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剣の女王
第1話 台頭
しおりを挟むグラトリアの最初の戦いは、彼女の父を裏切った反逆者たちとの戦いであった。
彼女の父の支配に反旗を翻した家臣たちの足並みが乱れるのを、理屈ではなく本能で悟ると、彼らの功名心を煽るように各地で戦う。
彼女の率いるオークの傭兵団が、敵軍を打ち破るつどに味方が増え、裏切り者たちは数を減らす。ひと月も経たぬうちに立場が逆転したのは彼女の勇猛さに加えて、幼い頃から仕える筆頭剣士ルクードと、彼女の妹である策謀家にして妖術師であるベリストラの貢献が大きかった。いずれも若く、それゆえ反逆者は侮ったが、その代償は彼らの命で支払うことになる。
「姉様、敵は全面降伏の代わりに慈悲を乞うていますが、いかがいたしましょうか?」
「首謀者、その親族は自裁を許そう。従った兵の命は許すが、領地や役職は没収。一兵卒、あるいは武器を置いて民としてならとどまることを許そう」
「能力や忠誠心に応じて、改めて与えるのはいかがですか?」
「一考の余地はあるが、それよりも私に従った者たちへの恩賞が先だ。裏切り者たちに従ったのだから、負けた時の処遇に覚悟もあろう。ルクード、お前の意見はあるか?」
妹ベリストラの意見を聞きながら、グラトリアは幼馴染に問う。
「お許しを得て発言させていただくなら、ひとまとめにしておくのが良いでしょう。裏切り者たちの子息を預けていただければ、女王陛下に忠誠を誓う剣に鍛え直して見せます」
幼い頃からグラトリアに仕え、揺るぎない忠誠心を持つ青年は戦場でその裏切り者たちを幾人も血の海に沈めている。グラトリアは剣と魔法のどちらも習熟しているが、剣ではルクード、魔法ではベリストラの方が優れてた。
最初は小さな地方勢力にすぎなかった彼女たちは、大陸屈指の大勢力になるまで、数年という短い時間しか必要なかった。
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