70 / 113
第七十話 六角関係? ローゼリッタの恋愛協奏曲
しおりを挟む
ローゼたちは今、深い樹海の中にいる。ドラゴンが生息している恐ろしい森だったが、何日もかけて悪魔牙団の名簿にあるドラゴンハンター・竜殺紳士(りゅうごろしんし)を探していた。
幾つかの村で聞いた噂に、ここ最近多くのドラゴンが狩られている、という話が何度も出てきたからだ。
気がつくと、木々の向こうに大きなグリーンドラゴンがいる。二人は息を殺して身をかがめた。
四足歩行で、名前の通り緑色をしていて、二本の角が生えている。数多く生息する野生のドラゴンの中では弱い方に分類されるが、性格は獰猛。火や氷を吐くなどの特殊能力はない。全長十から二十メートルあって、人間にとっては恐ろしい存在だ。
一瞬たじろいだ二人であったが、既に死んでいることに気がついてそばに寄ってみる。そして意外な人物に遭遇して、「パーク?」と思わずローゼは叫んだ。格好まともジャン。上着ていなくて、下は黒い下体衣。腰に太い帯を巻いていて、なんかめっちゃ武道家風。
張りつめた空気がふやけて、ローゼ一言。
「――て、何こんなところまで来て牛丼?」
「俺は牛丼しか食わねーからな」
こんな森の中でよく作れたな、とローゼが感心すると、エミリアが言った。
「宅配してくれる牛丼屋さんもありますよ」
ここまでは無理なんじゃね? ドラゴンいますよ。めっちゃ死地ですよ?
「樹海の外の村で見つけたご当地牛丼だ」とパーク、自慢げ微笑。
マジ宅配? 村から何十キロあるって思ってんの?
「まさか」
そうだよね。テイクだよね。
「いや、イートイン」
持ってきたの? 勝手に持ってきちゃたの? その容器使い捨てじゃないんだよ?
「返しに行くさ」
行くんだ? 律儀に行くんだ?
つっこみ終わってローゼが気づいた。
「獣人? 誰? この人たち」
見ると三人の女の子がいる。みんな獣人だ。
サイの獣人は、肩に三列フリルがあって、ミルクオレンジのティアードスカートのワンピース。なんか、めっちゃたれ目。いや見た感じ真ん丸い瞳なんだけれど、紫色のアイシャドーが妙に垂れ下がっているから、たれ目感を強調している。言わないけれど、口周りの毛穴めっちゃ開いて黒ずんでいた。
ゴリラの獣人は、真中分けで左右に一本ずつの三つ編みを作って胸の前に垂らしている。眉毛がなくて、“目の骨超発達してますっ”って感じ。大きく塗られた真っ赤な口紅が印象的。ヘビー級みたいな体格なのに、なんか妙に色っぽい。胸があって腰くびれているからだろうか。
サイの獣人、なぜ目の周り真っ黒に塗ってんの? ラメ眩しすぎ。
「逆ガングロギャルよ」
それ、ガンジロとか美白とかって言わないか?
「流行の最先端」
流行んねーよ。シロサイだからって安易じゃね?
「いいえ、わたしクロサイよ」
紛らわしーな。
「最近じゃ、パンダもわたしを真似しているの」
むこうが先じゃね? 生まれつきで真似じゃねーだろ?
よく見ると髪が生えている。めっちゃおでこが広くて気がつかなかった。黒曜石の割ったところのように艶やかな髪色のセミロング。ジパング人以上に艶やかな感じ。服装はシンプル、キャミソールのみ。柄は滲んだ感じに染めあげられたハイビスカス。青と赤のトロピカルな感じ。
何かに気がついたエミリアが「ふふん」と鼻で笑う。小声でローゼに耳打ちした。
「すごい寸胴ですよ」
上からB百九十四W百九十四H百九十四完全なストレートボディでカップ無し。初めて胸の大きさで勝てる相手に出会いました。
「失礼な、美穂ちゃんもいましたから」エミリアがぶーたれる。
「十歳と張り合わない!」
もう一人は――……どうしたの? めっちゃびしょ濡れだけれど――と思ってローゼが見やったのはジュゴンの獣人。
「わたし、濡れていないとお肌が乾燥して切れちゃうの」
無理しなさんなって。
真っ白な唇(?)がめっちゃ発達していて、硬そうなお尻型。つぶらな目に対して長すぎる三本まつ毛が女の子女の子した感じ。白いブラウスにローズレッドのスカートを穿いて、薄手で刺繍のないリンネル製の胸衣をまとっていた。どこか良いところのお嬢さんだろうか。
「この方たちはどなた様?」とローゼが訊く。
パークは、「ああ、こいつらは、俺の子猫ちゃんたちさ」と答えた後、女の子たちにローゼたちを紹介した。
ローゼとエミリアびっくり仰天。なんと、みんな彼女らしい。
「絶対嘘だよ。うんこたれが三股も掛けれるはずないじゃん」ローゼ絶対認めない。
パークがみんなの紹介を続ける。
「まずはカバ美、ゴリ子、サイ江、ジュゴ奈、そしてウジ吉だ」
人獣? 邪霊獣? 最後の一人ヒゲ生えてるよ? 視界には入ってはいたけど人類にカウントできなかった。だって見た目真っ白い紐。人型の面影微塵もない。
「うふ♡ わたし正真正銘十七歳の女の子でーす」ウジ吉ラブリー。
違うよね。正真正銘違うよね。“~の子”って年齢の声じゃないの明らかじゃん。絶対オヤジ。
すると、ウジ吉怒って怒鳴りのたまく。
「じゃかーしいわ、十七歳に決まってんだろ! このクソあまぁ」
突然の低く唸るような怒声に、ローゼびっくり。口をパクパクさせてパークを見やる。でもパークはそっぽを向いて、誰かに話しかけられて、“俺? 俺呼んだ?”って感じのパントマイム。でも、そっち誰もいないよね。
“吉”ってなんだよ。可愛くねーな。
「源氏名だよ、悪いかよ」
創作ネームで“吉”使ったの? ベストチョイス程遠い。もっと可愛いのあったでしょ。
「本名の吉から取ったんだよ」
本名何だよ。
「ウジ吉」
変わんないじゃん。
「あんましつこくすると、ケツから入って奥歯ガタガタ言わすぞ、おんどりゃぁ」
めっちゃ口汚い。
ローゼが訊いた。
「て言うか、ウジ吉って何なの? ウジに見えないけれど」
「イチャモンつけてんじゃねーよ! 誰がどう見たってウジだろうが」
真っ白で紐みたいな姿。サナダムシにしか見えません。
「ダイエットしたんだよ」
ダイエットで長くなるってどういうこと?
「なるんだよ! これが恋する乙女の力だよ」
乙女にそんな力ありません。
「説明するとだなぁ――」
ほわほわほわーん、と回想シーンへフェードイン。
「あ、ごめん、映像なかった」
ないんかよ。
「口で説明すると、わたしとても裕福なお嬢様だったの。お嬢様って言っても、人間で言えば紳士階級って言うの? いわゆるお金持ち。でも、ある時大きな災害があって、土石流に巻き込まれて何もかも失ったわ――」
ほわほわほわーん。と回想シーンへフェードイン。
あ、ここから映像残っているんだ? でもここどこだ? けもの道の端っこか?
「――一緒に流された穀物を集めてなんとか食べ繋いでいたのだけれど、それも尽きてしまたの」
それ穀物違う。消化不順なうんこじゃないの? 土石流全部うんこだったのか?
「お腹が空きすぎてもうだめだって思って諦めていた時、パーク様が通りがかって持っていた食料を分けてくれたのよ」
「へー、パーク、良いとこあるじゃない」とローゼがパークを見やる。
「まーな」と照れて破顔するパーク。
でもよく見るとうんこで汚れたパンティ捨てただけじゃんか。
「それからぞっこんラブってんの」とウジ吉告白。ローゼ当惑。
変な言い方するなよ。
「好き過ぎて食欲が出なくて、こんなに痩せちゃった。わたしの夢は、いつかパーク様の肛門から中に入って一つになることメークラブ」
それ、寄生するっていいません? 間違いなくサナダムシ――。
「じゃかーしい! まだ言うか、このゲス女」
そのオヤジキャラ直せよ。ドス効きすぎてどう扱っていいか分かんない。こんがらがちゃうよ。
やっぱりそっぽ向いていたパークが、向き直って言う。
「こいつは正真正銘オカマバーで拾ってきた」
オカマバーって言っちゃってるよ。十七歳じゃないの明らかじゃんか。年齢制限引っ掛かっちゃうよ。
「どう見ても十七才だろーがよ!」ウジ吉激怒。
四十五歳って感じだよ。風営法違反だから、サバ読むのよしてくれよ。勘違いされたらどうすんだよ。百歩譲って十八歳にしておくからさ。
「こいつは本物の十七歳さ」とパークが笑う。
絶対違うよ。
「わたし永遠の十七歳」
オヤジだろーが。
いつまでも十七歳と言い張るウジ吉でした。
幾つかの村で聞いた噂に、ここ最近多くのドラゴンが狩られている、という話が何度も出てきたからだ。
気がつくと、木々の向こうに大きなグリーンドラゴンがいる。二人は息を殺して身をかがめた。
四足歩行で、名前の通り緑色をしていて、二本の角が生えている。数多く生息する野生のドラゴンの中では弱い方に分類されるが、性格は獰猛。火や氷を吐くなどの特殊能力はない。全長十から二十メートルあって、人間にとっては恐ろしい存在だ。
一瞬たじろいだ二人であったが、既に死んでいることに気がついてそばに寄ってみる。そして意外な人物に遭遇して、「パーク?」と思わずローゼは叫んだ。格好まともジャン。上着ていなくて、下は黒い下体衣。腰に太い帯を巻いていて、なんかめっちゃ武道家風。
張りつめた空気がふやけて、ローゼ一言。
「――て、何こんなところまで来て牛丼?」
「俺は牛丼しか食わねーからな」
こんな森の中でよく作れたな、とローゼが感心すると、エミリアが言った。
「宅配してくれる牛丼屋さんもありますよ」
ここまでは無理なんじゃね? ドラゴンいますよ。めっちゃ死地ですよ?
「樹海の外の村で見つけたご当地牛丼だ」とパーク、自慢げ微笑。
マジ宅配? 村から何十キロあるって思ってんの?
「まさか」
そうだよね。テイクだよね。
「いや、イートイン」
持ってきたの? 勝手に持ってきちゃたの? その容器使い捨てじゃないんだよ?
「返しに行くさ」
行くんだ? 律儀に行くんだ?
つっこみ終わってローゼが気づいた。
「獣人? 誰? この人たち」
見ると三人の女の子がいる。みんな獣人だ。
サイの獣人は、肩に三列フリルがあって、ミルクオレンジのティアードスカートのワンピース。なんか、めっちゃたれ目。いや見た感じ真ん丸い瞳なんだけれど、紫色のアイシャドーが妙に垂れ下がっているから、たれ目感を強調している。言わないけれど、口周りの毛穴めっちゃ開いて黒ずんでいた。
ゴリラの獣人は、真中分けで左右に一本ずつの三つ編みを作って胸の前に垂らしている。眉毛がなくて、“目の骨超発達してますっ”って感じ。大きく塗られた真っ赤な口紅が印象的。ヘビー級みたいな体格なのに、なんか妙に色っぽい。胸があって腰くびれているからだろうか。
サイの獣人、なぜ目の周り真っ黒に塗ってんの? ラメ眩しすぎ。
「逆ガングロギャルよ」
それ、ガンジロとか美白とかって言わないか?
「流行の最先端」
流行んねーよ。シロサイだからって安易じゃね?
「いいえ、わたしクロサイよ」
紛らわしーな。
「最近じゃ、パンダもわたしを真似しているの」
むこうが先じゃね? 生まれつきで真似じゃねーだろ?
よく見ると髪が生えている。めっちゃおでこが広くて気がつかなかった。黒曜石の割ったところのように艶やかな髪色のセミロング。ジパング人以上に艶やかな感じ。服装はシンプル、キャミソールのみ。柄は滲んだ感じに染めあげられたハイビスカス。青と赤のトロピカルな感じ。
何かに気がついたエミリアが「ふふん」と鼻で笑う。小声でローゼに耳打ちした。
「すごい寸胴ですよ」
上からB百九十四W百九十四H百九十四完全なストレートボディでカップ無し。初めて胸の大きさで勝てる相手に出会いました。
「失礼な、美穂ちゃんもいましたから」エミリアがぶーたれる。
「十歳と張り合わない!」
もう一人は――……どうしたの? めっちゃびしょ濡れだけれど――と思ってローゼが見やったのはジュゴンの獣人。
「わたし、濡れていないとお肌が乾燥して切れちゃうの」
無理しなさんなって。
真っ白な唇(?)がめっちゃ発達していて、硬そうなお尻型。つぶらな目に対して長すぎる三本まつ毛が女の子女の子した感じ。白いブラウスにローズレッドのスカートを穿いて、薄手で刺繍のないリンネル製の胸衣をまとっていた。どこか良いところのお嬢さんだろうか。
「この方たちはどなた様?」とローゼが訊く。
パークは、「ああ、こいつらは、俺の子猫ちゃんたちさ」と答えた後、女の子たちにローゼたちを紹介した。
ローゼとエミリアびっくり仰天。なんと、みんな彼女らしい。
「絶対嘘だよ。うんこたれが三股も掛けれるはずないじゃん」ローゼ絶対認めない。
パークがみんなの紹介を続ける。
「まずはカバ美、ゴリ子、サイ江、ジュゴ奈、そしてウジ吉だ」
人獣? 邪霊獣? 最後の一人ヒゲ生えてるよ? 視界には入ってはいたけど人類にカウントできなかった。だって見た目真っ白い紐。人型の面影微塵もない。
「うふ♡ わたし正真正銘十七歳の女の子でーす」ウジ吉ラブリー。
違うよね。正真正銘違うよね。“~の子”って年齢の声じゃないの明らかじゃん。絶対オヤジ。
すると、ウジ吉怒って怒鳴りのたまく。
「じゃかーしいわ、十七歳に決まってんだろ! このクソあまぁ」
突然の低く唸るような怒声に、ローゼびっくり。口をパクパクさせてパークを見やる。でもパークはそっぽを向いて、誰かに話しかけられて、“俺? 俺呼んだ?”って感じのパントマイム。でも、そっち誰もいないよね。
“吉”ってなんだよ。可愛くねーな。
「源氏名だよ、悪いかよ」
創作ネームで“吉”使ったの? ベストチョイス程遠い。もっと可愛いのあったでしょ。
「本名の吉から取ったんだよ」
本名何だよ。
「ウジ吉」
変わんないじゃん。
「あんましつこくすると、ケツから入って奥歯ガタガタ言わすぞ、おんどりゃぁ」
めっちゃ口汚い。
ローゼが訊いた。
「て言うか、ウジ吉って何なの? ウジに見えないけれど」
「イチャモンつけてんじゃねーよ! 誰がどう見たってウジだろうが」
真っ白で紐みたいな姿。サナダムシにしか見えません。
「ダイエットしたんだよ」
ダイエットで長くなるってどういうこと?
「なるんだよ! これが恋する乙女の力だよ」
乙女にそんな力ありません。
「説明するとだなぁ――」
ほわほわほわーん、と回想シーンへフェードイン。
「あ、ごめん、映像なかった」
ないんかよ。
「口で説明すると、わたしとても裕福なお嬢様だったの。お嬢様って言っても、人間で言えば紳士階級って言うの? いわゆるお金持ち。でも、ある時大きな災害があって、土石流に巻き込まれて何もかも失ったわ――」
ほわほわほわーん。と回想シーンへフェードイン。
あ、ここから映像残っているんだ? でもここどこだ? けもの道の端っこか?
「――一緒に流された穀物を集めてなんとか食べ繋いでいたのだけれど、それも尽きてしまたの」
それ穀物違う。消化不順なうんこじゃないの? 土石流全部うんこだったのか?
「お腹が空きすぎてもうだめだって思って諦めていた時、パーク様が通りがかって持っていた食料を分けてくれたのよ」
「へー、パーク、良いとこあるじゃない」とローゼがパークを見やる。
「まーな」と照れて破顔するパーク。
でもよく見るとうんこで汚れたパンティ捨てただけじゃんか。
「それからぞっこんラブってんの」とウジ吉告白。ローゼ当惑。
変な言い方するなよ。
「好き過ぎて食欲が出なくて、こんなに痩せちゃった。わたしの夢は、いつかパーク様の肛門から中に入って一つになることメークラブ」
それ、寄生するっていいません? 間違いなくサナダムシ――。
「じゃかーしい! まだ言うか、このゲス女」
そのオヤジキャラ直せよ。ドス効きすぎてどう扱っていいか分かんない。こんがらがちゃうよ。
やっぱりそっぽ向いていたパークが、向き直って言う。
「こいつは正真正銘オカマバーで拾ってきた」
オカマバーって言っちゃってるよ。十七歳じゃないの明らかじゃんか。年齢制限引っ掛かっちゃうよ。
「どう見ても十七才だろーがよ!」ウジ吉激怒。
四十五歳って感じだよ。風営法違反だから、サバ読むのよしてくれよ。勘違いされたらどうすんだよ。百歩譲って十八歳にしておくからさ。
「こいつは本物の十七歳さ」とパークが笑う。
絶対違うよ。
「わたし永遠の十七歳」
オヤジだろーが。
いつまでも十七歳と言い張るウジ吉でした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
1 / 2
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる