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第八十一話 空中決戦 ローゼVS竜殺紳士
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何かを諦めたかのように一瞬俯く。そして顔を上げたエミリアは、清々しい笑顔でローゼに微笑みかけた。
「やっちゃってください、ローゼさん。竜殺紳士を倒したら最終回ですよ。だって、伝説の剣が手に入るんですもの。この物語の隠れミッションじゃないですか」
違うよ。メインミッションだよ。なんか通商手形奪還がメインみたいになっているけど、全く違うかんね。
「え?」と驚愕するエミリア「変態捜索がメインでは?」
「ちがうわ! ばかぁ!」
エミリアがっかり、悲しそう。
「もういいわ」とローゼ、竜殺紳士に向き直って覚悟を決める。
…………竜殺紳士に向き直って覚悟を決めたローゼだったが、でも顔だけ後ろに向けて、なんか踏ん切りつかない様子。
心配になったエミリアが「どうしたんですか?」と恐る恐る訊いた。
「そういえば、アイツ、あの下裸かしら?」
ローゼがそう言うと、見守っていたマッシモ君が「もちろんですよ」と言った。
「もしツノ打ち砕けたら、R指定確実なんですけど」
「ローゼさんの女王様も確実ですね」とエミリアのんきちゃん。
それは可能性ゼロですから。
「でも、エルザさんが『SM女王に向いている』って言ってましたよね」
絶対認めませんから。
トランプのダイヤ型の星で瞳を輝かせて、ローゼが言った。
「わたしローゼは悩める女の子。男子をしばいて全裸を晒させるって、普通のヒロインがして良いことなのかしら?」
「大丈夫ですよ」とエミリア即答。「へ? なんで?」と訊くと、「今まで散々しばいてきたじゃないですか」と返ってきた。
実際しばいているのは、ほぼエミリアなんですけどね。
ローゼは、気を取り直して言った。
「でもまあ今回はしゃーないか。ドラゴンのツノに勝てるのは、わたしだけだもんね」
「わたしやりましょーか?」
「え? 何言ってんの?」
「その剣くれれば、わたしでもできますよ。だって、ローゼさんの力じゃないですもん。その剣の力ですもんね」
「うぐ」とローゼは言葉に詰まった。
確かにそうだ。なんか自分のポジションの特別感に浸っていたけれど、霊剣の力で打ち勝つ割合百パーセント。剣さえ渡せば、エミリアにだって同じように出来るはず。
ローゼしどろもどろ。
「いや、ほら、ねえ、そう、やっぱり剣士がやるべきでしょ?」
「まだ生徒ですよね?」
「そうだけれど、剣の訓練をしている分、勝てる可能性はわたしのほうが高いわ」と言い張って、ローゼはねだるエミリアに剣を渡さない。
仕切り直して、ローゼが叫ぶ。
「竜殺紳士、覚悟しなさい! あなたの悪事もこれまでよ」
「笑わせるな、うら若き紅の剣士よ。今こそお手製とんがりちちバンドをつけてやる。我が渾身の一撃を喰らえー」
竜殺紳士はそう叫んで飛びかかってきた。もちろんまたぐらを開いて。――そう、股間のとんがりでローゼを刺殺する気なのだ。
ローゼがフォムターグに構える。
「人を殺めてまで集めたこの人たちを開放してもらうわ」
「そんな目的、端からないくせに」とエミリアが茶々を入れる。
「うるさいわね、とうっ」と言ってローゼが塔から飛び出し、竜殺紳士を迎え撃つ。
ローゼは「やぁぁぁっ」と叫びながら、右後方(スランクフート)に星屑の剣を振りかぶって、横一文字に力強く振るう。凄まじい金属音が鳴り響いたかと思うと、バインドした剣とツノから渦巻く紺碧と青白い稲妻のような閃光が発せられた。大量の火花を伴って。
空中でせめぎ合う二人。
「――ぁぁぁっ‼」と渾身の力を込めて、ローゼが剣を振り切る。破壊音と共に亀裂の走るツノが木端微塵に砕けて吹き飛んだ。ローゼの水平斬りの威力で、跳ね飛ばされた竜殺紳士は、無防備のまま勢いよく地面に叩きつけられて、そのまま長い距離を無残に転げていく。
そして、ピクリとも動かない竜殺紳士の上に、一つの欠片が落ちてきた。その直後に着地したローゼは、よろけながらもなんとか体勢を立て直して、中央下段アルバーに構える。正確には剣が上がらなくて、アルバーにしか構えられない。
竜殺紳士の反撃に備えて顔をあげるローゼが「あっ」と叫んだ。
「すっごい絶妙ー」
大股広げでゲロゲロな体勢を見せつけて失神している竜殺紳士の股間の上、上手い具合にツノの欠片が乗っかっていて、大切なものが全く見えない。
「わー‼」と大歓声が上がる。さらわれてきた人々がローゼの周りに駆け寄ってきて、思わずローゼは英雄気分。
真っ先に駆け寄ってきた男に微笑みかけるローゼ、彼と目があった。男は息を整えながら竜殺紳士を見て、もう一度ローゼと目を合わせる。なんか瞳が物悲しそうだ。
「何で勝っちゃったんですか⁉」
半分の人たちがっかり顔。なんだよ讃えてくんないの?
「讃えたいの一割残念なの一割ですよ」男が言う。
後の八割どこ行ったんだよ。
「残ってますよ。“最低”て思う気持ちが」
方々からそう言う複雑な気持ちがローゼに伝わってくる。どういうこと?
「負けてちちバンド晒してくれたら良かったのに」と誰かが言った。
一生棒に振ってわたしのツノ姿見たいんかい。
「ブーブー」ブー垂れている半分の人たちは、もちろん男の人たちでした。
「やっちゃってください、ローゼさん。竜殺紳士を倒したら最終回ですよ。だって、伝説の剣が手に入るんですもの。この物語の隠れミッションじゃないですか」
違うよ。メインミッションだよ。なんか通商手形奪還がメインみたいになっているけど、全く違うかんね。
「え?」と驚愕するエミリア「変態捜索がメインでは?」
「ちがうわ! ばかぁ!」
エミリアがっかり、悲しそう。
「もういいわ」とローゼ、竜殺紳士に向き直って覚悟を決める。
…………竜殺紳士に向き直って覚悟を決めたローゼだったが、でも顔だけ後ろに向けて、なんか踏ん切りつかない様子。
心配になったエミリアが「どうしたんですか?」と恐る恐る訊いた。
「そういえば、アイツ、あの下裸かしら?」
ローゼがそう言うと、見守っていたマッシモ君が「もちろんですよ」と言った。
「もしツノ打ち砕けたら、R指定確実なんですけど」
「ローゼさんの女王様も確実ですね」とエミリアのんきちゃん。
それは可能性ゼロですから。
「でも、エルザさんが『SM女王に向いている』って言ってましたよね」
絶対認めませんから。
トランプのダイヤ型の星で瞳を輝かせて、ローゼが言った。
「わたしローゼは悩める女の子。男子をしばいて全裸を晒させるって、普通のヒロインがして良いことなのかしら?」
「大丈夫ですよ」とエミリア即答。「へ? なんで?」と訊くと、「今まで散々しばいてきたじゃないですか」と返ってきた。
実際しばいているのは、ほぼエミリアなんですけどね。
ローゼは、気を取り直して言った。
「でもまあ今回はしゃーないか。ドラゴンのツノに勝てるのは、わたしだけだもんね」
「わたしやりましょーか?」
「え? 何言ってんの?」
「その剣くれれば、わたしでもできますよ。だって、ローゼさんの力じゃないですもん。その剣の力ですもんね」
「うぐ」とローゼは言葉に詰まった。
確かにそうだ。なんか自分のポジションの特別感に浸っていたけれど、霊剣の力で打ち勝つ割合百パーセント。剣さえ渡せば、エミリアにだって同じように出来るはず。
ローゼしどろもどろ。
「いや、ほら、ねえ、そう、やっぱり剣士がやるべきでしょ?」
「まだ生徒ですよね?」
「そうだけれど、剣の訓練をしている分、勝てる可能性はわたしのほうが高いわ」と言い張って、ローゼはねだるエミリアに剣を渡さない。
仕切り直して、ローゼが叫ぶ。
「竜殺紳士、覚悟しなさい! あなたの悪事もこれまでよ」
「笑わせるな、うら若き紅の剣士よ。今こそお手製とんがりちちバンドをつけてやる。我が渾身の一撃を喰らえー」
竜殺紳士はそう叫んで飛びかかってきた。もちろんまたぐらを開いて。――そう、股間のとんがりでローゼを刺殺する気なのだ。
ローゼがフォムターグに構える。
「人を殺めてまで集めたこの人たちを開放してもらうわ」
「そんな目的、端からないくせに」とエミリアが茶々を入れる。
「うるさいわね、とうっ」と言ってローゼが塔から飛び出し、竜殺紳士を迎え撃つ。
ローゼは「やぁぁぁっ」と叫びながら、右後方(スランクフート)に星屑の剣を振りかぶって、横一文字に力強く振るう。凄まじい金属音が鳴り響いたかと思うと、バインドした剣とツノから渦巻く紺碧と青白い稲妻のような閃光が発せられた。大量の火花を伴って。
空中でせめぎ合う二人。
「――ぁぁぁっ‼」と渾身の力を込めて、ローゼが剣を振り切る。破壊音と共に亀裂の走るツノが木端微塵に砕けて吹き飛んだ。ローゼの水平斬りの威力で、跳ね飛ばされた竜殺紳士は、無防備のまま勢いよく地面に叩きつけられて、そのまま長い距離を無残に転げていく。
そして、ピクリとも動かない竜殺紳士の上に、一つの欠片が落ちてきた。その直後に着地したローゼは、よろけながらもなんとか体勢を立て直して、中央下段アルバーに構える。正確には剣が上がらなくて、アルバーにしか構えられない。
竜殺紳士の反撃に備えて顔をあげるローゼが「あっ」と叫んだ。
「すっごい絶妙ー」
大股広げでゲロゲロな体勢を見せつけて失神している竜殺紳士の股間の上、上手い具合にツノの欠片が乗っかっていて、大切なものが全く見えない。
「わー‼」と大歓声が上がる。さらわれてきた人々がローゼの周りに駆け寄ってきて、思わずローゼは英雄気分。
真っ先に駆け寄ってきた男に微笑みかけるローゼ、彼と目があった。男は息を整えながら竜殺紳士を見て、もう一度ローゼと目を合わせる。なんか瞳が物悲しそうだ。
「何で勝っちゃったんですか⁉」
半分の人たちがっかり顔。なんだよ讃えてくんないの?
「讃えたいの一割残念なの一割ですよ」男が言う。
後の八割どこ行ったんだよ。
「残ってますよ。“最低”て思う気持ちが」
方々からそう言う複雑な気持ちがローゼに伝わってくる。どういうこと?
「負けてちちバンド晒してくれたら良かったのに」と誰かが言った。
一生棒に振ってわたしのツノ姿見たいんかい。
「ブーブー」ブー垂れている半分の人たちは、もちろん男の人たちでした。
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