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第七十五話 竜王登場! コイツを倒せば最終回⁉
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樹齢何千年もの木々が生い茂った古代から続く森の中のはずなのに、なぜか辺りの木々が若々しくなってきた。どこにでもある普通の森。とても古代樹の森とは思えない。
しばらく歩いていると、森は叢林程度へと変化してきた。
「あ、ローゼさん、森が開けますよ」
とエミリアが指さす方を見ると、遠くに塔が見える。
二人は一瞬町があるのかと思ったが、新しい掘立小屋が散見されるのみ。多くの男たちが働いている。ただ、どうも町を作っている、という様子でもない。散らかったレンガの残骸をかたしているようだったからだ。滅びた町をかたしているのだろうか。
「あの人に訊いてみましょうよ」と走って行くエミリアが、リアカーの向こうにいた男に「すいませーん」と声をかけた次の瞬間、急に石の様に固まった。あとを追って行ったローゼがリアカー越しに覗いてギョッとする。下半身丸裸のスッポンポン。何も穿いていない後ろ姿。
エミリアに声をかけられて振り向こうとする男。咄嗟に止めるローゼをよそに、男はエミリアの前に下半身をさらけ出した。
「ああ~」と、にわかに顔色を蒼白とさせて悲嘆にくれるローゼ。「間に合わなかった……」R指定は間違いない。
「なんて……なんて……」と言葉に詰まるエミリアが、頑張って言葉を続けて発した。
「……大きくて、そんな硬そうな――」
どんな状況? ローゼはハッとした。諦めるのはまだ早い。R指定になるとはいえ、まだ削除回避は出来るはず。それに、たとえどんなことになろうとも、未成年のエミリアだけは救わねば。
ローゼは慌てて、「見ちゃダメー」とエミリアの手を引く。
「――ツノ穿いているなんて」と言い切ったエミリアの声を聞いて、「へ?」とローゼもまたぐらを見る。
股間にツノをかぶせるだけの下着? をつけている。細い紐で止めているだけ。だから後ろから見た時は下半身丸出しにしか見えなかったのだ。
ローゼたちの騒ぎ声を聞きつけて、ワラワラと人が集まってきた。男たちは、みんな裸か貫頭衣にとんがりパンツを穿いている。女性たちは、ツノをカップ代わりにしたブラをつけて、ロングスカートかラップノットスカート(腰巻き)を穿いていた。
「エミリア、帰ろう!」と言うローゼを引きとめてエミリアが口開く。
「でも、これだけ変態揃いなら、悪魔牙団の可能性大じゃないですか?」
「確かに」
その会話を聞いた一人の男が言う。
「我々は、好きで変態ルックでいるわけではないんですよ」
「そうです。わたしたち目が覚めたらここにいたんです」と女が続けた。
「無理やりこんな格好にさせるなんて最低ね。女の敵だわ」とローゼが怒った。
「いいえ」と女。「目が覚めたら、もともとの服を着た状態で一人小屋の中に放置されていました。ただ目の前には竜のツノのブラがあるだけの部屋でした。
しばらくすると女性が連れてこられて、日に日に増えていきました。来る日も来る日も、物見窓(ドアについた小さな小窓)から誰かがのぞくんです。その度に舌打ちしたり、『まだかよ』って言ってどこかに行ってしまうんです。それでわたしたちは察しました。これに着替えろってことなんだろうなって」
なんだ、自分で着替えたのか。ちょっとほっとしたローゼ。
結構つらそうに話しているけど、頭に浮かんでいる回想楽しそう。ごはんはちゃんと食べさせてもらっているし、おやつの差し入れもある。
「ひどくつらい監禁生活でした」と丸々とした女の子が言う。
あれ? こんな子いたっけ?
すると、回想を巻き戻して、「これ」と教えてくれた。
めっちゃ美人。ビフォア―アフターの差凄過ぎる。
「骨付き肉多すぎるんですもん」
そう言った丸々した女の子は泣き出して続ける。
「わたしたちこんな格好させられて、もうお嫁に行けないわ。よよよよよ~(泣)」
一人の男が慰めながら愚痴を吐いた。
「まだ女は良いよ、男の扱いがひどすぎる! 女は、上ツノブラで下スカートだろ? 見方によっては踊り子かどこかのなんたら族に見えなくもないじゃんか。
俺たちはなんだよ、上シャツで下ペニケースだぞ? どうよく見ても変態だろう!」
確かに……。でも変態より悲惨かもしれない。この格好、変態ならしっくりくるけれど、普通の人がしているとすっごい違和感。変態というより情けなさがこみ上げている。
「それだけじゃないんだ」と泣き叫んで訴える別の男。
「ツノの大きさがモノの大きさを表しているんだよ」
見ると、小指ほどのツノをつけている。
「なるほどー」とエミリアに言われて、泣いて駆けていった。
大体理由は分かるけれど、ローゼは腕を組んで一応訊く。
「何が『なるほどー』よ」
「つぶしがいないなーって」
なに目的でツノ観察してんだよ。ローゼは仕切り直して、みんなに質問。
「でも何でとんがりパンツなんて穿かされているのよ」
「なんか、とんがりパンツ作りが趣味とかで」
どんな趣味だよ。
「近くでドラゴンを狩っては、ツノを切り取ってきてパンツを作るんです」
ドラゴン狩り? ローゼとエミリアは確信を持って顔を見合わせた。竜殺(ごろ)紳士かもしれない。“ドラゴンを覇する者”とか、“竜王”とかと呼ばれている。
話を聞いていたローゼが辺りをよく見渡してみると、滅びた町ではないようだ。
「なんでこんな人里離れた森の中にいるのよ。しかも恐ろしいドラゴンが生息している場所に」
男が答えた。
「無理やりさらわれてきたんですよ。『君、とんがりパンツに興味ないかね』って言われて。――ねーよそんなもんって言ったのに、『いや、君には似合うはずだ、絶対』って言って、一緒にいたやつを斬ったんだよ」
エミリア「たぶん、片方の人は似あわなかったんですね」
「その死に方可哀想ー」とローゼ。
今回、この人たちは“牙”の手下じゃないらしい。聞いたところによると竜殺紳士は一人のようだ。
「それなら楽勝ー」とローゼはたかを括って、エミリアと笑いあった。
しばらく歩いていると、森は叢林程度へと変化してきた。
「あ、ローゼさん、森が開けますよ」
とエミリアが指さす方を見ると、遠くに塔が見える。
二人は一瞬町があるのかと思ったが、新しい掘立小屋が散見されるのみ。多くの男たちが働いている。ただ、どうも町を作っている、という様子でもない。散らかったレンガの残骸をかたしているようだったからだ。滅びた町をかたしているのだろうか。
「あの人に訊いてみましょうよ」と走って行くエミリアが、リアカーの向こうにいた男に「すいませーん」と声をかけた次の瞬間、急に石の様に固まった。あとを追って行ったローゼがリアカー越しに覗いてギョッとする。下半身丸裸のスッポンポン。何も穿いていない後ろ姿。
エミリアに声をかけられて振り向こうとする男。咄嗟に止めるローゼをよそに、男はエミリアの前に下半身をさらけ出した。
「ああ~」と、にわかに顔色を蒼白とさせて悲嘆にくれるローゼ。「間に合わなかった……」R指定は間違いない。
「なんて……なんて……」と言葉に詰まるエミリアが、頑張って言葉を続けて発した。
「……大きくて、そんな硬そうな――」
どんな状況? ローゼはハッとした。諦めるのはまだ早い。R指定になるとはいえ、まだ削除回避は出来るはず。それに、たとえどんなことになろうとも、未成年のエミリアだけは救わねば。
ローゼは慌てて、「見ちゃダメー」とエミリアの手を引く。
「――ツノ穿いているなんて」と言い切ったエミリアの声を聞いて、「へ?」とローゼもまたぐらを見る。
股間にツノをかぶせるだけの下着? をつけている。細い紐で止めているだけ。だから後ろから見た時は下半身丸出しにしか見えなかったのだ。
ローゼたちの騒ぎ声を聞きつけて、ワラワラと人が集まってきた。男たちは、みんな裸か貫頭衣にとんがりパンツを穿いている。女性たちは、ツノをカップ代わりにしたブラをつけて、ロングスカートかラップノットスカート(腰巻き)を穿いていた。
「エミリア、帰ろう!」と言うローゼを引きとめてエミリアが口開く。
「でも、これだけ変態揃いなら、悪魔牙団の可能性大じゃないですか?」
「確かに」
その会話を聞いた一人の男が言う。
「我々は、好きで変態ルックでいるわけではないんですよ」
「そうです。わたしたち目が覚めたらここにいたんです」と女が続けた。
「無理やりこんな格好にさせるなんて最低ね。女の敵だわ」とローゼが怒った。
「いいえ」と女。「目が覚めたら、もともとの服を着た状態で一人小屋の中に放置されていました。ただ目の前には竜のツノのブラがあるだけの部屋でした。
しばらくすると女性が連れてこられて、日に日に増えていきました。来る日も来る日も、物見窓(ドアについた小さな小窓)から誰かがのぞくんです。その度に舌打ちしたり、『まだかよ』って言ってどこかに行ってしまうんです。それでわたしたちは察しました。これに着替えろってことなんだろうなって」
なんだ、自分で着替えたのか。ちょっとほっとしたローゼ。
結構つらそうに話しているけど、頭に浮かんでいる回想楽しそう。ごはんはちゃんと食べさせてもらっているし、おやつの差し入れもある。
「ひどくつらい監禁生活でした」と丸々とした女の子が言う。
あれ? こんな子いたっけ?
すると、回想を巻き戻して、「これ」と教えてくれた。
めっちゃ美人。ビフォア―アフターの差凄過ぎる。
「骨付き肉多すぎるんですもん」
そう言った丸々した女の子は泣き出して続ける。
「わたしたちこんな格好させられて、もうお嫁に行けないわ。よよよよよ~(泣)」
一人の男が慰めながら愚痴を吐いた。
「まだ女は良いよ、男の扱いがひどすぎる! 女は、上ツノブラで下スカートだろ? 見方によっては踊り子かどこかのなんたら族に見えなくもないじゃんか。
俺たちはなんだよ、上シャツで下ペニケースだぞ? どうよく見ても変態だろう!」
確かに……。でも変態より悲惨かもしれない。この格好、変態ならしっくりくるけれど、普通の人がしているとすっごい違和感。変態というより情けなさがこみ上げている。
「それだけじゃないんだ」と泣き叫んで訴える別の男。
「ツノの大きさがモノの大きさを表しているんだよ」
見ると、小指ほどのツノをつけている。
「なるほどー」とエミリアに言われて、泣いて駆けていった。
大体理由は分かるけれど、ローゼは腕を組んで一応訊く。
「何が『なるほどー』よ」
「つぶしがいないなーって」
なに目的でツノ観察してんだよ。ローゼは仕切り直して、みんなに質問。
「でも何でとんがりパンツなんて穿かされているのよ」
「なんか、とんがりパンツ作りが趣味とかで」
どんな趣味だよ。
「近くでドラゴンを狩っては、ツノを切り取ってきてパンツを作るんです」
ドラゴン狩り? ローゼとエミリアは確信を持って顔を見合わせた。竜殺(ごろ)紳士かもしれない。“ドラゴンを覇する者”とか、“竜王”とかと呼ばれている。
話を聞いていたローゼが辺りをよく見渡してみると、滅びた町ではないようだ。
「なんでこんな人里離れた森の中にいるのよ。しかも恐ろしいドラゴンが生息している場所に」
男が答えた。
「無理やりさらわれてきたんですよ。『君、とんがりパンツに興味ないかね』って言われて。――ねーよそんなもんって言ったのに、『いや、君には似合うはずだ、絶対』って言って、一緒にいたやつを斬ったんだよ」
エミリア「たぶん、片方の人は似あわなかったんですね」
「その死に方可哀想ー」とローゼ。
今回、この人たちは“牙”の手下じゃないらしい。聞いたところによると竜殺紳士は一人のようだ。
「それなら楽勝ー」とローゼはたかを括って、エミリアと笑いあった。
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