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四席と呼ばれる者達3
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さらに数日後、今日は諭按さんが急遽街に視察に行くことになったので1人で自習をすることになった私は落ち着いた場所を探すため、書庫に向かっていた。
あそこには様々な資料や古文書があるし、あまり人の出入りもないから落ち着いて自習ができるのよね。
さてと、今日は何について調べよう。と考えながら歩いていると、壁に手をついてしゃがみ込んでいる侍女の姿を発見した。
「大丈夫ですか?」
急いで駆け寄り顔を覗き込みながら尋ねる。
「はぁ・・・はぁ・・・巫女様。大丈、夫です」
「そんなこと言って、ふらついてるじゃないですか」
「いえ、このくらい・・・」
無理して立ち上がろうとする侍女の身体をどうにか支える。
顔色は悪いけどそこまで呼吸は荒くない。
早くどこかで休憩できる場所に連れて行かないと・・・。
「巫女様、私、1人で歩けますので・・・」
「さっきから足が覚束ないのに何言ってるんですか。ひとまず、休憩できる場所までお連れしますね。確かこの先に医務室がありましたよね」
「はい」
「それではそこまでお連れしますね」
「申し訳、ございません」
「いえ、困ったときはお互い様ですから」
行き先を確認し、侍女の左手を自分の肩に回しゆっくり歩きだす。
先程いた廊下を突き進み2つ目の角を曲がると、とある部屋を朱色の羽織を身に着けた人達が忙しなく出入りしているのが見えた。
「ここ医務室ですか?」
「はい・・・。巫女様、私はここで大丈夫ですので。連れてきていただきありがとうございました」
「分かりました。お大事にしてくださいね」
本当は医者に引き渡すまでいた方がいいのだろうが、彼女がそこまで望んでいないような気がしたのでそっと肩から腕を下す。
侍女が中に入るのを確認し、また書庫へ向かおうとしたその時。
「祈様?」
「李桜さん?」
急に名前を呼ばれ振り向くと手に書類を抱えた李桜さんがこちらに歩いてきた。
「どこか具合でも悪いのですか?」
「いえ、私は何ともありません。侍女の方が具合が悪そうでしたのでお連れしたんです」
「そうでしたか。それはお手数をおかけしました」
深々とお辞儀する李桜さんにつられ思わず頭を下げる。
「いえ、何かあったときはお互い様ですから。ところで、李桜さんは何故こちらに?」
書類を持っているところを見ると医務室に用があるようだけど。
「私は国王の補佐だけでなく救護の仕事もしていますので、たまにここで書類仕事をしているんですよ」
「そうだったんですね」
「そう言えば、祈様は医療の知識もあおりだとか・・・。お時間がある時で構いませんので、守国の医療についてご教授いただけませんか?」
「私でよければいつでもお話させていただきます。私自身も輝国の医療には興味がありましたので、そちらについても教えていただきたいです」
「ありがとうございます。では、時間がある時にこちらも勉強会ですね」
「はい」
ご自分の国の医療だけでなく他国の医療にまで興味を持たれて学習されるなんて・・・。
手に入るものが違うだけで治療方法は変わってくる。きっと他国の医療方法を学び自国に取り入れる方法を探るのだろう。
そう思うと本当に尊敬に値する人だと改めて感心する。
「それでは、私は書庫に向かいますのでここで失礼します」
「はい。あまり無理をなされないでくださいね」
「大丈夫ですよ。体力には自信がありますから」
「いえ、根を詰めすぎて祈様に何かあった場合、国王を止める方が大変ですから・・・」
「そんな、李桜さんのお手を煩わせることなんかないですよ」
とは言ったものの、李桜さんの目が少し疲れたような何とも言えない目をしていたのは気にしないでおこう。
「それでは・・・」
一応李桜さんに声をかけ今度こそ医務室を後にした。
「李桜様、いかがされましたか?巫女様がいらっしゃったようですが・・・」
「星灯。おや、祈様は?」
李桜に声をかけた女性、星灯と呼ばれた人物はそっと李桜の隣に立つ。
「先程出ていかれましたよ。あなたが遠い目をしている間に」
「そんな目をしていましたか?」
「していました」
かけていた眼鏡を少し押し見えた星灯の目が鋭く光る。
「そんなに怖い顔をしないでください。折角の綺麗な顔が台無しですよ」
「冗談も休み休みにしてください」
「冗談ではないというのに」
「それにしても巫女様は変わったお方ですね。侍女を医務室まで運んでくるなんて」
まるで警戒心がないとでも言いたげな目だがそう思うのも仕方ない。
ここは守国ではない。いつどこで刺客が潜んでいるとも分からない。
「ですが、そこがあの方の良いところなのでしょう」
祈様の人柄もそうですが、守国の国民性とも言えるでしょうけど。
有無を言わさぬ笑顔に多少引きつきながらも星灯は持っていた資料を李桜の持っていた資料に追加する。
「左様ですか・・・。それよりも李桜様、早くこの書類にも目を通してくださいね」
「はいはい、分かりましたよ」
あそこには様々な資料や古文書があるし、あまり人の出入りもないから落ち着いて自習ができるのよね。
さてと、今日は何について調べよう。と考えながら歩いていると、壁に手をついてしゃがみ込んでいる侍女の姿を発見した。
「大丈夫ですか?」
急いで駆け寄り顔を覗き込みながら尋ねる。
「はぁ・・・はぁ・・・巫女様。大丈、夫です」
「そんなこと言って、ふらついてるじゃないですか」
「いえ、このくらい・・・」
無理して立ち上がろうとする侍女の身体をどうにか支える。
顔色は悪いけどそこまで呼吸は荒くない。
早くどこかで休憩できる場所に連れて行かないと・・・。
「巫女様、私、1人で歩けますので・・・」
「さっきから足が覚束ないのに何言ってるんですか。ひとまず、休憩できる場所までお連れしますね。確かこの先に医務室がありましたよね」
「はい」
「それではそこまでお連れしますね」
「申し訳、ございません」
「いえ、困ったときはお互い様ですから」
行き先を確認し、侍女の左手を自分の肩に回しゆっくり歩きだす。
先程いた廊下を突き進み2つ目の角を曲がると、とある部屋を朱色の羽織を身に着けた人達が忙しなく出入りしているのが見えた。
「ここ医務室ですか?」
「はい・・・。巫女様、私はここで大丈夫ですので。連れてきていただきありがとうございました」
「分かりました。お大事にしてくださいね」
本当は医者に引き渡すまでいた方がいいのだろうが、彼女がそこまで望んでいないような気がしたのでそっと肩から腕を下す。
侍女が中に入るのを確認し、また書庫へ向かおうとしたその時。
「祈様?」
「李桜さん?」
急に名前を呼ばれ振り向くと手に書類を抱えた李桜さんがこちらに歩いてきた。
「どこか具合でも悪いのですか?」
「いえ、私は何ともありません。侍女の方が具合が悪そうでしたのでお連れしたんです」
「そうでしたか。それはお手数をおかけしました」
深々とお辞儀する李桜さんにつられ思わず頭を下げる。
「いえ、何かあったときはお互い様ですから。ところで、李桜さんは何故こちらに?」
書類を持っているところを見ると医務室に用があるようだけど。
「私は国王の補佐だけでなく救護の仕事もしていますので、たまにここで書類仕事をしているんですよ」
「そうだったんですね」
「そう言えば、祈様は医療の知識もあおりだとか・・・。お時間がある時で構いませんので、守国の医療についてご教授いただけませんか?」
「私でよければいつでもお話させていただきます。私自身も輝国の医療には興味がありましたので、そちらについても教えていただきたいです」
「ありがとうございます。では、時間がある時にこちらも勉強会ですね」
「はい」
ご自分の国の医療だけでなく他国の医療にまで興味を持たれて学習されるなんて・・・。
手に入るものが違うだけで治療方法は変わってくる。きっと他国の医療方法を学び自国に取り入れる方法を探るのだろう。
そう思うと本当に尊敬に値する人だと改めて感心する。
「それでは、私は書庫に向かいますのでここで失礼します」
「はい。あまり無理をなされないでくださいね」
「大丈夫ですよ。体力には自信がありますから」
「いえ、根を詰めすぎて祈様に何かあった場合、国王を止める方が大変ですから・・・」
「そんな、李桜さんのお手を煩わせることなんかないですよ」
とは言ったものの、李桜さんの目が少し疲れたような何とも言えない目をしていたのは気にしないでおこう。
「それでは・・・」
一応李桜さんに声をかけ今度こそ医務室を後にした。
「李桜様、いかがされましたか?巫女様がいらっしゃったようですが・・・」
「星灯。おや、祈様は?」
李桜に声をかけた女性、星灯と呼ばれた人物はそっと李桜の隣に立つ。
「先程出ていかれましたよ。あなたが遠い目をしている間に」
「そんな目をしていましたか?」
「していました」
かけていた眼鏡を少し押し見えた星灯の目が鋭く光る。
「そんなに怖い顔をしないでください。折角の綺麗な顔が台無しですよ」
「冗談も休み休みにしてください」
「冗談ではないというのに」
「それにしても巫女様は変わったお方ですね。侍女を医務室まで運んでくるなんて」
まるで警戒心がないとでも言いたげな目だがそう思うのも仕方ない。
ここは守国ではない。いつどこで刺客が潜んでいるとも分からない。
「ですが、そこがあの方の良いところなのでしょう」
祈様の人柄もそうですが、守国の国民性とも言えるでしょうけど。
有無を言わさぬ笑顔に多少引きつきながらも星灯は持っていた資料を李桜の持っていた資料に追加する。
「左様ですか・・・。それよりも李桜様、早くこの書類にも目を通してくださいね」
「はいはい、分かりましたよ」
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