生贄の巫女は祈りを捧げる~輝国禍乱編~

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四席と呼ばれる者達4

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「こうして、このような文化が栄えたと言われています」

「つまり、それが今のこの地域の部分に繋がっている・・・ということですね」

「その通りです」

さらにさらに数日後、今日は書庫で文献や地図を見ながら諭按さんから詳細な歴史について学んでいると廊下の方で何人もの人が行ったり来たりしているような足音が聞こえてきた。

「隊長ー!何処ですかー!」

「お願いですから出てきてくださーい!」

近くで声が聞こえてきたと思ったら2人の兵士が突然書庫に入ってきた。

一体なに?

中に人がいるかどうかも確認せず扉を開けているところを見ると相当焦っているようだ。

「何事ですか、騒々しい」

「これは諭按様、お騒がせして申し訳ありません。実は隊長がいなくなりまして・・・」

「はぁ・・・またですか?」

持っていた本を閉じると諭按さんはこめかみを押さえながら溜息をつく。

「仕方ありませんね、お手伝いします。祈様、申し訳ございません。少しの間席を外させていただきます」

「私もお手伝いしましょうか?」

入ってきた兵士を引き連れ書庫を出ていこうとする諭按さんを呼び止める。

またということはこれが通常なのだろう。

「人をお探しなら私の命うつしを使えばきっとすぐに見つかると思いますよ」

物や人探しは得意分野だ。

そう提案してみたが諭按さんには首を横に振られてしまった。

「いいえ、このような事に祈様のお力を使っていただくわけにはいきません。それに・・・」

一呼吸置いた後の鋭い目つきに少し身震いしてしまう。

「あの子にはそろそろ自覚をもってもらわなくてはいけませんので」

自習でもなさっていてください。と言い残し今度こそ書庫から出て行った。

顔は笑ってるのに目が笑ってなかった。

「諭按さんがあんな顔をするなんて・・・」

その背中からはまるで般若が見えてきそうなほどの雰囲気を感じた。

前に街から帰ってきた時とは比べ物にならないくらいの静かなる怒りだった。

さ、さ~て復習でもしておこうかな。

これ以上先に進めないのでは仕方ないので近くに置いてあった文献を見る。

どれも難しそう、さてどれにするか・・・。

悩みに悩みぬいて気を抜いていた時、突然上から何か降ってきた。

「っ!?」

「よっと、こんにちは♪」

「こ、こんにちは?」

思わず条件反射で挨拶をしてしまったが上から人が降ってくることなんてあるのだろうか。

綺麗に机の上に着した女の子は肩にかかるくらいの髪は濃い橙色で少しくせがついており、見た目では私とあまり年が変わらないような印象を受けた。

でも、何であんなところから?

上を見上げても天井しかない。それもそうだ、からくり屋敷でもあるまいし普通の天井に決まっている。

じゃあ、どうやって?

「あの、どうして上から?」

「ちょっとある人達から逃げててね!」

答えになっていないが逃げているということは、もしかすると先程の兵士が探していた”隊長”なのかもしれない。

でも、何で隊長が兵士から逃げてるの?

疑問は疑問を呼ぶばかりなので率直に聞いてみる。

「どうして逃げてらっしゃるんですか?」

「どうしてって・・・会議がイヤだから?」

「そう、ですか・・・」

逃げているくらいだからもう少し重大な理由かと身構えたが何ともくだらな・・・小さな理由に少し呆気にとられつつも彼女の話に耳を傾ける。

こちらが聞く姿勢に入ったことが分かったのか彼女は机の上に胡坐をかいて話し始める。

「毎回毎回、なんにも変りもしない調査結果聞いてるのも飽きたし。だからって適当に聞いてたら意見求められるしで疲れてさ。だからちょっとした息抜き?で、会議で出なかったらすぐ見つかるし。まったくうちの隊のやつらは優秀で困るっていうか」

凄くしゃべる人だな・・・。

さっきから相槌を打つ暇もなくどんどん話を続けられる。

会議が嫌なのは分かったが、それが会議に出なくてもいい理由にはならないはず。隊長という役職があるならなおさら兵士のお手本になるべきだろう。

しかし、最近どこかで会議に出ず一緒に街に出かけた国王を思い出しなんと声をかければいいのか悩んでしまう。

すると、勢いよくというには勢いがよすぎるくらいの強さで書庫の扉が開いた。

「見つけましたよ!」

「うわぁっ!」

そこには諭按さんと先程の2人の兵士が立っており、諭按さんによって女の子は首根っこを掴まれ引きずられていく。

「さあ、会議に行きますよ!」

「いーやー!!」

「つべこべ言わずに来なさい!」

兵士達も慣れているのか暴れる彼女の身体を持ち上げ運んでいく。

まるで神輿みたい。

彼女の状態に故郷の祭りを思い出し懐かしくなったが、その様子はまったく楽しそうなものではない。

身体を反転させながらこちらに助けを求めるような目をしているが自業自得だろう。

「頑張ってください」

扉を出ていく寸前、連れていかれる彼女に伝えたが扉が閉まった後、裏切り者ー!という訳の分からない声が聞こえてきたので、聞こえなかったふりをしてそっと文献のを開いた。





「ねぇ、あの子が光焔が言ってた巫女?」

まるで子猫が親猫に連れていかれるように引きずられながら女の子は諭按に尋ねる。

「ええ、とても素直で勉強熱心な方ですよ。貴女と違って」

「最後余計でしょ!」

「そろそろ疲れたので自分で歩いてください」

襟元を掴んでいた手を急に離したせいで女の子は後ろに倒れそうになったが、上手く反動をつけて立ち上がる。

「よっと・・・諭按もおばさんだもんね~」

自分で歩き始めた女の子は茶化しながら諭按の隣に並ぶ。

「余計なお世話ですよ」

「本当の事でしょ?てか、巫女さんって凄いの?」

興味があるのかないのか・・・。

唐突に尋ねてきたことに対して諭按は呆れながらもこたえる。

「現在、守国で一番力の強い巫女は国王衛山様の奥様である鏡花単語きょうか様だと言われていますが、その鏡花様に引けを取らないほどの才能の持ち主と聞いています」

「ふ~ん」

自分から聞いておきながらあまり興味のなさそうな受け答えをされたが、その顔はどこか楽しそうに見える。

と、次の瞬間女の子は窓を開け颯爽と飛び降りる。

一瞬の出来事に呆気を取られたが急いで窓に近づき下を見る。

勢いよく飛び降りたにもかかわらず、華麗に着地をして見せたことに感心しそうになる。

「こら!待ちなさい!」

「待ったないよーだ!」

「まったく・・・」

速足でかけていく女の子を見送り諭按は今日何度目か分からない溜息をついた。
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