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守国から来た巫女3
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「ここは主に政治や執務を執り行う朝廷になります」
国王様の元へ行くまでに李桜さんは王宮の中を案内してくれている。
「いかがですか?」
「守国とは建物の造りが違うのでとても興味深いです」
「確かに、文化から異なりますからね。こちらは闘技場です」
次に紹介されたのは闘技場らしい。よく見ると近衛隊と思われる人達が剣や武術の稽古をしている。
守国では剣や武術は舞の一部でも用いるのである程度のことはできるように育てられる。
私は剣や武術はできないことはないが、どちらかと言えば扇を用いる舞の方が得意だったりする。
「祈様は舞がお上手だと伺っておりますが、こちらでも稽古はされますか?」
今度は舞踏場の前で立ち止まり尋ねられる。
巫女としてここに呼ばれている以上舞の練習を怠るわけにはいかない。
「できるなら毎日練習をしたいのですが、どこか練習をさせていただける場所はありますか?」
「承知いたしました。では、こちらの舞踏場をいつでもお使いください」
「よろしいのですか?催事の際に使ったりするのでは?」
思わず目を瞬かせ李桜さんを見上げる。
なんと魅力的な言葉!!ここをいつでも使えるなんて。
嬉しさのあまり顔がゆるむ。
「いえ、こちらは妓女達が舞の練習などをする場ですので催事の際の舞踏場はまた別にありますから」
それに、妓女達には他の舞踏場を使わせますからお構いなく。と言われてしまえばこれ以上何か言うことはない。
妓女達には申し訳ないが他にも練習場所があるのならここは気兼ねなく使わせてもらおう。
「ありがとうございます。まさか舞の練習ができるところがあると思ってもみなかったので嬉しいです」
「巫女にとって舞はとても大切なものだと伺っていましたから。ですがその様子ですとどこか違う場所で練習を考えられていたのですか?」
「実は場所がないようでしたら部屋でなるべく静かに練習しようかと思ってました・・・」
今考えると部屋で練習するのもよくないよね。
たとえ国外からの人間、ましてや巫女だとしても夜に騒音の原因になることはするべきではないか。
「でも、夜はみなさんのご迷惑にもなるでしょうから練習場所をいただけて嬉しいです」
「そうですね。別に夜に練習していただくのは構いませんが、さすがに部屋ですと衛兵達が不審がりますのでお控えください」
顔は笑ってるけど目が笑ってない。これは練習場所をもらっておいてよかったかもしれない・・・。
それから他の場所の説明をしてもらいながら進んでいるととある部屋から声が聞こえてきた。
「輝国は近隣諸国にとって大きな貿易の場所として栄えています。主な貿易国は泉国、砂国・・・」
「ここは何をされているのですか?」
見たところ何やら勉強をしているよう見える。
「ここはこの城で働く者達の子供に教育を行う場です」
「城で直々に教えてらっしゃるんですか?」
「はい。国王のご意向で親の働いているところが見れる場所で教育は行った方がいいとのことで」
「それは次期後継者育成のため・・・ということでしょうか?」
「そうですね。親の働いている様子を見ることで自然と意識が芽生えてきます。国王自身がそうであったようにこの子たちにもそうあってほしいと願ってのことだと思います」
なるほど、次期後継者を育てるため国王は教育にも力を入れているのね。
守国では教育は専門機関があり、そこで一定の年齢になればある程度の教養を叩きこまれる。
では、官僚達以外の子供の教育は?
「この城で働いている方々以外を親に持つ子供達への教育はどうされているのですか?」
「一応教育機関はありますが、輝国は貿易が盛んな国。それぞれの家庭で後継者育成が行われるので、後継者教育以外の教育を受けに行く者は全体の半数もいません」
「そうですか」
つまり専門的なことは得意だがそれ以外は通常以下の教育というわけか。
確かに教育機関に行くとなれば多くの資金が必要になる。裕福な家庭ならいいが全員がそうではないだろう。ましてや貿易が要のこの国で稼ぐために必要な知識は必要だがそれ以外の知識を使う場などあまりないだろう。
「よろしければ、祈様も輝国の教育を受けられますか?」
「えっ?」
「何やら教育に関心があるように感じましたので。折角輝国に来られたのですから我が国について知っていただきたいですし」
いかがでしょう。と聞かれ少し反応に困る。
確かに教育には・・・というより輝国には興味がある。
守国から出たことのない私からしてみれば、ここに来るまでに驚きの連続だった。
それが受けられるのなら・・・ここでの存在意義を見出せるかもしれない。
1年の派遣期間、ただで終わらせるわけにはいかない。
「お願いしてもよろしいでしょうか」
「かしこまりました。こちらで手配をしておきます。詳しいことはまた後日」
「よろしくお願いいたします」
「では、そろそろ城の説明も終わりそうですし国王のところに向かいましょうか」
ついに、対面だ。
先に進む李桜さんの後を追って国王様の元へ向かう。
国王様の元へ行くまでに李桜さんは王宮の中を案内してくれている。
「いかがですか?」
「守国とは建物の造りが違うのでとても興味深いです」
「確かに、文化から異なりますからね。こちらは闘技場です」
次に紹介されたのは闘技場らしい。よく見ると近衛隊と思われる人達が剣や武術の稽古をしている。
守国では剣や武術は舞の一部でも用いるのである程度のことはできるように育てられる。
私は剣や武術はできないことはないが、どちらかと言えば扇を用いる舞の方が得意だったりする。
「祈様は舞がお上手だと伺っておりますが、こちらでも稽古はされますか?」
今度は舞踏場の前で立ち止まり尋ねられる。
巫女としてここに呼ばれている以上舞の練習を怠るわけにはいかない。
「できるなら毎日練習をしたいのですが、どこか練習をさせていただける場所はありますか?」
「承知いたしました。では、こちらの舞踏場をいつでもお使いください」
「よろしいのですか?催事の際に使ったりするのでは?」
思わず目を瞬かせ李桜さんを見上げる。
なんと魅力的な言葉!!ここをいつでも使えるなんて。
嬉しさのあまり顔がゆるむ。
「いえ、こちらは妓女達が舞の練習などをする場ですので催事の際の舞踏場はまた別にありますから」
それに、妓女達には他の舞踏場を使わせますからお構いなく。と言われてしまえばこれ以上何か言うことはない。
妓女達には申し訳ないが他にも練習場所があるのならここは気兼ねなく使わせてもらおう。
「ありがとうございます。まさか舞の練習ができるところがあると思ってもみなかったので嬉しいです」
「巫女にとって舞はとても大切なものだと伺っていましたから。ですがその様子ですとどこか違う場所で練習を考えられていたのですか?」
「実は場所がないようでしたら部屋でなるべく静かに練習しようかと思ってました・・・」
今考えると部屋で練習するのもよくないよね。
たとえ国外からの人間、ましてや巫女だとしても夜に騒音の原因になることはするべきではないか。
「でも、夜はみなさんのご迷惑にもなるでしょうから練習場所をいただけて嬉しいです」
「そうですね。別に夜に練習していただくのは構いませんが、さすがに部屋ですと衛兵達が不審がりますのでお控えください」
顔は笑ってるけど目が笑ってない。これは練習場所をもらっておいてよかったかもしれない・・・。
それから他の場所の説明をしてもらいながら進んでいるととある部屋から声が聞こえてきた。
「輝国は近隣諸国にとって大きな貿易の場所として栄えています。主な貿易国は泉国、砂国・・・」
「ここは何をされているのですか?」
見たところ何やら勉強をしているよう見える。
「ここはこの城で働く者達の子供に教育を行う場です」
「城で直々に教えてらっしゃるんですか?」
「はい。国王のご意向で親の働いているところが見れる場所で教育は行った方がいいとのことで」
「それは次期後継者育成のため・・・ということでしょうか?」
「そうですね。親の働いている様子を見ることで自然と意識が芽生えてきます。国王自身がそうであったようにこの子たちにもそうあってほしいと願ってのことだと思います」
なるほど、次期後継者を育てるため国王は教育にも力を入れているのね。
守国では教育は専門機関があり、そこで一定の年齢になればある程度の教養を叩きこまれる。
では、官僚達以外の子供の教育は?
「この城で働いている方々以外を親に持つ子供達への教育はどうされているのですか?」
「一応教育機関はありますが、輝国は貿易が盛んな国。それぞれの家庭で後継者育成が行われるので、後継者教育以外の教育を受けに行く者は全体の半数もいません」
「そうですか」
つまり専門的なことは得意だがそれ以外は通常以下の教育というわけか。
確かに教育機関に行くとなれば多くの資金が必要になる。裕福な家庭ならいいが全員がそうではないだろう。ましてや貿易が要のこの国で稼ぐために必要な知識は必要だがそれ以外の知識を使う場などあまりないだろう。
「よろしければ、祈様も輝国の教育を受けられますか?」
「えっ?」
「何やら教育に関心があるように感じましたので。折角輝国に来られたのですから我が国について知っていただきたいですし」
いかがでしょう。と聞かれ少し反応に困る。
確かに教育には・・・というより輝国には興味がある。
守国から出たことのない私からしてみれば、ここに来るまでに驚きの連続だった。
それが受けられるのなら・・・ここでの存在意義を見出せるかもしれない。
1年の派遣期間、ただで終わらせるわけにはいかない。
「お願いしてもよろしいでしょうか」
「かしこまりました。こちらで手配をしておきます。詳しいことはまた後日」
「よろしくお願いいたします」
「では、そろそろ城の説明も終わりそうですし国王のところに向かいましょうか」
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