DEVIL FANGS

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
71 / 113

第七十一話 蚊って何でわざわざ耳元飛ぶのかな?

しおりを挟む
 「それより、何でこんな危険な森に普通の人が紛れてんの?」とローゼが疑問を呈した。
 「わたしたち、悪者退治しにきたの」とジュゴ奈が言う。
 サイ江が「そうそう、わたしたちの大事なパーク様を横取りしようとする性悪女が出没したらしいのよ」と続けた。
 「うん、一言言ってあげないと、って思ったの」とカバ美。
 「ああ、それで偶然会ってここまで来たんだ」とパークが引き継いだ。「俺は、カトワーズに念写を頼んでくれたローゼにお礼するために、竜殺紳士を探しに来たんだけどな」
 「そうなの? でも偶然再会なんてすごいわね」とローゼが答える。
 するとゴリ子「うん、町の女の子みんな脱いだ下着が行方不明になる怪事件が多発していてね、注意が呼びかけられてたのよ」
 明らかにパークの仕業。
 「それで、わたしたちのも盗まれたのよねー」とウジ吉が言う。
 お前手足ないのに、何言ってんだよ。
 「じゃかーしーわ、黙って聞けや!」
 パークが聞かないふりするのはお約束。
 エミリアひそひそ。
 「ジュゴ奈さんがノーパンなのって換えがないからですかね」
 ノーパン? スカート穿いているのに何故分かる?って股出てる。腰めっちゃ長くて足短いから、スカートから股出てるよ。
 「やだ、見ないでよエッチ!」
 見せんなよエッチ。
 「ローゼさん、これR指定には?」とエミリア、ソフト絶望。
 ジュゴンだし、尾ひれだし、ダイジョブなんじゃね?
 「それより、みんな身長百八十センチ前後あってBWH大きいのに、パークはサイズ大丈夫なの?」
 「ああ、頭にかぶるんだ。特にゴリ子の抜け毛がチクチクして気持ちいい。剛毛だからな」
 「やだーもう、バラさないでー」とゴリ子が腕を振るう。パーク三回転して木に激突。瀕死状態。ガチ怖えー。
 バラすも何も、全身剛毛じゃないですか? とはつっこめない。
 見ると、たき火があってお湯を沸かしている。ハーブティーの袋もあるから、お茶の準備をしているようだ。ローゼとエミリアは断りを入れて、お邪魔になっても一緒に休憩することにした。
 森の中に入ってから戦闘は一度もない。ドラゴンがウジャウジャ生息している森だから、人と戦えるほどの大型の獣や邪霊獣は住んでいない。それでもローゼたちは疲労していた。ずっと気を張り詰めてきたからだ。
 二人はみんなと打ち解け合おう、と話題を探した。
 パークがゴリ子と話していてそっぽを向いた時、「そうだ」と言ってカバ美がローゼに話しかけた。
 「剣て、どう構えればいいの?」
 「剣? 良いよ。直立して――」
 ローゼがそう言うと、カバ美は言われた通りに動作を始める。
 「――右足を斜め四十五度に開いて、斜め後ろに下げるの。剣は右頬の斜め前にグリップが来るようにして、切っ先は天を突くのよ」
 「それでどうするの?」
 「右足を踏み出しながら、相手の頭や喉をめがけて斜めに振り下ろすの。それが基本の一つかなぁ? 『オーバルハウ』って言うのよ」
 「へぇ~」と相づちをするカバ美、おもむろにわきに置いてあった大きな石斧を取り上げた。
 「……右足を斜め四十五度、後ろに下げて、石斧を構える」
 一瞬間があって「死ねっ」とカバ美一言。解放された殺気を纏った『オーバルハウ』がローゼを襲う。勢い余って、斬りつけるというより“叩き潰し切る”って感じのオーバルハウ。
 ローゼ「どひゃぁ」と叫んで仰向けに転げて一回転。間一髪で避けはしたのだけれど、座っていた丸太は叩き潰されたて千切れてしまった。もし避けなければ、ローゼがぶちゅっぱされていただろう。
 「チッ、仕留め損ねた」カバ美小声で吐き捨てる。
 振り下ろす瞬間を目撃してしまったパークが、ワナワナ震えながらカバ美に叫んだ。
 「何やっているんだ! カバ美」
 「えへっ♡ ここやぶ蚊が多いものだから」
 「なんだ、そっかー」
 ンなわけあるか。蚊殺すのに何使ってんだよ。
 「刺されると痒いじゃない?」
 刺さなくても飲めるようにしてあげるんですか? 蚊のために? 
 「上手いこと言うなぁ」とパーク。
 上手くねーから。
 「それより、たくさん人いるんだし、バーベキューしない? ちょうどドラゴンのお肉もあるんだし」とサイ江がフォロー。
 「ちょっと――」ローゼが“待って”と言いかけた時に、エミリアが「さんせーい😃🎶」と手をあげながら叫んで、言葉を遮る。
 みんなもそろって「さんせーい」と声をあげた。
 なんかカバ美の行為がうやむやになった。
 みんながバーベキューの準備を始める横で、妙に担当作業の準備開始を遅らせようとする動作のカバ美、なんか準備の準備をするふりして素振りしてる。
 ようやく気が休まると思ったのに、全く休まらない。ローゼの死角に消えようとするカバ美、常にこっちを見ているのが分かるほど変な雰囲気。ひときわ異彩を放っている。
 石を集めながら彼女をチラリと見やるローゼ、苦笑い。「はぁ~」とため息吐いてがっかりするしかありませんでした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

FRIENDS

緒方宗谷
青春
身体障がい者の女子高生 成瀬菜緒が、命を燃やし、一生懸命に生きて、青春を手にするまでの物語。 書籍化を目指しています。(出版申請の制度を利用して) 初版の印税は全て、障がい者を支援するNPO法人に寄付します。 スコアも廃止にならない限り最終話公開日までの分を寄付しますので、 ぜひお気に入り登録をして読んでください。 90万文字を超える長編なので、気長にお付き合いください。 よろしくお願いします。 ※この物語はフィクションです。 実在の人物、団体、イベント、地域などとは一切関係ありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...