異世界アンケート無双 ~腕力が無くても知識と調査で無双できるんです~

myura9mo(ミュラクモ)

文字の大きさ
上 下
13 / 25
幼少編

第13話 火の絶傑

しおりを挟む
 ジェイグ、ゲン、ノワールと共にバカーンの部屋へ向かう。

 部屋に向かう際に、あらかじめこの後の事は3人には説明済だ。

 ジェイグとゲンはもちろん落ち着いていたが、ノワールが落ち着いていた事には驚いた。

 無口のため思考や性格が読めないが、胆力は6人で一番なのかもしれない。

 そう思っているうちに、部屋の前に到着した。

 コンコンッ

 軽くノックをする。

 「ム!誰だっ!」

 急な来訪者のため、焦ったのかバカーンは乱暴な言葉と共に扉を勢いよく開いた。

 「こんばんは バカーン」
 
 予想外の訪問者に驚いたのか、バカーンはしばらく口をパクパクし沈黙していた。

 「少し話があるんだけど、入ってもいいかな?」

 「ムムム!?こんな時間にどうされましたか?」
 
 「入ってもいいかい?」

 返答に対する答えが無かったので、もう一度問う。

 「ムヒャ!ど…どうじょ…どうぞ こちらへ」

 部屋の中へ案内される、後ろからジェイグ、ゲン、ノワールも続いて入室する。



 
 「ム。ラフィアット様それでどうされました?」
 
 「なぜ、この領地に天晴箱を持ち込んで日照りの状況を作り出したのか聞いておこうと思ってね。バカーン。いや、火の絶傑リッシー」

 バカーンの部屋に入った私は、時間をかけすぎて対策を講じられても面倒なので、単刀直入に話す事にした。
 
 「ムッムッム!!?」

 「言い訳しても無駄だからね、既に調べはついているよ」

 「ム、まさか!?スペシャルギフト【心理把握グラスプ】!?」

 どうやら何か勘違いしているらしい。初めて聞く名前のギフトだが、今は関係ない。作戦通りに動くだけだ。

 「さあ、どうだろうね。このまま魔法を使われても面倒だから捕まってもらうよ!ジェイグ、ゲン頼んだ!」

 自分に戦闘力が無い事が少し恥ずかしかったが、二人に捕獲してもらう流れになっていた。幸いテーブルの上に魔導書が置かれたままだった。

 「おっさん!暴れるなよ!」

 ジェイグとゲンの二人がかりで取り押さえた。

 「ムムム」

 バカーンは成す術もないといった状況であった。

 作戦通りにうまくいって一安心する。一応保険も用意していたが、今回は使う事はなさそうでよかった。

 本来なら拘束後に、詰問を行うんだが、時間があったため殆ど調べ終えている。バカーンが、隣領主のギロムの目的を聞かされていない事も分かっていた。

 「バカーン、君に特に聞くことは無い。なぜ聞く必要がないかは、想像通りに任せるよ。犯罪者として王都送りにさせてもらう」

 「ム…ムハハハ…。まだ子供だと思い放置し続けたためこうなったか…。中々やるではないか。ただ詰めが甘かったな!このまま全員木っ端微塵にしてやるわ!」

 バカーンは不敵に笑いながらそう言った。そして、急に体が光始める。

 「ラフィアット様!こいつもう1つ魔導書を…!お逃げください!自爆しようとしています!」
 
 ジェイグがそのように危険を伝えた。

 「ゲン!ノワール!ギフトを!」
  
 「ダメだ、まにあわねえ!」 

 【麻痺一喝】を発動させるには、少しの溜め時間が必要だった。

 その時だった。

 「【魔法阻害マジックキャンセル】…」
  
 ノワールが手のひらをバカーンに向かって突き出した。

 「ムムム!?」

 バカーンの体を包んだ光が弱まっていき、完全に光が消えた。

 「ムム!なぜだ…!発動しない…!」

 「よかった…。間に合った…」

 ノワールの咄嗟のギフトの発動で、一同は助かったのだった。

 「ありがとうノワール!」

 ノワールのギフト【魔法阻害】は、相手の発動前の魔法を言葉の意味通りキャンセルするという対魔法使いに特化したギフトだった。

 すぐ発動するような魔法に対しては効果は少ないが、今回のような溜めが必要な大技には効果てき面なギフトだった。

 ギフトの内容は聞いていたので、危険ではあったが今回は事情を話し、同行してもらった訳である。

 (ずっと寝ているから、未だにナラタのギフトだけ把握していないが…)



 成す術も無くなったバカーンをそのまま取り押さえ、隠し持っていた魔導書も押収した。

 その後、他の4人の部下と同様牢屋へぶち込み、罪人として王都送りにすることになった。 

 最後に多少の誤算はあったものの、概ね考えていた通りの結果となり一件落着である。




 「父上、以上が今回の事件の報告となります」

 私はバカーンを捕まえた直後に、今回の一件を父へ報告していた。

 「そうか…、ラフィアットよ。もう少し近くに寄れ」

 「は、はい」

 心無しか、疲れた様子をしていた。近寄ると、抱きしめられる。

 「私がふがいないばかりに、子供のお前を危険に晒してしまい済まなかった。無能な私を許してくれ」

 バカーンの近くにいた自分が気づかなかった事、そして実の子を危険に晒してしまった事に恥じたためか父の体はいつもより小さく感じた。 

 「私こそ、勝手をしてすみませんでした。もう少し上手い対処方法があったと思いますが、結果的には皆を危険に巻き込んでしまいました…」

 「お前はまだ8歳なのだから失敗して当然のことだ。だが今回のように自分の命を危険に晒すような行動はやめなさい。命をかけるのは私の方なのだから」

 心から心配し、愛してくれているのを感じる。

 「はい…、すみませんでした。次からは真っ先に父上へ相談するようにします」

 「うむ…。先ほど皆には礼を言ったが、今度は命の恩人として礼を伝えねばならぬな」

 「先ほど父上がいらっしゃった際には、皆喜んでおりました。今度は父上もご一緒に食事をして頂けないでしょうか?」

 「ハハハ、それは賑やかそうだな。私も賑やかなのは歓迎だ。是非一緒させてもらおう」  

 「はい!」 
 
 その後、部屋に戻った私は、いつも以上に疲れていたためか、ベッドに入りすぐに寝てしまった。
 
 この数日間常に頭を悩ませていた事と、生まれて初めて戦闘による命の危険を感じたからか、精神も体力も限界だったのであろう。

 (今日はゆっくり休もう…)




 その後、父上はバカーンとその一味を罪人として王都の役人へ引き渡し、事後処理を行っていた。

 まだ日照りと干ばつは収まってはいなかったが、天晴箱の稼動が全て停止したのですぐにでも雨は降ってくるだろう。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界の男教師

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が世界初の男性教師として働く話。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

成長チートと全能神

ハーフ
ファンタジー
居眠り運転の車から20人の命を救った主人公,神代弘樹は実は全能神と魂が一緒だった。人々の命を救った彼は全能神の弟の全智神に成長チートをもらって伯爵の3男として転生する。成長チートと努力と知識と加護で最速で進化し無双する。 戦い、商業、政治、全てで彼は無双する!! ____________________________ 質問、誤字脱字など感想で教えてくださると嬉しいです。

転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚

ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。 原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。 気が付けば異世界。10歳の少年に! 女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。 お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。 寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる! 勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう! 六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる! カクヨムでも公開しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...