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Day6 向き合う

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――撮影Day6
 仕事を中断するにも続行するにもスカーレットにはもう一度会わねばならないと事務所に言われたが、加納先生は大反対してくれた。成沢が居ない場所で会わせてはいけない。医務室でか加納先生も同伴の上、会うべきだと主張してくれてそれが通った。ヨウちゃんも心配してついてこようとしていたのを、恋人シーが上手く言いくるめ出社させてくれて助かった。ヨウちゃんが居るとLUCAになれないから。

 診察室は異様な空気に包まれている。成沢と加納先生が物凄く怒っている。その先で大男が小さくなっている姿を見ると、ちょっと笑えて思わず瑠花が出そうになる。

「先ずは謝らせてください。何も知らなかったとはいえ、私のやり方が不味かったせいでLUCAさんを傷つけてしまいました。謝って済むとも思えませんが、申し訳ありませんでした。私は、有名になり傲っていた事に気づきました。」

 スカーレットは、大きな体で診察室の床に座り込み見事な土下座を披露した。誠意は物凄く見えるが、私の前にいる二人の怒りは収まっていないよう。

「撮影は中止にして帰ってもらいたい気持ちでいる。」

「医者としても同感だ。ただし、当事者を無視して決めるものでもない。」

 二人がこちらを見る。昨日もずっと考えて、私は決心していたことを話すことにする。

「私、トラウマと向き合いたいんだけど。あの……一人は怖くて。成沢……背中だけでいいから一緒に写って欲しいのだけど。」

 恥ずかしくて涙が出そうになりながら見ると、いつもクールな成沢が額に手を当てて俯いている。

「……やっぱり、だめ……?一人でスカーレットのカメラの前に立てる自信なくて……成沢となら……その……頑張れるような気がするのだけど……」

 急に立ち上がった成沢に正面から抱き締められた。

「誰にも見せたくないのに!貴方って人は!覚悟して下さいね。」

「んんっ……二人の世界は帰ってからお願いします。医師として、本日の撮影は無しで成沢さんとLUCAさんの話し合いに当てるのをおすすめします。」

 土下座したままのスカーレットが了承した。土下座はもういいと成沢に耳打ちして止めてもらう。成沢と加納先生の隙間から見たスカーレットは、顔をびしょびしょにして酷い顔で泣いていた。イケメン台無し。

「初恋みたいなもんだったんだろうな。気の毒だけど勝ち目無かったよ。」

 加納先生の独り言は、成沢に耳を塞がれて聞こえなかった。泣き顔を見て、少しスッキリしたのはLUCAの演技で隠した。

 成沢の車で帰ることになったけど、凄く甘い雰囲気。

「なんかいつもと違う……」

「同じわけ無いでしょう?」

 辿り着いたのは私のマンションではなく、彼のマンション。戸惑う間に手を繋がれてぐいぐいと手を引かれて部屋の中。

「瑠花?わかっている?貴方あんなに熱烈な告白を俺にしてきたわけだけど……」

 額を押さえながら成沢が小さな声で耳元で話す。ざわっとした感覚が上がってきて耳を押さえる。

「やっ!擽ったい。」

 私の手をとり成沢が跪く。

「瑠花、愛しています。私の唯一になってください。」

「へ?」

「貴方に特別な男だと認めてもらえて、もう我慢できそうにありません……が、明日の撮影のために今日は、キスだけで我慢します。それは許してくれますね?」

 有無を言わさぬ強い視線に思わず頷くと、初めての軽いキスから、入り込んできた熱い舌に舌を吸われて上顎を擽られる。体が熱くなり、腰が抜けてへたりこみそうになるほどキスをされた。

「は!初めてだったのよ?!もっとロマンチックにとかね……あったのに!ばかっ!」

「はぁ……瑠花……そんな可愛いこと言わないで我慢するの辛い。」

 溜め息をついて少し赤い顔をした成瀬は獰猛な瞳をしていた。こわ……くはなかった。成沢だから?

「……成沢だと怖くないね。ずっと守ってくれていたの……あり……がと。スカーレットが騎士って呼ぶのがわかる気分がするから、今回の事は許……っ」

 言い終わらない内に、ソファーに押し倒されて唇をまた奪われていた。何度も不埒に動きそうになる手を、理性で制御して我慢する成沢はとても艶っぽくて今まで見たことがない姿にときめいた。

「んふ。怜一郎……大好きっ。」

 ぎゅっと抱きつくと、頭の上から溜め息が聞こえてくる。

「小悪魔過ぎるだろう。これでお預けとか、明日帰ったら絶対寝かせてやらない。」

 頭の上で私の頭を抱えて耳を塞ぎながらぶつぶつと独り言を言う彼の声と温もりと香りに包まれていつの間にか寝てしまった。
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