あほな同僚に絡まれたら、年上本命と上手くいった。棚ボタオフィスラブ

朝倉真琴

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side坂下耀亮

side坂下耀亮:約束

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 金曜は、残業なく帰宅できたので土曜の早朝に出掛けられるように早めに横になったのだが、妙に緊張してあまり眠れなかった。

 ――土曜、新見が家まで迎えに来てくれて車に乗り込むも、どこにいくつもりなのか教えてももらえず心地好い運転で眠くなる。

 誕生日の新見に運転を任せたまま、道中は殆ど寝て過ごした俺。目覚めると懐かしい風景が広がる。

「あれ?ここ?」

 車を降りると見覚えのある田舎。

「こっち!こっちきて!!」

 新見が急に子供に戻ったみたいに俺の手を引いて走る……この感じ知ってる。

「シーちゃん?」

「そうだよ、ヨウくん気づいてくれて嬉しい。僕、初恋からずっとずっとヨウくんだけが大好きだよ。」

 頬を染めるシーちゃんのキラキラした目は昔と同じだ。

「俺の初恋もシーちゃんだ!今、急すぎて気持ち追い付かないけど俺……」

「待てぇぇ!!」

「待ちなさい!」

唐突な乱入者がきた。

「え?滉耀と瑠花?」

「「おま!詩音!俺(私)たちを出し抜こうとしたってそうはいかない!お前の事は認めない!」」

「成人済みのヨウくんが認めてくれたら、お前らの許可なんか要らないんだよ!」

 ナニコレ子供の喧嘩?いつもはクールに見えるこの三人は何をこんな子供みたいにムキになっているんだ?

「他人事みたいにしてるけど、あんたわかってんの?!」

 瑠花に肩を捕まれてぐらぐらと体を揺らされ目が回る。滉耀が、俺とシーちゃんの間に立つ。高身長のド迫力の背中は壁のようだ。見せつけやがって、自慢か?

「俺らが守ってきたヨウをなんでお前みたいな変態ストーカーに!」

「本人が気づかなかったらセーフなんだよ。」

「この前だって一服盛……むぐっ。」

「お前らだって携帯に盗ちょ……もがっ。」

守ってきた?ストーカー?

「お互いに、ここやめておこう。」

 シーちゃんと滉耀がかたい握手交わしながら睨みあってるし、会話についていけない。

「んん。とりあえず、今日のヨウちゃんの時間は俺がもらったんだから、お前らは指でもくわえて留守番していろ。」

 シーちゃんが手を繋ぎ叔父の持ち物だという別荘の鍵を開けると、兄と妹も雪崩れ込んできた。

「不法侵入……。」

 シーちゃんに入室を拒否られた兄と妹が玄関で泣いている。こんな姿は初めて見る。

「だって、ずっと守ってきたのに……。」

「ヨウが変態ストーカーにとられちゃうぅ。」

「ストーカー?」

 ……二人の視線の先にはシーちゃん。理解が追い付かない。混沌の現場となった玄関からも動けない。

「あの?皆様、客間にどうぞ?」

 急に現れた執事セバスチャン(仮)が俺たちに声をかけてくれたので、ようやく玄関から動くことができた。

「ありがとう。セバスチャンさん。」

ハーブティーを用意してくれた事に思わず声をかけると、小さく笑い。

耀亮ようすけ様。初めまして、私、と申します。別荘の管理を任されております。どうぞ末永くよろしくお願い致します。」

仙波さんか、セバスチャンに似ていたな!惜しかったな。

「仙波さんよろしくお願いします。」

 末永く?ってなんだ?

 お茶の用意が終わった仙波さんが退室して、四人で話すことになった。

「夜は、シーちゃんとイタリアンディナーの予約しているから出掛けないといけないんだけど……滉耀と瑠花はどうしたの?」

「「詩音を選ぶの?」」

「選ぶって何?約束をしていた食事に行くんだけど?リーグ戦の賞品食事券使って、あとシーちゃんの誕生日祝いも兼ねてる。」

「 「俺(私)も行く」」

「二人もシーちゃんのお祝いをしたいってこと?」

 二人が顔を見合わせてアイコンタクトして、ニヤリとしたのが見えた。

「「そう!お祝いしたいの!大好きな人のために!」」

 ちらりとシーちゃんを見ると、機嫌はあまりよくなさそうに見えるけど、目が合うとにこにこする。

「お祝いは人数多い方が楽しいはずよ!」

「美味しいワインを奢ろう!」

「二人の気持ちはわかったけど、シーちゃんの誕生日だから、本人に決めてもらわないと……。」

 シーちゃんに目線を向けながら、そう言うと二人は勢いよくシーちゃんに近づき三人でひそひそと話している。仲良さそうに見えないんだけど……。最後には握手していたから仲はいいのかもしれない。
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