生贄の巫女は祈りを捧げる~輝国禍乱編~

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守国から来た巫女4

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「こちらが国王の執務室です」

そこまで談笑をしながら歩いていた李桜さんがとある部屋の前で立ち止まり、扉を軽く叩く。

「国王、守国の巫女様をお連れしました」

「入れ」

中から了承の声を確認した李桜さんが部屋の扉を開け中に入るよう促す。

部屋に入ると奥にある机に座っている一人の男性がいた。

私の姿を確認すると大きな音を立てながら椅子から立ち上がりこちらにやってきた。

「遠路遥々よく来てくださった!オレが輝国の現国王、伯光焔はく こうえんだ」

炎のように紅く長い髪に、想像よりも若い見た目。

思わずじっと国王様の顔を見つめていると国王様は不思議そうに首をかしげる。

「ん?オレの顔に何かついているか?」

「い、いえ!お若いんだなと思いまして」

「国王とはいえ18だからな。まだ若い方か!」

18!?私と2つしか違わないのに、この若さで大国を治めるなんて。

驚きやいろんな感情でどんな顔をしていいか分からなくなる。

「守国より参りました、巫女の神崎祈と申します。これからよろしくお願いいたします」

「こちらこそよろしく頼む。折角来てくださったのに出迎えることができず申し訳なかった。改めて、輝国へようこそ!!」

国王はいきなり私の手を取り握手をしてきた。

「巫女殿が来てくれたおかげで守国の事について深く知ることができる!」

「守国ですか?」

驚く私をよそに国王様は話を続ける。

「輝国と守国がいくら同盟を結んだとはいえ、守国の実態には不明な点が多い。それに”神に護られし国”とはどういうものなのか、とても興味がある!」

目を輝かせながら話す国王様に少し拍子抜けする。

年が若いのもそうだがなんだか一国の国王というよりもそのあたりにいる気さくなお兄さんといった印象を受ける。

今はどちらかというと好きなものの話をしている幼子のようだ。

「それで守国に巫女の派遣を依頼されたのですか?」

「それもあるが、うちの国には6年ほど直属の巫女がいなくてな。必要な時に要請する形でもよかったんだが、急を要するときにいないのは不便でな。それで、他国でも評判のいい守国に依頼をさせてもらったんだ」

「それは、選んでいただき光栄です」

自分の国を褒められるのは素直に嬉しい。

だけど、この圧は止めてほしい。

先程の話の間、ずっと手を握られ熱弁されてはたまったものではない。

「国王、そろそろ祈様の手を放して差し上げてください」

私の困った様子を察してか李桜さんが助け舟を出してくた。

「ああ、すまない!オレは目の前のことに夢中になると周りが見えなくてな」

「は、はぁ・・・」

「申し訳ございません。悪い方ではないのですが」

父上は”変わり者”、相馬は”とにかく元気な人ですよ”と言っていたが本当にそんな人だ。

怖い人よりはまだいいかな。

「こちらでの仕事についてはまた落ち着いたら説明させてもらう。困ったことがあったら李桜にでも尋ねるといい」

「はい、ありがとうございます」

「それと時間が空いた時で構わない。守国のことについて教えてもらってもいいだろうか?」

「それは構いませんが・・・」

「衛山殿から守国の話はいくつか聞いたがどれも興味深いものばかりだった。だが国王が集まると話の内容は自然と政治になってしまうのでなそれ以外の話をお願いしたい」

「かしこまりました。話せる範囲のことでしたら」

「楽しみにしている。さて、長旅で疲れただろう。今日はもう休んでくれ」

巫女殿を案内して差し上げろ。そう李桜さんに言いつけ私を扉の方へ促す。

「よく休まれるといい」

「ありがとうございます」

「では祈様、お部屋にご案内いたします」

私は扉の前で国王様に一礼して部屋を後にした。
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