あほな同僚に絡まれたら、年上本命と上手くいった。棚ボタオフィスラブ

朝倉真琴

文字の大きさ
上 下
21 / 28
番外編

飲み会の真実

しおりを挟む
 新人教育担当が飲み会に誘ってくれる日、行きたいなら予定を空けておけよと田村部長に声をかけられた。

 俺は、香取、新見と一緒に坂下先輩に新人担当についてもらった。よその新人担当も優しい人が多かったみたいだけど、あのカミカミ自己紹介から、坂下先輩はダントツの癒し系で新人から人気があってかなり羨ましがられた。

 香取も似たように撫でたい癒し系だと思っていたらしくて意気投合して割りと仲良くなった。新見だけは、にこやかにしているのに美形の迫力みたいなものがあって食い込んで仲良くなることはなかった。

 飲み会当日は、堀ごたつ式の半個室。先輩の隣に座りたい!と言うと、全員そうだったのでじゃんけんをした。割りと白熱したが、新見の一人勝ちだった。

 残念だったなと香取とアイコンタクトをしながら座る。次点で勝ったから、俺は先輩のお向かいに座れて癒される。

 慣れないお酒で、坂下先輩と社長への感謝の気持ちが止まらない。先輩も頬をピンクに染めてグラス両手で持って嬉しそう。何それ可愛い!本当に年上?撫でたい。

 テーブルに少し乗り出しぎみに、奥の席から店員を呼び止めた先輩。その口を手で塞ぎながら、新見が店員さんにお茶二種類を二個ずつとデザートを頼む。イケメンは何をやってもサマになる。先輩の口を押さえた手を……なんとなくみつめていると、然り気無く笑った口を隠すくらいの動作だったけど、唇で触れていた。絶対に。

 少しテンションの上がっていた先輩の機嫌がみるみる下降して、犬耳を項垂れ尻尾が!下がってる幻覚が見える。可哀想なのに可愛いって反則でしょ?!酔っ払いの幻覚最高。

 店員に置かれたお茶は二種類なのに、新見は何も聞かずに先輩の前に緑茶を置いた。不思議に思ったから、確認したけど先輩がいいならいいか。

 柚子ソルベを食べながら、俺から見える先輩の耳と尻尾が少し元気を取り戻した。が、すぐにぺしょーっと、なってる。……目を何度ごしごししても見える酔っ払いの不思議。

 楽しい時間はあっという間に終わりになり、お開きの時間が来た。

「支払ってくるから、帰ってていいよ。三人とも電車俺と違うし。」

 声をかけた先輩が支払いをしている間に、一人だけ路線の違う先輩を送っていくかじゃんけん!新見は、さっき隣だったんだから遠慮して欲しいのに諦めないので仕方なく三人でじゃんけんした!

 白熱した末、香取が勝って大喜びしたが、その時先輩の姿はもうなかった。可哀想がすぎて、思わず気分転換にカラオケでもいくかって誘ったらのってきた。新見には断られたので、二人でカラオケで先輩の話したり歌ったりしながら声ががらがらになるほど楽しんだ。

 翌日三人で、先に帰ったことに不満を呈してみたが先輩はちっとも意味がわからないみたいで、仕事には関係ないとばかりに放置された。

 俺はあの飲み会以降、酒に酔ってなくても何故か、先輩の犬耳と尻尾が見えるようになった。香取に自慢していたら、新見にすごい勢いで食いつかれて怖かった。

 今日は、先輩の服がいつもと雰囲気が違う。上下バッチリ高級ブランドモノ。機嫌は良いのだろう、可愛い尻尾が揺れて耳はぴこぴこしている。あぁ、撫でたいなぁ。……と、眺めていたら、前にいた新見が急に振り返り睨んできた。美形は後ろにも目があるのかな?怖っ!

 でも、俺はこの幻覚で会社が二倍は楽しいし、得した気分。後日、香取からも

「俺にも見えるようになった。」

 と報告を受け二人で喜んでいるところに、田村部長が来てお仲間だと分かった。部長と香取と三人で犬耳が見えるメンバーで、『豆柴きゅんを愛でる会』作って楽しんでいる。今日は三人定例飲み会。

「今日も豆柴きゅん可愛かった。」

「だなぁ。案件持ってきたときのぶんぶん尻尾と褒めろと言わんばかりの耳。」

「部長は、頭なでなで出来て羨ましすぎる。」

「叱られた時の耳と尻尾シュンも捨てがたい。」

「「わかる!」」

「最近は、見た目アフガンハウンドが恐い。」

「絶対に、背中か頭の後ろにも目がありますってあのアフガン。」

「「わかる。」」

「中身狼が最近漏れてるというか、隠す気なくなったのかね?中身。」

「そういえば例の食事会報告見た?モデルのLUCAちゃんと謎イケメン。」

「あのど派手さ、アフガンの親族ですかね?部長。」

「あ?あれ豆柴きゅんの兄と妹だけどあいつらヤバイから気を付けろよ。」

「だから、あんなに豆柴きゅん可愛いのにアフガンだけしか側に居ないんすね。囚われの姫っぽい。」

「ヤバいやつに認められるやつは更にヤバいから、愛でるだけにしておけ。」

 香取と部長の言葉に妙な説得力を感じた。俺たちだけ見えるあれはなんなのか不思議に思いながら、どうか目覚めたら見えなくなってるなんて子とのないように三人で祈るのだった。

END
 
☆おまけ説明
説明がなくてもお察しかもしれませんが補足

※豆柴きゅん:坂下耀亮
※アフガンハウンド:新見詩音

 社内でも話すので、隠語にしていますが耀亮以外にはバレバレ。

  犬耳が見える人の条件は、坂下を愛でたい(性的なもの)なので新見は、見ることが叶いません。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

令息だった男娼は、かつての使用人にその身を買われる

すいかちゃん
BL
裕福な家庭で育った近衛育也は、父親が失踪した為に男娼として働く事になる。人形のように男に抱かれる日々を送る育也。そんな時、かつて使用人だった二階堂秋臣が現れ、破格の金額で育也を買うと言いだす。 かつての使用人であり、初恋の人でもあった秋臣を拒絶する育也。立場を利用して、その身体を好きにする秋臣。 2人はすれ違った心のまま、ただ身体を重ねる。

夜の公園でナンパしてきたタチを、タチが美味しく頂く話

ミクリ21 (新)
BL
タチがタチを食べる話。

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない

すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。 実の親子による禁断の関係です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...