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守国から来た巫女10
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「巫女殿、着いたぞ」
国王様の声が聞こえ目を開けると、そこはどこかの小路のようだった。
見たとこと輝国内の小路なのだろうが、舞踏場からここまでほんの一瞬で移動するなんて不可能だ。
”普通なら”
「もしかして命うつしですか?」
「移動方法か?ああ、オレの命うつしだ」
国王様の命字は”光焔”、つまり光と焔(ほのお)。
光のような速さで移動することができ、焔を自在に操ることができるらしい。
「光のほうは案外早く習得できたが焔はそうはいかなくてな・・・」
何度か火傷をして今でもその傷が残ってるんだと話してくれる。
今まで国王様とこんな風に話すことがなかったから何だか新鮮に感じる。
「さて、せっかく街に来たんだいろいろと見て回ろう!」
「はい」
案内されるがまま前を歩く国王様の後をついていく。
小路から出ると先程までの静けさとは打って変わって賑やかな情景が目に飛び込んできた。
「凄い・・・」
あまりの賑やかさに息をのむ。
色とりどりの装飾品の店や見たこともない食べ物、人も多く最初にここを通った時よりも賑わいを見せており驚いてしまった。
「祭りがそんなに珍しいか?」
「今まで守国の祭りしか見たことがなかったものですから。こんなに大勢の人が集まっている祭りは初めてです!」
「そうか」
「はい、連れてきていただきありがとうございます!」
柄にもなく興奮して勢いよく国王様に感想を伝える。
少しはしたなかっただろうか・・・。
食い気味に国王様に答えてしまったがまあいいだろう。
「・・・」
浮かれている私とは違い国王様は何故か呆けた顔をしていたが気にせず祭りを見て回る。
それにしても、本当に輝国にはいろいろなものが集まってくるのだと改めて感じる。
「巫女殿これは食べたことあるか?」
「これは何ですか?」
とある露店の前で足を止め、そこに置かれている食べ物を指さす。
焼きたてのそれは小麦粉を焼いたような匂いがし、赤いものがぬってある食べ物だ。
「これはピザと言ってな、泉国(せんこく)でよく食べられている食べ物だ。店主、ピザの種類はこれだけか?」
「はい。ここまで色々な材料を持ってくるのは一苦労なので最低限の物のみ持ち込んで調理しております」
「泉国からここまでの道はだいぶ整地されているはずだがまだ移動は困難か?」
「道はだいぶ綺麗になりましたが、道中でたまに賊が出ますので・・・」
泉国の話から道中の状況を聞き出してしまうなんて、やはりこの方は優秀な方なのだと改めて実感する。
「そうか。では、このピザを2つ貰おう」
「ありがとうございます」
店主はお金を受け取るとピザを袋に入れ始めた。
「国王様、申し訳ございません。今手持ちがありませんので戻りましたらお返しします。おいくらでしたか?」
「必要ない。これは巫女殿が輝国へ来てくれたことへの礼みたいなものだからな。まあ、礼にしては安いかもしれんが」
「お待たせいたしました」
ピザを受け取り店をあとにする。
「さあ、食べてくれ!」
「では、いただきます」
お金を受け取ってもらえないことには少し引け目を感じるがこのピザから薫る匂いには抗えそうにない。
「!!」
「どうだ?」
「とても美味しいです!!」
「そうだろ!」
初めて食べたがとても美味しい!材料は守国にもありそうなものばかりだがこういった食べ物はない。
文化だけでなく取り扱っている食まで違うなんて、さすが貿易を主に行っている国だけある。
その後も国王様は様々なものを教えてくれた。
辺り一面砂漠で囲まれている砂国(さこく)では肌触りのいい高級感あふれる布が人気だとか、水の国とも呼ばれる泉国は様々な色をしているガラスの工芸品が人気だとか横を通り過ぎるだけでどこの国の何なのか詳細に説明してくれる。
お調子者な人かと思ってたけど思っていたよりも博識なんだ。
それからもいろいろと説明していたがある店の前で大きな声で呼び止められた。
「あら、光焔様!また王宮を抜け出してきたんですか?」
「人聞きの悪いことを言わないでくれ。今日は祭りの視察に来たんだ」
「物は言いようですね。で、そちらのお嬢さんは?」
女性は国王様相手に冗談を言いながらこちらにも目を向けてくる。
「紹介する。この度、守国から来てくださった巫女の神崎祈殿だ」
「よろしくお願いいたします」
「まあ!噂には聞いていたけどとても可愛らしい方じゃないですか!あたしは忠菊花。こちらこそよろしくね!」
そう言ってにこりと笑う菊花さんはここで花茶というお茶屋を営んでいるという。
「はい、巫女様。お近づきの印にどうぞ」
菊花さんは近くにあった棚から何かを取り出しこちらに渡してきた。
「これは?」
「春黄菊の茶葉だよ。飲むと心が落ち着くから飲みな!」
貰った包みを開けてみると小さな黄色と白の花の茶葉が入っていた。
これも初めて見るお茶だ。淹れるのが楽しみ!
「ありがとうございます。でも、よろしいのですか?」
「いいの!いいの!光焔様が四席以外の人を連れてくるなんて珍しいからね」
四席?四席って確か・・・。
「貰っておけ、巫女殿。菊花は押しが強いから断ると倍になって帰ってくるぞ」
「人聞きの悪い。おせっかいと言ってください」
「分かりました。では、お近づきの印にいただきますね」
「そうしておくれ」
「仕事中に悪いな。また改めてくる」
「そうですね。そろそろ李桜様が探しに来そうですから戻られた方がいいですね」
今までもこういうことがあったのか。
菊花さんの物言いに対し国王様は少しぎこちない笑顔を浮かべている。
「それもそうだな。巫女殿、そろそろ戻るとしよう」
「はい。菊花さん、また来ます」
私は菊花さんに一礼して国王様と一緒に店を出た。
国王様の声が聞こえ目を開けると、そこはどこかの小路のようだった。
見たとこと輝国内の小路なのだろうが、舞踏場からここまでほんの一瞬で移動するなんて不可能だ。
”普通なら”
「もしかして命うつしですか?」
「移動方法か?ああ、オレの命うつしだ」
国王様の命字は”光焔”、つまり光と焔(ほのお)。
光のような速さで移動することができ、焔を自在に操ることができるらしい。
「光のほうは案外早く習得できたが焔はそうはいかなくてな・・・」
何度か火傷をして今でもその傷が残ってるんだと話してくれる。
今まで国王様とこんな風に話すことがなかったから何だか新鮮に感じる。
「さて、せっかく街に来たんだいろいろと見て回ろう!」
「はい」
案内されるがまま前を歩く国王様の後をついていく。
小路から出ると先程までの静けさとは打って変わって賑やかな情景が目に飛び込んできた。
「凄い・・・」
あまりの賑やかさに息をのむ。
色とりどりの装飾品の店や見たこともない食べ物、人も多く最初にここを通った時よりも賑わいを見せており驚いてしまった。
「祭りがそんなに珍しいか?」
「今まで守国の祭りしか見たことがなかったものですから。こんなに大勢の人が集まっている祭りは初めてです!」
「そうか」
「はい、連れてきていただきありがとうございます!」
柄にもなく興奮して勢いよく国王様に感想を伝える。
少しはしたなかっただろうか・・・。
食い気味に国王様に答えてしまったがまあいいだろう。
「・・・」
浮かれている私とは違い国王様は何故か呆けた顔をしていたが気にせず祭りを見て回る。
それにしても、本当に輝国にはいろいろなものが集まってくるのだと改めて感じる。
「巫女殿これは食べたことあるか?」
「これは何ですか?」
とある露店の前で足を止め、そこに置かれている食べ物を指さす。
焼きたてのそれは小麦粉を焼いたような匂いがし、赤いものがぬってある食べ物だ。
「これはピザと言ってな、泉国(せんこく)でよく食べられている食べ物だ。店主、ピザの種類はこれだけか?」
「はい。ここまで色々な材料を持ってくるのは一苦労なので最低限の物のみ持ち込んで調理しております」
「泉国からここまでの道はだいぶ整地されているはずだがまだ移動は困難か?」
「道はだいぶ綺麗になりましたが、道中でたまに賊が出ますので・・・」
泉国の話から道中の状況を聞き出してしまうなんて、やはりこの方は優秀な方なのだと改めて実感する。
「そうか。では、このピザを2つ貰おう」
「ありがとうございます」
店主はお金を受け取るとピザを袋に入れ始めた。
「国王様、申し訳ございません。今手持ちがありませんので戻りましたらお返しします。おいくらでしたか?」
「必要ない。これは巫女殿が輝国へ来てくれたことへの礼みたいなものだからな。まあ、礼にしては安いかもしれんが」
「お待たせいたしました」
ピザを受け取り店をあとにする。
「さあ、食べてくれ!」
「では、いただきます」
お金を受け取ってもらえないことには少し引け目を感じるがこのピザから薫る匂いには抗えそうにない。
「!!」
「どうだ?」
「とても美味しいです!!」
「そうだろ!」
初めて食べたがとても美味しい!材料は守国にもありそうなものばかりだがこういった食べ物はない。
文化だけでなく取り扱っている食まで違うなんて、さすが貿易を主に行っている国だけある。
その後も国王様は様々なものを教えてくれた。
辺り一面砂漠で囲まれている砂国(さこく)では肌触りのいい高級感あふれる布が人気だとか、水の国とも呼ばれる泉国は様々な色をしているガラスの工芸品が人気だとか横を通り過ぎるだけでどこの国の何なのか詳細に説明してくれる。
お調子者な人かと思ってたけど思っていたよりも博識なんだ。
それからもいろいろと説明していたがある店の前で大きな声で呼び止められた。
「あら、光焔様!また王宮を抜け出してきたんですか?」
「人聞きの悪いことを言わないでくれ。今日は祭りの視察に来たんだ」
「物は言いようですね。で、そちらのお嬢さんは?」
女性は国王様相手に冗談を言いながらこちらにも目を向けてくる。
「紹介する。この度、守国から来てくださった巫女の神崎祈殿だ」
「よろしくお願いいたします」
「まあ!噂には聞いていたけどとても可愛らしい方じゃないですか!あたしは忠菊花。こちらこそよろしくね!」
そう言ってにこりと笑う菊花さんはここで花茶というお茶屋を営んでいるという。
「はい、巫女様。お近づきの印にどうぞ」
菊花さんは近くにあった棚から何かを取り出しこちらに渡してきた。
「これは?」
「春黄菊の茶葉だよ。飲むと心が落ち着くから飲みな!」
貰った包みを開けてみると小さな黄色と白の花の茶葉が入っていた。
これも初めて見るお茶だ。淹れるのが楽しみ!
「ありがとうございます。でも、よろしいのですか?」
「いいの!いいの!光焔様が四席以外の人を連れてくるなんて珍しいからね」
四席?四席って確か・・・。
「貰っておけ、巫女殿。菊花は押しが強いから断ると倍になって帰ってくるぞ」
「人聞きの悪い。おせっかいと言ってください」
「分かりました。では、お近づきの印にいただきますね」
「そうしておくれ」
「仕事中に悪いな。また改めてくる」
「そうですね。そろそろ李桜様が探しに来そうですから戻られた方がいいですね」
今までもこういうことがあったのか。
菊花さんの物言いに対し国王様は少しぎこちない笑顔を浮かべている。
「それもそうだな。巫女殿、そろそろ戻るとしよう」
「はい。菊花さん、また来ます」
私は菊花さんに一礼して国王様と一緒に店を出た。
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