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第六十三話 ライバル再び 女王様はどっちだ
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小学生にギャーギャー騒がれながら辺り構わず子供たちを捕まえて、二人は美穂の居場所を問いただす。
でも子供は恐怖で発狂乱。
「助けてぇ。変態女だ! 股間が骸骨の変態女だ!」
「ええっ?」ブルマじゃないの?
お股を見やるローゼ、ようやく気がついた。見ると、またぐらがシャレコウベになった黒鋼製パンツを穿いている。シャレコウベは白いものだから、これがまた目立つ目立つ。しかも裸足。もう最低。ちなみに対法術コーティングの黒鋼製だから、ローゼこの旅で一番の良い装備。でも代わりにレイピアとダガーがなくなっている。
「げっげっげっげっげっ」笑うシャレコウベに目掛けて、エミリアが氷水を浴びせかける。
「何すんのよ」ローゼが叫んだ。
「風邪には氷水を浴びせかけるのが良いらしいですよ」
いずこの荒治療だよ。
このやり取りの間に子供たちはいなくなって二人ぼっち。富豪たちも遠巻きに見ている。さすがにシャレコウベのパンツを穿いたやつなんかには関わらないほうが良い、と判断したらしい。
全然情報ないけれど、屋上を飛び跳ねて行く美穂の姿を発見。学校の敷地に入った美穂を追いかけて、体育館に侵入したローゼたち。暗幕が閉まっているせいか中は真っ暗。入ってきたドアも不意に締まって、何にも見えない。
急にスポットライトが壇上を照らす。二人は急いで席につく。
「表っ彰っ状っ、ローゼリッタ・クラインワルツ」と美穂の声が響く。
美穂の後ろに卒業式と書いてある。
「間違えた。卒っ業っ証っ書っ、ローゼリッタ・クラインワルツ」
「はいっ」
「あなたは、この三年間、偽物の胸を隠し通して卒業できることをここに証します」
台無しだよ。最後の日に台無しだよ。
「やっぱり入れ物だったんですね」エミリア確信を持って問いただす。
ちげーよ。お前、温泉で見ただろや?
「本物の方ですか?」
これ以外に何があったんだよ。
気を取り直して美穂ちゃんが叫ぶ。
「卒っ業っ証っ書っ、エミリア・ワトソン」
「はいっ」
「あなたは、バストのある同級生を羨むたびに、みんなから『これから大きくなるよ』って言われているけれど、実は小さいままだと内心思われているなんて気がつけもせずに卒業する目前で、校長のわたしに指摘されて、泣いて退学届を提出することをここに証します」
「はいっ」
じゃねーだろ。
「受理します」と美穂校長。
卒業させてやれよ、もう一日切ってんだからさ。
「泣かないで、エミリア」ローゼがエミリアに声をかけた。
「大丈夫です。大きければいいってもんじゃありませんから」
「そうそう、人間大事なのは中身だからね」
「むぎぎぎっ~」とローゼの一部を毟ろうとするエミリアの手を押さえつけながら慰めの言葉をかけるローゼが、なんとか暴漢を羽交い絞めにした時に気がついた。いつの間にか美穂いない。
外に出ると、聞きなれた高笑いが聞こえる。
「ほーほっほっほっほっ、ようやく見つけたわローゼリッタ」
「エルザ?」
今回は下着じゃない? 黒革製のプレイスーツ? めっちゃハイレグ。胸の谷間からおへその下R目前ギリギリまで割れていて、紐で斜め十字に三か所結ばれている。背中もバックリ割れていて、腰の部分だけ斜め十字の紐が一つ蝶結び。今回は膝丈の黒ブーツだけれど、ヒールは最初に会ったときより高くなっている。よく綺麗に歩けるな。しかもヒールの先が尖っている。ちなみにマスクは孔雀の羽。
「鷲のアイマスクと揚羽のアイマスクを返してもらいにきたわ」
「だ・か・らっ、両方とも持っていないわよ。捨てちゃったから」
「なんですって?」驚くエルザ。「結構高価なものだったのにぃ」
実はローゼ嘘をついている。アゲハのアイマスクは宝石がちりばめられていて高く売れそうだったので、ポシェットの中に隠し持っていた。現状ポシェットないけれど。
でも鷲のアイマスクの話を聞いて、ローゼびっくり。中に金属が仕込まれていたのは気がついていたけれど、それプラチナプレート(金の延べ棒と同価値)だったらしい。捨てなきゃよかった、と後悔するローゼ。
エルザが気づいて言う。
「あら? そういえばローゼ、ようやく女王様に目覚めたってわけね」
忘れてた。まだこんな恰好だったんだ。
そう言えば兵士が追いかけてこないと思ったら、エルザが従えているの全員兵士。洗脳早えー。
「待って、わたし今武器ないのよ」ローゼが、停戦を呼びかけた。
「問答無用! どっちかって言えばチャンス到来」
「キャーお助けー」
エルザに背中を向けたローゼ「何そのスカート?」とエミリアを見て呆気にとられる。
「あれ?」とエミリア気がつく。スカートの腰の部分を顔の輪郭に巻いていた。あ、開いた。エリマキトカゲみたいになっちゃってますけど……。
「それよりラッキー、そのスカート貸しなさいよ」とローゼがはぎとる。「ようやくセーラー服がそろったわ」
でも武器ないのは変わらない。
心配するエミリアに、「ふっ、武器ならここにありますよ」とローゼが微笑。胸のスカーフをほどいてムチに絡めて綱引き状態。でも長く続かない。スカーフはもたずにちぎれてしまった。
ローゼは、慌てて助けを求めてバトンタッチ……て――
「エミリアどこ?」
「あーはっはっはっはっ」
声のする方を見上げると、逆光で陰になったエミリアが腰に手をあてて叫んでいる。
「行くとこ来るとこ愉快のみ、わたしの人生あっはっは。超空手少女! 最強ヒロイン伝説 ラブリー・エミリア登場!」
ドカ~ン、とバックにピンク色の爆発が起こる。どこかで見た光景。まだヒロイン狙ってんのかよ。前もそうだったけれど、めっちゃカッコ悪いポーズ。ラブリーの欠片微塵もないよ。もう躁鬱通り越して、ハイになっちゃってるよ。
「ハイって廃人のハイとかかっているんですよねー」とエミリア。自虐ネタか? いや、分かって言ってねーなコイツ。このオントワーン2号め。
まあ次回はエミリアに任せましょう。
でも子供は恐怖で発狂乱。
「助けてぇ。変態女だ! 股間が骸骨の変態女だ!」
「ええっ?」ブルマじゃないの?
お股を見やるローゼ、ようやく気がついた。見ると、またぐらがシャレコウベになった黒鋼製パンツを穿いている。シャレコウベは白いものだから、これがまた目立つ目立つ。しかも裸足。もう最低。ちなみに対法術コーティングの黒鋼製だから、ローゼこの旅で一番の良い装備。でも代わりにレイピアとダガーがなくなっている。
「げっげっげっげっげっ」笑うシャレコウベに目掛けて、エミリアが氷水を浴びせかける。
「何すんのよ」ローゼが叫んだ。
「風邪には氷水を浴びせかけるのが良いらしいですよ」
いずこの荒治療だよ。
このやり取りの間に子供たちはいなくなって二人ぼっち。富豪たちも遠巻きに見ている。さすがにシャレコウベのパンツを穿いたやつなんかには関わらないほうが良い、と判断したらしい。
全然情報ないけれど、屋上を飛び跳ねて行く美穂の姿を発見。学校の敷地に入った美穂を追いかけて、体育館に侵入したローゼたち。暗幕が閉まっているせいか中は真っ暗。入ってきたドアも不意に締まって、何にも見えない。
急にスポットライトが壇上を照らす。二人は急いで席につく。
「表っ彰っ状っ、ローゼリッタ・クラインワルツ」と美穂の声が響く。
美穂の後ろに卒業式と書いてある。
「間違えた。卒っ業っ証っ書っ、ローゼリッタ・クラインワルツ」
「はいっ」
「あなたは、この三年間、偽物の胸を隠し通して卒業できることをここに証します」
台無しだよ。最後の日に台無しだよ。
「やっぱり入れ物だったんですね」エミリア確信を持って問いただす。
ちげーよ。お前、温泉で見ただろや?
「本物の方ですか?」
これ以外に何があったんだよ。
気を取り直して美穂ちゃんが叫ぶ。
「卒っ業っ証っ書っ、エミリア・ワトソン」
「はいっ」
「あなたは、バストのある同級生を羨むたびに、みんなから『これから大きくなるよ』って言われているけれど、実は小さいままだと内心思われているなんて気がつけもせずに卒業する目前で、校長のわたしに指摘されて、泣いて退学届を提出することをここに証します」
「はいっ」
じゃねーだろ。
「受理します」と美穂校長。
卒業させてやれよ、もう一日切ってんだからさ。
「泣かないで、エミリア」ローゼがエミリアに声をかけた。
「大丈夫です。大きければいいってもんじゃありませんから」
「そうそう、人間大事なのは中身だからね」
「むぎぎぎっ~」とローゼの一部を毟ろうとするエミリアの手を押さえつけながら慰めの言葉をかけるローゼが、なんとか暴漢を羽交い絞めにした時に気がついた。いつの間にか美穂いない。
外に出ると、聞きなれた高笑いが聞こえる。
「ほーほっほっほっほっ、ようやく見つけたわローゼリッタ」
「エルザ?」
今回は下着じゃない? 黒革製のプレイスーツ? めっちゃハイレグ。胸の谷間からおへその下R目前ギリギリまで割れていて、紐で斜め十字に三か所結ばれている。背中もバックリ割れていて、腰の部分だけ斜め十字の紐が一つ蝶結び。今回は膝丈の黒ブーツだけれど、ヒールは最初に会ったときより高くなっている。よく綺麗に歩けるな。しかもヒールの先が尖っている。ちなみにマスクは孔雀の羽。
「鷲のアイマスクと揚羽のアイマスクを返してもらいにきたわ」
「だ・か・らっ、両方とも持っていないわよ。捨てちゃったから」
「なんですって?」驚くエルザ。「結構高価なものだったのにぃ」
実はローゼ嘘をついている。アゲハのアイマスクは宝石がちりばめられていて高く売れそうだったので、ポシェットの中に隠し持っていた。現状ポシェットないけれど。
でも鷲のアイマスクの話を聞いて、ローゼびっくり。中に金属が仕込まれていたのは気がついていたけれど、それプラチナプレート(金の延べ棒と同価値)だったらしい。捨てなきゃよかった、と後悔するローゼ。
エルザが気づいて言う。
「あら? そういえばローゼ、ようやく女王様に目覚めたってわけね」
忘れてた。まだこんな恰好だったんだ。
そう言えば兵士が追いかけてこないと思ったら、エルザが従えているの全員兵士。洗脳早えー。
「待って、わたし今武器ないのよ」ローゼが、停戦を呼びかけた。
「問答無用! どっちかって言えばチャンス到来」
「キャーお助けー」
エルザに背中を向けたローゼ「何そのスカート?」とエミリアを見て呆気にとられる。
「あれ?」とエミリア気がつく。スカートの腰の部分を顔の輪郭に巻いていた。あ、開いた。エリマキトカゲみたいになっちゃってますけど……。
「それよりラッキー、そのスカート貸しなさいよ」とローゼがはぎとる。「ようやくセーラー服がそろったわ」
でも武器ないのは変わらない。
心配するエミリアに、「ふっ、武器ならここにありますよ」とローゼが微笑。胸のスカーフをほどいてムチに絡めて綱引き状態。でも長く続かない。スカーフはもたずにちぎれてしまった。
ローゼは、慌てて助けを求めてバトンタッチ……て――
「エミリアどこ?」
「あーはっはっはっはっ」
声のする方を見上げると、逆光で陰になったエミリアが腰に手をあてて叫んでいる。
「行くとこ来るとこ愉快のみ、わたしの人生あっはっは。超空手少女! 最強ヒロイン伝説 ラブリー・エミリア登場!」
ドカ~ン、とバックにピンク色の爆発が起こる。どこかで見た光景。まだヒロイン狙ってんのかよ。前もそうだったけれど、めっちゃカッコ悪いポーズ。ラブリーの欠片微塵もないよ。もう躁鬱通り越して、ハイになっちゃってるよ。
「ハイって廃人のハイとかかっているんですよねー」とエミリア。自虐ネタか? いや、分かって言ってねーなコイツ。このオントワーン2号め。
まあ次回はエミリアに任せましょう。
応援ありがとうございます!
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