小説版「付呪師リゼルの魔導具革命」

清見元康

文字の大きさ
37 / 44
第二章

第37話:ガラリアの夢 前編

しおりを挟む
 [帝]の名を関する伝説の付呪師ガラリア。
 彼女が運営する工房で、僕の仕事は始まった。

 とりあえず最初の仕事は、お風呂の湯を張り、ガラリアがお風呂に入っている間に夕食の準備を整えることだった。

 お風呂上がりのガラリアが火照った顔を手で仰ぎながら食卓の椅子に座る。

「ふいー、リゼル氏ご飯はまだかね」

「……これ本当に仕事ですか?」

「何を言うかね、きちんと給金は出すぞ。これは立派な仕事だ」

「では言い方を変えます。これが付呪師の仕事ですか?」

「仕事だとも。付呪師も人だ。飯を食わねば付呪はできぬ」

 …………。
 食事と風呂が用意されている[石と苗木]の方が良かった気がする。
 まあ、ガラリアの護衛という意味もあるのだから流石に戻ることはできないが。

 食卓に食事が並ぶと、ガラリアはにまぁーっと笑みを浮かべた。

「さあさあリゼル氏、遠慮せずに座りたまえ。共に今日の冒険の成功を称え合おうでは無いか」

「……まあ、いいですけど」

 何か釈然としないが、僕は空腹に負けた。

 流石は最高位の付呪師ガラリアのキッチンは食材が豊富だった。
 付呪を利用した冷蔵庫、冷凍庫に製氷機まである。

 新鮮な肉と野菜を使って調理することができたのは嬉しい。

「リゼル氏やるね、なかなか美味しいぞ」

 とガラリアは僕のシチューを口いっぱいに頬張る。

「ああそうだ。とりあえず明日キミを[商人ギルド]に紹介する」

「え、いいんですか?」

 いきなりちゃんとした仕事らしい話題を投げかけられ、僕は驚いた。

「当たり前だ。キミの実力を遊ばせておく方が損失だ」

「一応[冒険者ギルド]からも推薦してくれるっていう話でしたけど」

「それでキミはただ待っているだけのつもりだったのか? 連中の腰は重いぞ」

 ……ただ待っているだけのつもりだった。
 だって、皆あれだけ意気込んでくれていたのだし。

「ボクが行けばその日のうちに手続きは終わり許可証が出る。任せたまえよ」

「それって職権乱用ですよね」

「おーそうかわかった。ではやめよう。キミはいつ来るかもわからない報告を待ち続けるが良い」

 うっ……。

 ガラリアはにやぁと笑って僕を見ている。
 僕は敗北を認め、ガラリアに頭を下げた。

「……すみません、登録お願いします」

「おーおーキミがそこまで頼むのなら仕方あるまい。これでボクたちは共犯だ」

「きょ、共犯……」

「うむ、共犯だ。ワクワクする響きだな」

 ちなみに僕の寝室は用意されていなかった。
 抗議はしたが、一人しかいない護衛が別の部屋で寝てどうすると理屈をこねられ僕は負けた。

 流石に一緒のベッドで眠るのは断固として拒否した結果、床で寝袋を敷いて寝ることとなった。
 ……フカフカのベッドが恋しい。


 ※


 朝食を終え、[商人ギルド]に向かう準備が完了した僕はガラリアと共に工房の扉を開ける。

 目元だけ笑っていないエメリアがそこにいた。

「うわっびっくりした……」

「お、おおー我が弟子ではないか、心臓止まるかと思ったぞ」

「…………どこに行くんですか?」

 ……怖い。
 だが、悪いのは僕だ。
 しっかりと言葉を伝えなかった結果、こうなってしまった。
 彼女の心を、弄んでしまったのだ。

 と、僕が喋ろうとするとガラリアはかかとで僕の膝を蹴る。

「痛った……」

「おおー我が弟子よ、ちょうど今から迎えに行こうと思っていたのだよ」

「……どうしてリゼルさんが先生の工房から出てくるんですか?」

「うむ、最もだ。歩きながら話そう」

「今話してください」

「おお、そうか、そうだな。まあ端的に言えばだ、彼はボクの護衛として雇ったのだ」

「護衛、ですか……?」

 流石はガラリアだ。
 一時危なかった気がしたが話の主導権を握り始めた。

「昨日の襲撃。あれはボクを狙っていたのはキミも把握しているな?」

「はい。なのでリゼルさんと話し合ってからガラリア先生の工房に向かう予定でした。……それなのに――」

「うむ弟子よ。行動が遅いぞ。話し合っている間にボクが殺されたらどうするつもりかね」

「それは――」

「状況を判断してから行動すべき時もある。だが今回はまず先に行動すべき時なのだ。ボクの言っていることはわかるね?」

「わ、わかります」

「ん、よろしい。さてボクたちはこれから[商人ギルド]へと向かう。キミには工房の留守を任せたい」

「え、留守をですか?」

「うむ。ボクのいない間に潜まれるのは怖い。キミがいてくれれば安心だ」

 すると、エメリアは救いを求めるように僕を見た。
 な、何とかしたほうがいいのだろうか。
 いやなんとかするってなんだ。
 僕に何ができるというのだ。
 しかし、このまま捨て置くというのはあまりにも……。

「あの、エメリアさんは――うっ」

 ガラリアの拳が僕の下腹部にお見舞いされた。

 予想していなかった痛みで僕は膝を付きうずくまる。

「い、痛ったぁ……」

「リ、リゼルさん大丈夫ですか!?……ガラリア先生! さっきからリゼルさんに何してるんですか!」

「これはボクを守るための訓練だ。リゼル氏の同意は得ている」

 ……得てない。
 そんな訓練しらない。
 だが、僕は言うしか無かった。

「そ、そうなんです、エメリアさん……。だ、だから、大丈夫……」

「うむ。鍛錬は時として辛く厳しいのだ。ここで手を差し伸べてはいけない」

「で、でも……」

「リゼル氏を更に強くするためだ。ボクが嘘を教えたことがあるかね?」

「……無いです」

「うむ。ではエメリア氏、工房を任せた。ここはボクの帰る場所だ」

「……はい」

「ようし。行くぞ立てリゼル氏」

 かくして、僕は腹部をさすりながら[商人ギルド]へ向かった。


 ※


「これはこれはガラリア様! よくいらしてくださいました!」

「うむ、くるしゅうないぞ。さあもてなせ」

 [商人ギルド]に到着すると、早速ギルド長が出迎えてくれた。
 そしてあっという間にギルド長室まで案内される。
 権力の力を思い知り、僕はごくりとつばを飲み込んだ。

 ここへ来てようやく、このちんちくりんで我儘なガラリアが、あの世界最高峰[帝級]の付呪師ガラリアなのだと再認識させられたのだ。

 高そうなカップに注がれた高そうなお茶がガラリアと僕に出される。
 また僕はごくりとつばを飲み込んだ。

 手を付けて良いのだろうか。

「ミルクと砂糖たくさんいれてくれたか?」

「はいもちろん。ガラリア先生の好みはちゃんと把握しております」

「うむ。さすがだくるしゅうないぞ」

「ぜひ今後ともご贔屓に……」

「もちろんだとも。赤子の頃から知ってるキミをボクが蔑ろにすると思うかね?」

 ギルド長は苦笑すると、ガラリアは得意げな顔になる。

「まあ、そういうことだ」

 ふと、ギルド長と目が合う。

 ここは、僕から挨拶すべきだろう。

 僕はソファーから立ち上がり、深々と頭を下げた。

「名乗るのが遅れてしまい申し訳ありません、僕は――」

「待て名乗るな馬鹿者」

「え、何で……」

 と、ガラリアはギルド長に挑発的な笑みを向ける。

「さあ、当ててみたまえ」

 ギルド長は少しばかり考え、僕の足元から頭の先までを舐めるように見る。
 ちょっと恥ずかしい。

 だが、理屈はわかった。
 ギルド長もまた、ガラリアにとっては可愛い可愛い教え子の一人なのだ。
 こうしてガラリアは、常日頃から彼らをテストしているのだろう。

「……リゼル・ブラウン氏、でよろしいですかな?」

 凄い、当てられてしまった。
 僕がこの街に来てから、まだ一日しか経っていないというのに……。

 ガラリアはいつものように、にまぁーっと笑みを浮かべる。

「よおーし流石だ。撫でてやろう」

「も、もうそのような年ではございません……」

「遠慮するな、年の差は変わってないぞ」

「い、いえ、自分は商談に……ああ、ちょっと先生やめて!」

「うははははーういやつよー」

 僕はいい年をしたギルド長が外見幼子のガラリアに撫で回されるのをしばらく眺めている羽目になった。


 ややあって、ギルド長はこほんと咳払いをしながら身だしなみを整える。

「[冒険者ギルド]からリゼル・ブラウンなる付呪師の魔道具を買わせろと催促が来ておりましてな」

 どうやら、彼らは本当にすぐ動いてくれたらしい。

「ですが[商人ギルド]と致しましては、荒唐無稽な噂話を根拠に氏を承認するわけにはいきませんので……」

「どんな噂かね?」

 ガラリアが問う。

「やれ八体のキングベヒーモスを一撃で葬ったとか、やれ空を舞い千の魔獣を蹴散らしたとか、果には死者まで蘇らせたとか……」

 こっちにまで尾ひれのついた噂が来ているのか……。
 微妙に当たっているだけにたちが悪い。

 僕は、間違いを訂正しながら〈サウスラン〉と道中での出来事を説明した。

「……キングベヒーモスの素材は、確かに一体分でありましたな」

 ギルド長が考え込む。

 ふと、ガラリアが僕に言った。

「そういえばリゼル氏、キミの素材選択は決めたかね?」

 冒険者は同じパーティで報酬を山分けにするのがルールだ。
 だが僕は特別に、キングベヒーモスの素材を多めに貰えるらしい。

 もう何を選ぶのかは、決めていた。

「皮を、もらうつもりです」

「ほう、その心は」

「[飛行]と[浮遊]の付呪を完成させたいんです」

 この街に来る道中で作ったものは、改良を重ねた結果空を飛ぶというよりも短距離の[跳躍]に近いものとなってしまった。
 遺跡の内部での戦いでは[身体強化]の補助として大いに役立ってくれたが……。

「この二つの付呪が確立できれば、大昔のように空を飛ぶ船だってできると思うんです」

 そうすれば、人の交流はもっと活発になる。
 姉さんがいる僕の故郷だって、きっと賑わってくれるはずだ。

 ギルド長は真面目な顔で僕を見る。

「何か……付呪をしていただけますかな?」

 僕の力量を実際の目で判断したい、ということなのだろうか。
 ならば受けて立とう。

「わかりました。何にしましょう?」

「……瞬間火力が得意とのことですので、やはり杖が良いでしょう。確か――」

「おーそうだキミ、確か[世界樹の杖]があったな?」

 なんと、あの素晴らしい杖が……。
 エメリアからもらったものは本当に惜しい事をした。
 だが、もう一度あれと同じものに付呪をできるのならば光栄だ。

 だがギルド長の顔は青ざめている。

「せ、先生それは……」

「よーし、けってーい。さあ今すぐ持ってきたまえ」

「いえいえ先生。あの杖はガラリア先生への依頼ですので……」

「ではボクからリゼル氏に依頼しよう。任せたぞリゼル氏」

「いいいやいやガラリア先生! [共和国]正規軍からの直接の依頼ですぞ!?」

「それがどうしたというのだ。ボクはボクの信じたものを信じる」

「いや先生! あの[世界樹の杖]は他のものより大変貴重な一品でして……」

「おおー良かったなリゼル氏、キミの力量をフルに活用できるぞ」

「先生! 先生! 万が一があれば[商人ギルド]は信用を失ってしまいます!」

「ボクだって失敗する時はするのだ。そうなったらキミたちがボクを切り離せば良い」

「くっ……ガラリア先生は、いつも私に試練をお与えになる……!」

「突破できぬ試練を与えたことは無い。さあ持ってきたまえ」

 ギルド長は観念し、深い溜め息をついてから一度部屋の外へと出ていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

処理中です...