」
「あたりまえだ! コトネ、やめろ!」
抵抗を続けていると、アンヌ先生がいった。
「しかたがないわね。やっちゃいましょうか。モナさん、エルミーさん」
モナとエルミーは俺のズボンに手をかけた。
「やめろ!」
抵抗むなしく、またしてもあらわになる俺のパンツ。
そのとき、アンヌ先生は俺の背中にぐっと胸を押しつけた。
これは……いろんな意味でヤバい。
もしも今、パンツを下ろされたら……!
「ヤニックさん、本当に飲まないつもり?」
すでにモナとエルミーは俺のパンツに手をかけ、脱がせる気満々である。
「わ……わかった! 飲む! 飲むから! 手をはなせ!」
俺は急いでズボンを上げた。
「あら~残念ねェ」
エルミーは本気でがっかりしている。
男に二言はない。
しかたなく俺は、コトネが持っていたコップのブドウ酒を一気に飲み干した。
「おお! いい飲みっぷりじゃない」
そんなアンヌ先生の声を、薄れゆく意識の中で、俺は聞いたような気がする……。
王宮に向かう4人の旅は、ひとまず1日目を終えようとしていた。
「そろそろ日が暮れるわね。このへんで野営しましょうか」
旅慣れているアンヌ先生の提案に、俺たちは応じた。
「なあ先生、あとどのぐらいで王宮に着くんだ?」
「そうね……このまま天気がよければ、明日の夕方ぐらいには着くでしょう」
「そんなに早いのか! 馬ってすごいな」
「なによ、今さら。王宮まで歩いていくなんて、あなたいったい何を考えてるのよ」
「うるさいな! それより腹へった。メシにしよう!」
「いいえ。まずは安全な場所を探してテントを張るのが先。食事はそれからよ」
「ちぇっ」
夜中に魔物などが近づいてきたとき、すぐに応戦できるような見晴らしのよい場所にテントを設営。
見張りの順番を決めてから、俺たちはそれぞれが持ち寄った食糧をシェアして舌つづみを打った。
夕日に赤く染まっていた空が、少しずつ夕闇へと変わり始める。
「そろそろだ」
3人の女性陣はテントに注目した。
しばらくするとテントの中から、いつもの黒いワンピースを身にまとったコトネが現れた。
モナ、エルミー、アンヌ先生は驚きを隠せなかった。
「本当に……ラケットが女の子になった……!」
「……かわいい」
「っていうか、ヤニックさん。もうちょっと旅人らしい服はなかったの?」
「そこまで気が回らなかったんだよ!」
モナはコトネに声をかけた。
「はじめましてコトネさん。私はモナっていって、ヤッちゃんの……」
「知ってる」
「えっ? なんで?」
「ラケットに変容しているときも、周囲は見えている。そっちがエルミーで、アンヌ」
「大正解! ふっしぎ~! ラケットに目があるんだ!?」
アンヌ先生はコップにブドウ酒をそそいだ。
「コトネさん、こっちに来て乾杯しましょ」
「おいおい、教師が子どもに酒を勧めるのか!」
「ヤニックさん、カタいこといわないでよ。ねえコトネさん、1杯ぐらい飲めるでしょ?」
「飲んだことがない」
「やめとけ! モナとエルミーも、なんとかいってくれ──」
と2人のほうを見ると、すでにコップを持って顔を赤らめていた。
「なんら~ヤッちゃん?」
「おいしいのねェ~ン」
「──って、飲んでるのかよ!」
俺がツッコミを入れている間に、アンヌ先生はコトネにブドウ酒を飲ませてしまった。
こうして4人の酔っぱらいが完成した。
「ヤッちゃんも飲みなよ。おいひいよ」
「バカいえ! 夜の見張りは誰がやるんだよ! アンヌ先生も、もうコトネに飲ませるのはやめろ!」
「いいから、いいから。5人いれば、どんな敵も倒せるわよ」
「アホか! 5人のうち4人が酔っ払いで、どうやって戦うんだよ!」
「いいから、いいから。ヤニックさんも飲みなさい。ほら」
そういってアンヌ先生は、俺のコップの水を捨ててブドウ酒をついでしまった。
「こらーっ! あんたそれでも教師か!」
「もう教師はやめたもんね~」
「くっ……そうだった。いや、そういう問題じゃない。今、敵襲がきたら、みんな死ぬぞ」
「大丈夫、大丈夫。あなたにはすごいラケットがあるじゃない」
「だから! 今、あのラケットはないんだってば! 人間に変容してるんだっつーの!」
「うるさいな~。先生に歯向かう気~?」
「もう先生じゃないだろ!」
だめだこりゃ。
もう、こうなったら俺が寝ずの番をするしかないな。
そう覚悟したときだった。
「フフフ……スキあり!」
いつのまにか俺の背後に回り込んでいたアンヌ先生は、またしても俺の両腕をロックした。
アンヌ先生の胸の感触、再び。
「こら! やめろ!」
「同じ罠にかかるとは甘いな、少年。コトネさん、少年にブドウ酒を」
「わかった」
コトネがコップを俺の口元に持ってきた。
「こらコトネ! 裏切り者! 俺が飲んだら全滅するぞ!」
飲んだらおしまいだ。
俺は必死に歯を食いしばる。
「口を開かない」
「あたりまえだ! コトネ、やめろ!」
抵抗を続けていると、アンヌ先生がいった。
「しかたがないわね。やっちゃいましょうか。モナさん、エルミーさん」
モナとエルミーは俺のズボンに手をかけた。
「やめろ!」
抵抗むなしく、またしてもあらわになる俺のパンツ。
そのとき、アンヌ先生は俺の背中にぐっと胸を押しつけた。
これは……いろんな意味でヤバい。
もしも今、パンツを下ろされたら……!
「ヤニックさん、本当に飲まないつもり?」
すでにモナとエルミーは俺のパンツに手をかけ、脱がせる気満々である。
「わ……わかった! 飲む! 飲むから! 手をはなせ!」
俺は急いでズボンを上げた。
「あら~残念ねェ」
エルミーは本気でがっかりしている。
男に二言はない。
しかたなく俺は、コトネが持っていたコップのブドウ酒を一気に飲み干した。
「おお! いい飲みっぷりじゃない」
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