生贄の巫女は祈りを捧げる~輝国禍乱編~

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忍び寄る影1

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”お・・がいけ・・か”

誰?

誰かがそっと語りかけてくる。

”守国から・・・れし・・・み・・よ”

”・・・に・・・にえに・・・覚悟・・・のか”

覚悟?何のこと?

すーっともやが晴れていくような感覚がし次第に目が覚める。

さっきのは一体何?

夢の中で聞こえた声に聞き覚えはないはずなのに不思議と恐怖などはなかった。

もしかして私が巫女だから”こちらのもの”ではないものと意識がつながったとか?

いや、ここに来てまだ日が浅い。

そういうことは何年もその土地にいた者に起こる現象だと聞いている。

きっと夢に違いない。

そう結論付け朝の準備に取り掛かった。

「それはもしかすると耀王かもしれませんね」

「ようおう?」

聞きなじみない言葉に首を傾げる。

あの夢を見てから数日間、毎日同じ人が夢に出てきて何かを語りかけてくる。

最初は気にしていなかったが、こう何日も続くと不信感が募り今日ついに諭按さんに相談したのだ。

「耀王とは輝国の国神の名です。守国にもいらっしゃると思いますが概ね概念は同じです」

国神。

人々の信仰により各国に生れ、その恩恵を民に与え国を守る神の事だ。

守国にも国神はいるが対話ができるのはその器に選ばれた者のみ。

器になりたいからと言ってなれるものではなく選ばれる基準も神々によって異なると聞いている。

「では、その国神である耀王は何故私の夢に現れたのでしょうか?」

輝国の人間が見るならまだしも守国の巫女である自分が見るのは違うのでは?

そう疑問に思い尋ねると諭按さんは飲んでいた茶器を一度置き、どこか遠くを見つめる。

「私は耀王と対話をしたことはありませんが代々器に選ばれた者達の話を聞くと、正直ではないが国想いで我々人間にも興味を持っている神だと言われていました。もしかすると守国より来た祈様の事が気になり夢で見に来たのかもしれませんね」

そう言いつつ茶器に口をつけ再びお茶を飲み始める。

そういうものなの?

諭按さんが嘘を言っているようには見えない。

もしかしたら本当に様子を見に来てくれているだけなのかもしれない。

「さて、祈様。今日は手伝っていただきたいことがありますので、話はここまでにして参りましょう」

「あ、はい」

先程まで飲んでいた茶器をさっと片付け部屋を出ていこうとする諭按さんに急いで着いて行く。

何だか話をそらされた気がしなくもないが、耀王が出てくること自体自分に悪影響があるというわけではなさそうなのでもう少し様子を見ることにした。

また、時間が空いた時にでも耀王の事について聞いてみよう。

「・・・・・・・・・」

そんな祈の考えとは裏腹にこの状況を何者かが聞き耳を立てているとはこの時の祈は知る由もなかった。
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