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坂下瑠花
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私には兄が二人いる。下の兄耀亮は控えめに言っても天使、上の兄滉耀はそのヨウちゃんを溺愛する異常なブラコンの変態。コウに言うと「お前も同じだろう」と鼻で嗤われる。
家族以外は、黒くてどろどろした感情の渦巻く色……あの男と同じ色を纏っていて気持ち悪いことが多い。たまに透き通った綺麗なカラーを持つ人もいる。
コウも黒いけど艶々の黒で潔さを感じる。どろどろはないので、キモいけどまだ平気。ヨウちゃんの 恋人も同じような色をしているので、コウとヨウちゃんの恋人は似た者同士。
ヨウちゃんはずっと白くてキラキラだったけど、最近は少しピンクが混ざっていたりキラキラが増している日もある。綺麗だけど少し寂しくなることもある。
小さな頃から大好きなヨウちゃんに私と兄が近づくと、周りにヨウちゃんが苛められるため私たちは普通の兄と妹では居られない期間を過ごしていた。
でも、今はシーが間に入って関係は改善しつつある。先月の食事会ではヨウちゃんに頭まで撫でてもらえた。凄く嬉しかったなって思い出していたら、黒マスクの下が少しにやけ顔になってしまう。いけないいけないクールビューティーがウリのモデルがにやにやしていてはだめだ。
「LUCAもうすぐ撮影だ。気合い入れて、お兄さんの事は一回この箱に入れなさい。」
何を考えているかわからないと言われる私の感情をマスク越しでも言い当ててしまうこの男は、マネージャーの成沢 怜一郎 。彼の纏うカラーは無色透明。最初に見たときは、胡散臭そうな笑顔なのにその透き通った初めての色にとても驚いたのを覚えている。
読モを卒業させて、クールビューティーモデルとして売り出したい事務所の方針が、最初はなかなか軌道にのらなくてマネージャーともなかなか上手くやれなかったけど、成沢が私のマネージャーになってからトントン拍子に上手くいくようになった。
ヨウちゃんとの関係修復後に、自分がずっと無意識でLUCAを演じていた事に気付いた。同時に素の瑠花のままだと、カメラの前に立つだけで体が震えてしまう事にも気づいてしまった。
瑠花とLUCAの切り替えが難しくなり、切り替えられず撮影が上手くいかない日が続いた。最初は体調不良で押し通していたけど、いつまでも不調では押し通せない。困った私は、成沢に相談してメイク後、人払いした控え室で、小箱に瑠花を隠してLUCAに切り替えるオマジナイを彼が編み出した。そのお陰で、切り替えが上手く出来るようになったので本当に感謝している。
小箱を開けて内蓋にキスをして、瑠花を閉じ込めて鍵を閉める。たったそれだけのオマジナイで、カメラを恐れる『坂下瑠花』からカメラの前で演じられる『モデルのLUCA』になれる。
――Day1
「LUCAチャン!イッショに仕事ウレシーよ。」
妙な日本語で声をかけてくる、スカーレットは海外では有名な若手カメラマン。見目麗しく斬新な写真を撮る事で有名で、モデルを新しい世界に羽化させる天才と呼ばれている。今回は熱烈なオファーでLUCAに指名が入った。LUCAと共に他の子も一気に売れるチャンスだと社長たちが嬉々として他のモデルを連れて現場に乗り込みたがっていたが、スカーレットが最低限の人員のみとシャットアウトしてしまったため、スカーレットとマネージャーの成沢とLUCAだけの撮影。
「LUCAチャン。キンチョウシテル?何枚かトルよ。イツモドーリやってみて。」
シャッターの音を聞きながら、ポーズを変えていく。無言で何枚撮っただろうか?
「OKダヨ。LUCAちゃんの心はどこに閉じ込めてきちゃったのかな?そのままもステキだけど、もっとステキをモッテない?話ながら撮るからオヘンジしてね。」
「分かりました。」
「LUCAちゃんの家族は?」
「父と母と兄が二人。」
「お兄さんどんな人?」
「…………普通。」
「へー?やり手でかっこいいオニイサンとフツメン?のオニイサンが居るってキいてるよ。」
彼には悪気はない。悪意があるのは彼に教えた人だ……彼のカラーは燃える炎のような赤。黒くないどろどろしていないと自分に言い聞かせる。
「LUCAちゃんは兄がタイセツなんダネ。僕の日本語ダめでシタか?アナタ傷つけた。ナゼ?どうして?」
畳み掛けられて、感情が漏れそうになるけどなんとか耐える。控えていた成沢から大判のタオルを頭にかけられる。
「スカーレットさん、流石にプライベートなことに首を突っ込むのはデリカシー無さすぎです。」
成沢が私を庇うように前に出る。少しずつ落ち着きを取り戻している間もスカーレットはお構いなしに話続ける。
「僕は、作品には妥協シナイタイプ。LUCAチャンの全部がミたい。」
持ち直して、二時間の撮影時間みっちりとシャッターを押され続け疲労困憊で控え室に戻る。小箱の鍵を開けてキスをする。綺麗に整えられていた髪の毛をぐしゃぐしゃとかき混ぜ頭を抱え毒吐く。
「何なのよアイツ」
ドアからノックの音がする。オフに戻した後の対応は、基本的に成沢がすることになっている。私は、顔を伏せたまま対応が終わるのが待つ。成沢と相手が何か言い争っている声が聞こえる。
「LUCAちゃんミーツケタ。」
隙間からチラリと見ると、にやりと笑った手ぶらのスカーレットが、カメラを構えて写真を撮るジェスチャーをした。
「クールビューティーって聞いてたけど、LUCAチャンは多分凄くホットな子だよね。魅力的なのに何故カクシテル?」
「おー!LUCAチャンの魅力的閉じ込める悪いbox!ミーツケタ。」
声の近さに驚いた時には、手元に持っていた箱は取られていた。成沢がすぐに取り返してくれたものの、スカーレットは耳元で……
「悪いboxには、魅力閉じ込められないマジックかけマシタ。明日の撮影タノシミ。」
投げキッスか、リップ音を背中に投げつけながら帰っていった。成沢が扉に鍵をかけた音が聞こえる。
成沢の大きな手が頭を撫でる。手の平から体温が伝わってくると少し落ち着く。
「瑠花?落ち着いて聞いて、大丈夫!明日の撮影も大切に私が預かりますよ。貴方はLUCAのお仕事をしていいんです。」
黙って頷いた。大きな成沢の手から伝わってくるあたたかさが心地よかった。
家族以外は、黒くてどろどろした感情の渦巻く色……あの男と同じ色を纏っていて気持ち悪いことが多い。たまに透き通った綺麗なカラーを持つ人もいる。
コウも黒いけど艶々の黒で潔さを感じる。どろどろはないので、キモいけどまだ平気。ヨウちゃんの 恋人も同じような色をしているので、コウとヨウちゃんの恋人は似た者同士。
ヨウちゃんはずっと白くてキラキラだったけど、最近は少しピンクが混ざっていたりキラキラが増している日もある。綺麗だけど少し寂しくなることもある。
小さな頃から大好きなヨウちゃんに私と兄が近づくと、周りにヨウちゃんが苛められるため私たちは普通の兄と妹では居られない期間を過ごしていた。
でも、今はシーが間に入って関係は改善しつつある。先月の食事会ではヨウちゃんに頭まで撫でてもらえた。凄く嬉しかったなって思い出していたら、黒マスクの下が少しにやけ顔になってしまう。いけないいけないクールビューティーがウリのモデルがにやにやしていてはだめだ。
「LUCAもうすぐ撮影だ。気合い入れて、お兄さんの事は一回この箱に入れなさい。」
何を考えているかわからないと言われる私の感情をマスク越しでも言い当ててしまうこの男は、マネージャーの成沢 怜一郎 。彼の纏うカラーは無色透明。最初に見たときは、胡散臭そうな笑顔なのにその透き通った初めての色にとても驚いたのを覚えている。
読モを卒業させて、クールビューティーモデルとして売り出したい事務所の方針が、最初はなかなか軌道にのらなくてマネージャーともなかなか上手くやれなかったけど、成沢が私のマネージャーになってからトントン拍子に上手くいくようになった。
ヨウちゃんとの関係修復後に、自分がずっと無意識でLUCAを演じていた事に気付いた。同時に素の瑠花のままだと、カメラの前に立つだけで体が震えてしまう事にも気づいてしまった。
瑠花とLUCAの切り替えが難しくなり、切り替えられず撮影が上手くいかない日が続いた。最初は体調不良で押し通していたけど、いつまでも不調では押し通せない。困った私は、成沢に相談してメイク後、人払いした控え室で、小箱に瑠花を隠してLUCAに切り替えるオマジナイを彼が編み出した。そのお陰で、切り替えが上手く出来るようになったので本当に感謝している。
小箱を開けて内蓋にキスをして、瑠花を閉じ込めて鍵を閉める。たったそれだけのオマジナイで、カメラを恐れる『坂下瑠花』からカメラの前で演じられる『モデルのLUCA』になれる。
――Day1
「LUCAチャン!イッショに仕事ウレシーよ。」
妙な日本語で声をかけてくる、スカーレットは海外では有名な若手カメラマン。見目麗しく斬新な写真を撮る事で有名で、モデルを新しい世界に羽化させる天才と呼ばれている。今回は熱烈なオファーでLUCAに指名が入った。LUCAと共に他の子も一気に売れるチャンスだと社長たちが嬉々として他のモデルを連れて現場に乗り込みたがっていたが、スカーレットが最低限の人員のみとシャットアウトしてしまったため、スカーレットとマネージャーの成沢とLUCAだけの撮影。
「LUCAチャン。キンチョウシテル?何枚かトルよ。イツモドーリやってみて。」
シャッターの音を聞きながら、ポーズを変えていく。無言で何枚撮っただろうか?
「OKダヨ。LUCAちゃんの心はどこに閉じ込めてきちゃったのかな?そのままもステキだけど、もっとステキをモッテない?話ながら撮るからオヘンジしてね。」
「分かりました。」
「LUCAちゃんの家族は?」
「父と母と兄が二人。」
「お兄さんどんな人?」
「…………普通。」
「へー?やり手でかっこいいオニイサンとフツメン?のオニイサンが居るってキいてるよ。」
彼には悪気はない。悪意があるのは彼に教えた人だ……彼のカラーは燃える炎のような赤。黒くないどろどろしていないと自分に言い聞かせる。
「LUCAちゃんは兄がタイセツなんダネ。僕の日本語ダめでシタか?アナタ傷つけた。ナゼ?どうして?」
畳み掛けられて、感情が漏れそうになるけどなんとか耐える。控えていた成沢から大判のタオルを頭にかけられる。
「スカーレットさん、流石にプライベートなことに首を突っ込むのはデリカシー無さすぎです。」
成沢が私を庇うように前に出る。少しずつ落ち着きを取り戻している間もスカーレットはお構いなしに話続ける。
「僕は、作品には妥協シナイタイプ。LUCAチャンの全部がミたい。」
持ち直して、二時間の撮影時間みっちりとシャッターを押され続け疲労困憊で控え室に戻る。小箱の鍵を開けてキスをする。綺麗に整えられていた髪の毛をぐしゃぐしゃとかき混ぜ頭を抱え毒吐く。
「何なのよアイツ」
ドアからノックの音がする。オフに戻した後の対応は、基本的に成沢がすることになっている。私は、顔を伏せたまま対応が終わるのが待つ。成沢と相手が何か言い争っている声が聞こえる。
「LUCAちゃんミーツケタ。」
隙間からチラリと見ると、にやりと笑った手ぶらのスカーレットが、カメラを構えて写真を撮るジェスチャーをした。
「クールビューティーって聞いてたけど、LUCAチャンは多分凄くホットな子だよね。魅力的なのに何故カクシテル?」
「おー!LUCAチャンの魅力的閉じ込める悪いbox!ミーツケタ。」
声の近さに驚いた時には、手元に持っていた箱は取られていた。成沢がすぐに取り返してくれたものの、スカーレットは耳元で……
「悪いboxには、魅力閉じ込められないマジックかけマシタ。明日の撮影タノシミ。」
投げキッスか、リップ音を背中に投げつけながら帰っていった。成沢が扉に鍵をかけた音が聞こえる。
成沢の大きな手が頭を撫でる。手の平から体温が伝わってくると少し落ち着く。
「瑠花?落ち着いて聞いて、大丈夫!明日の撮影も大切に私が預かりますよ。貴方はLUCAのお仕事をしていいんです。」
黙って頷いた。大きな成沢の手から伝わってくるあたたかさが心地よかった。
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