たっくんのひみつ

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
1 / 1

たっくんのひみつ

しおりを挟む
 たっくんは,おばあちゃんがだーいすき。
 いつもいっしょにあそんでいます。

 おばあちゃんは、からだのみぎがわがうごきません。

 ですから、あるくだけでもひとくろう。

 あたまのなかもはんぶんしかないので、
 ものをおぼえるのがにがてですし、
 ことばもじょうずにしゃべれません。

 そとでおしごとをしているむすめふうふのために、おせんたくをして、
 ろくさいになったまごのたっくんをがっこうにいかせて、
 それからおそうじをします。

 ですから、とってもたいへん。
 すぐねむくなってしまうので、
 ふだんはおうちにいて、
 よくおひるねをしています。

 でも、たっくんといるときはちがいます。
 たくさんあそんでくれて、
 やさしくしてくれるのです。

 ときどきたっくんは、だだをこねてがっこうにいきません。

 おとうさんもおかあさんも、おこりませんし、おばちゃんもしかりません。

 がっこうをおやすみしたひ、たっくんは、かならずおばあちゃんとおでかけします。

 ふたえきむこうのスーパーマーケット。
 だいすきなモモタのゲームでいっかいあそんでから、
 おおきなこうえんにいくのが、いつものコース。

 おばあちゃんは、みぎあしをひきずっているので、
 あるくのがとてもおそいです。

 ですから、たっくんは、ちょっとすすんではまって、
 またすすんでは、おばあちゃんをまつのでした。

 そんなじかんもたのしいじかん。
 うえこみにはムシがいますし、
 おもしろいかたちのはっぱがいっぱいだから。

 こうえんは、こどもたちのらくえんです。
 たくさんのゆうぐが、ドーナツのように、ぐるりとならんでいるのです。

 たっくんは、たくさんあるゆうぐをひとつひとつあそんでいって、
 ごしゅうもろくしゅうもまわります。

 ひとつのゆうぐであそぶたびに、
 たっくんはおばあちゃんにてをふりました。
 おばあちゃんもたのしげです。

 おやつのじかんがすぎて、おなかがすくと、
 ふたりでおうちにかえります。

 おばあちゃんは、やっぱりあるくのがおそいので、
 たっくんは、ときどきたちどまってふりかえります。

 めがあうと、おばあちゃんは、いつもニッコリ。

 たっくんは、おばあちゃんをひとりであるかせるのがかわいそうだとおもって、
 てをつなぎにみぎによりました。

 すると、おばあちゃんがいいました。

 「ねえ、たっくん、ひだりがわをあるいてちょうだいな」

 なぜかな? と、おもったたっくんはききました。

 すると、おばあちゃんは、やさしくおしえてくれました。

 「だって、みぎにいると、かわいいたっくんがみえないんだもの」

 たっくんはうれしくなって、ひだりにたちました。

 そのとき、たっくんは、おばあちゃんのみぎめになりたい、とおもいました。

 たっくんがそういったら、おばあちゃんはよろこんで、

 「おばあちゃんはとしだし、からだがうごかないから、とおくにはいけないけれど、
 たっくんがおおきくなったら、いろんなところにりょこうにいって、
 みてきたけしきをたくさんおしえてね」

 と、いいました。

 そのとき、たっくんには、ひとつのひみつができました。

 いつかおばあちゃんをつきにつれていってあげよう、とおもったのです。

 ですが、たっくんはいいませんでした。

 おばあちゃんをびっくりさせたいので、
 いまはないしょにしたのです。

 たっくんは、あおいそらにうっすらとみえるつきをみあげて、
 ニッコリほほえみながら、こころのなかでいいました。

 みかづきじゃないんだよ、まんまるまんげつにいくんだよ。

 おしまい
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...