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第五十四話 ついに終局 ラック・ウォーズ
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カトワーズ物悲しそうに「なんか同情するよ、許してあげても良くないか?」と言うが、ローゼ「よくない」と提案拒絶で「すぐに人殺すような悪いやつ」と、さっきの殺人を例に挙げた。
すると、紺髪ちゃんがきょとんとして言う。
「あの人死んでないよ」
見ると、倒れているはずの斬られた男がいなくなってる。
「あれれ? どこ行ったの?」とローゼが探す。
すると、馬車の後部に座って「ここ、ここー」と死んだはずの男が手を振った。
「そんな血まみれでなんで生きてんの?」とローゼびっくり。
訊くと、さっきお昼中だったらしい。食べていたホットドックが斬られてケチャップまみれ。
なんだよ、首元の赤いのケチャップかよ。
「がはは」と照れ笑う男。
お前戦わずになに横流し物資漁ってんだよ。
死んだはずの男、「いや、昼飯台無しだから、フィーリアンバケットとワインでもくすねようかなって」頭ポリポリ。
「貴様、よくも堂々と」とサーベルを振り上げるルイス。
「ぎゃー」と逃げる男を追って馬車のホロの中へ入ってバッサリ両断。血飛沫がホロに滲みる。ほんとに斬りやがった。男の服を削ぎ取って、刃についた血しぶきを拭き取るルイスが出てきた。その後ろからワインまみれの男も続く。その手には、横流しの宝石がジャラジャラしてる。なんか、くすねられまくってますけど……。
よく見ると、宝石といっても高価な石じゃなさそうだし、貝殻のも多い。なんだよ。大した儲けにもならなそうじゃん。ルイス小物だなぁ。
それに気づかずルイスが言った。
「そろそろお終いにしてやろう」とほくそ笑む。
戦闘再開。振り下ろされるサーベルをツーリックステップでかわすローゼ。グリップをやや下方に置いた“第三の構え”で迎え撃つ。
突然「ぎゃー」と叫ぶルイス。何? 何もしていないのに。見ると、自分で自分の踏み出した左足を斬りつけている。
「くそ、足さばきの間違いを突くとは卑怯な!」
勝手に斬ったんだろ?
「ふ、よく見ろ。親指と人差し指の間だから、斬れてっなーい」
皮ブーツはバックリいってるけどな。指落とせば良かったのに。
フォムターグに構えたルイスが、ローゼににじり寄る。斬り合いが今始まるというちょうどその時、そばにいた馬がルイスを蹴り上げた。
蹄鉄の跡がくっきりと残った顔面血まみれでルイズが叫ぶ。
「くそっ、援軍か!」
いや、お前んところの軍馬では?
「悲惨」とローゼ。
「嫌われてますね」とエミリア付け加える。
もはや、兵士もマフィアも疲労困憊、戦う意欲全然ない。あとはローゼが決めるだけ。
突きだすサーベルとの接触を回避しつつ、レイピアを回転させてから間髪入れずに吊下げの連打。それを目くらましにして、ルイスの動きを封じ込める。堪らず大振りで振り回したサーベルに払われた攻撃を変化させて、ローゼすかさず刺突で追撃。ルイスは攻撃を打ち払って位置転換を試みるも、位置を勝ち得たローゼに阻まれ死地から出られず。苦し紛れで振るわれたサーベルをリポスト(受け流し)して通り抜け、ローゼはソードレスリング(組討)に持ち込んだ。
さらに一歩踏み込んで懐に駆け込み、ヒルト附近でバインドしつつ、左の二の腕と腕でサーベルを持つ腕を絡めとる。ルイスのお尻を腰に乗せて、足を引っ掛け大外がり風に引き倒した。
その時にサーベルを奪い取られて丸腰ルイス。周章口調で叫び散らした。
「待て! 刺すな! お前騎士道精神はどうした!」
「悪党に騎士道精神は必要ないですもんね!」
斬り込んだローゼの刃をジャンプして避けたルイスは、一度地に手を突いてバック転、上手く着地――失敗。いや、成功したのだけれども、膝をバネにして深く腰を落とした瞬間にビリッ。すっごい音がして、一瞬全戦闘が停止した。
ケツ割れた! こいつケツ割れたよ。「ぷぷぷー」と吹きだすローゼ。社会の窓から拝めていたけど白地に青い水玉模様、形はトランクス。「あ、ブリーフじゃないんだ」この旅で見た男の下着、全部ブリーフ(一人Tバック)だったから、なんかとっても新鮮気分。
「見るなっ、みんな見るなっ、見たやつ全員殺す」赤面のルイスが怒鳴り散らす。
でも今まで殺せたやつ皆無です。
「あれ?」とローゼ。「何でわたしのダガーもってんの?」
実はローゼがサーベルを奪った直後、たまたまローゼの腰にあったダガーのフックヒルトにルイスの小指が引っ掛かって抜き取られたのでした。もちろん偶然、無意識的に。たまたま握ってしまっただけ。
「こんにゃろ返せ」とルイスめがけて攻め上がるローゼ、「脳天もらった」と狙い定めて突きだすレイピア。絶命必死。「へっくしょん!」「へ?」とローゼ。ルイス、頭だけがうまく攻撃線から綺麗に外れた。でも関係ない。そのまま空いた首筋を撫で斬りにしてやる。―――とローゼが思った瞬間――ルイスの真後ろから流れ矢が飛んできた。
ルイスの左耳を掠めて、右足を踏み出して突きを放つローゼの眉間めがけて一直線。
「あっぶー!」
直前で腰を落としてしりもちをついたローゼ、間一髪でなんとか避けれた。すぐに顔をあげるローゼめがけて、拾ったサーベルが振り下ろされる。
慌てて立ち上がったローゼが上手くサーベルをいなし、左手をカップ・ヒルトに引っ掛けて奪い取って投げ捨てる。ナックルガードがあるのに、簡単に奪われるって、どんな握り方してたんだ?
まあその方が良かったかもね。ちゃんと握れていたら、強く捻られて指折れていたから。
もはやこれまでと観念したのか、ルイス人目も気にせず土下座をかます。お侍様もびっくりだ。土下座道極めけり。
「本当にすいませんでしたぁぁぁ。これからはぁぁぁ、心を入れ替えてやってきますからぁぁぁ、どうかぁぁ、どぉぉうかっ今回ばかりはお許しくださいィィィィィぃー」
マジで泣いている感じ。
「命ばかりはっ、どうか命ばかりはお助けをォォォ!」と泣きすがる。
土下座って初めて見た、とローゼたち三人。ジパング伝統の謝罪法。でも「よく見るよな」と兵士たち。国は違えど必死になるとおんなじようになるみたい。
「もはやぁぉぁぁ、逆らう気など微塵もありませんからアァぁああァァァ~」
割れんばかりに声を張り上げ、ルイスが叫ぶ。挙げ句の果てには五体投地。
ローゼ「もうなんかどうでもいいや」見逃すことにした。
言下にキラリーン、ルイスの目が光る。隙をついて落ちていたサーベルを拾って、ローゼを襲う。
背を向けたローゼは、目だけで後ろを見やって頭を傾けて刃を避ける。サーベルを振りきったルイスを待ち受けていたエミリアが、右回し蹴りを顔面に見舞わせた。勢いよく転げていったルイスは、顔面から馬糞の上に落ちて、大股広げてうつ伏せにノックアウト。お尻だけが高々と上がっている。
すかさずカトワーズがパシャッと激写。持っていた悪魔牙団の名簿の裏に、綺麗なお粗末シーンが念写された。
立ち上がろうとするルイス。その目には怒りが見受けられる。糞まみれだけど。
「お、まだやるの?」と言うカトワーズ。「良いんだぞ、この念写紙(羊皮紙)複製して全世界にばらまいても」
コイツの財力ならやりかねない。中央亜大陸南部の死の大地にだって撒き散らせそう。
ヨロヨロと立ち上がった糞まみれ顔面のルイスを脅すカトワーズを前に、ワナワナ震えるルイスは撤退を決意。みんなに指示を飛ばす。
やっと一件落着、ホッと胸をなでおろすローゼ。だが勝って兜の緒を絞めろ、とはよく言ったものだ。愛馬に跨ったルイスは、気を抜いたローゼをひき殺そうと襲ってきた。
「危ない!」と叫ぶエミリア。しりもちをついたローゼは、ここまでか! と瞳を閉じた。その瞬間「ひひーん」嘶くルイスの愛馬。ローゼが目を開けると、眼前で前足を高々と上げている。踏みつぶす気か? だがその足まだまだ上がる上げすぎだ。いや、わざと上げてんの? 馬はそのままひっくり返ってルイスを背中で踏みつぶす。しかもさっき二度(足と顔で)踏んだうんこと馬のサンドウィッチ。何度もルイスの上でのた打ち回った馬は、しばらくしてから難なく起き上がって、走り去っていく。
「待てっ! ちょっと! 足が! 助けてー」
ルイスのブーツが馬の尻尾に引っ掛かって、パカパカ蹴られながら引きずられていく。そのまま視界の向こうに消えていった。
「少佐ー、待ってくださーい」と兵士とマフィアたちが追いかけていく。
唖然呆然。ローゼたちは見送った。
すると、紺髪ちゃんがきょとんとして言う。
「あの人死んでないよ」
見ると、倒れているはずの斬られた男がいなくなってる。
「あれれ? どこ行ったの?」とローゼが探す。
すると、馬車の後部に座って「ここ、ここー」と死んだはずの男が手を振った。
「そんな血まみれでなんで生きてんの?」とローゼびっくり。
訊くと、さっきお昼中だったらしい。食べていたホットドックが斬られてケチャップまみれ。
なんだよ、首元の赤いのケチャップかよ。
「がはは」と照れ笑う男。
お前戦わずになに横流し物資漁ってんだよ。
死んだはずの男、「いや、昼飯台無しだから、フィーリアンバケットとワインでもくすねようかなって」頭ポリポリ。
「貴様、よくも堂々と」とサーベルを振り上げるルイス。
「ぎゃー」と逃げる男を追って馬車のホロの中へ入ってバッサリ両断。血飛沫がホロに滲みる。ほんとに斬りやがった。男の服を削ぎ取って、刃についた血しぶきを拭き取るルイスが出てきた。その後ろからワインまみれの男も続く。その手には、横流しの宝石がジャラジャラしてる。なんか、くすねられまくってますけど……。
よく見ると、宝石といっても高価な石じゃなさそうだし、貝殻のも多い。なんだよ。大した儲けにもならなそうじゃん。ルイス小物だなぁ。
それに気づかずルイスが言った。
「そろそろお終いにしてやろう」とほくそ笑む。
戦闘再開。振り下ろされるサーベルをツーリックステップでかわすローゼ。グリップをやや下方に置いた“第三の構え”で迎え撃つ。
突然「ぎゃー」と叫ぶルイス。何? 何もしていないのに。見ると、自分で自分の踏み出した左足を斬りつけている。
「くそ、足さばきの間違いを突くとは卑怯な!」
勝手に斬ったんだろ?
「ふ、よく見ろ。親指と人差し指の間だから、斬れてっなーい」
皮ブーツはバックリいってるけどな。指落とせば良かったのに。
フォムターグに構えたルイスが、ローゼににじり寄る。斬り合いが今始まるというちょうどその時、そばにいた馬がルイスを蹴り上げた。
蹄鉄の跡がくっきりと残った顔面血まみれでルイズが叫ぶ。
「くそっ、援軍か!」
いや、お前んところの軍馬では?
「悲惨」とローゼ。
「嫌われてますね」とエミリア付け加える。
もはや、兵士もマフィアも疲労困憊、戦う意欲全然ない。あとはローゼが決めるだけ。
突きだすサーベルとの接触を回避しつつ、レイピアを回転させてから間髪入れずに吊下げの連打。それを目くらましにして、ルイスの動きを封じ込める。堪らず大振りで振り回したサーベルに払われた攻撃を変化させて、ローゼすかさず刺突で追撃。ルイスは攻撃を打ち払って位置転換を試みるも、位置を勝ち得たローゼに阻まれ死地から出られず。苦し紛れで振るわれたサーベルをリポスト(受け流し)して通り抜け、ローゼはソードレスリング(組討)に持ち込んだ。
さらに一歩踏み込んで懐に駆け込み、ヒルト附近でバインドしつつ、左の二の腕と腕でサーベルを持つ腕を絡めとる。ルイスのお尻を腰に乗せて、足を引っ掛け大外がり風に引き倒した。
その時にサーベルを奪い取られて丸腰ルイス。周章口調で叫び散らした。
「待て! 刺すな! お前騎士道精神はどうした!」
「悪党に騎士道精神は必要ないですもんね!」
斬り込んだローゼの刃をジャンプして避けたルイスは、一度地に手を突いてバック転、上手く着地――失敗。いや、成功したのだけれども、膝をバネにして深く腰を落とした瞬間にビリッ。すっごい音がして、一瞬全戦闘が停止した。
ケツ割れた! こいつケツ割れたよ。「ぷぷぷー」と吹きだすローゼ。社会の窓から拝めていたけど白地に青い水玉模様、形はトランクス。「あ、ブリーフじゃないんだ」この旅で見た男の下着、全部ブリーフ(一人Tバック)だったから、なんかとっても新鮮気分。
「見るなっ、みんな見るなっ、見たやつ全員殺す」赤面のルイスが怒鳴り散らす。
でも今まで殺せたやつ皆無です。
「あれ?」とローゼ。「何でわたしのダガーもってんの?」
実はローゼがサーベルを奪った直後、たまたまローゼの腰にあったダガーのフックヒルトにルイスの小指が引っ掛かって抜き取られたのでした。もちろん偶然、無意識的に。たまたま握ってしまっただけ。
「こんにゃろ返せ」とルイスめがけて攻め上がるローゼ、「脳天もらった」と狙い定めて突きだすレイピア。絶命必死。「へっくしょん!」「へ?」とローゼ。ルイス、頭だけがうまく攻撃線から綺麗に外れた。でも関係ない。そのまま空いた首筋を撫で斬りにしてやる。―――とローゼが思った瞬間――ルイスの真後ろから流れ矢が飛んできた。
ルイスの左耳を掠めて、右足を踏み出して突きを放つローゼの眉間めがけて一直線。
「あっぶー!」
直前で腰を落としてしりもちをついたローゼ、間一髪でなんとか避けれた。すぐに顔をあげるローゼめがけて、拾ったサーベルが振り下ろされる。
慌てて立ち上がったローゼが上手くサーベルをいなし、左手をカップ・ヒルトに引っ掛けて奪い取って投げ捨てる。ナックルガードがあるのに、簡単に奪われるって、どんな握り方してたんだ?
まあその方が良かったかもね。ちゃんと握れていたら、強く捻られて指折れていたから。
もはやこれまでと観念したのか、ルイス人目も気にせず土下座をかます。お侍様もびっくりだ。土下座道極めけり。
「本当にすいませんでしたぁぁぁ。これからはぁぁぁ、心を入れ替えてやってきますからぁぁぁ、どうかぁぁ、どぉぉうかっ今回ばかりはお許しくださいィィィィィぃー」
マジで泣いている感じ。
「命ばかりはっ、どうか命ばかりはお助けをォォォ!」と泣きすがる。
土下座って初めて見た、とローゼたち三人。ジパング伝統の謝罪法。でも「よく見るよな」と兵士たち。国は違えど必死になるとおんなじようになるみたい。
「もはやぁぉぁぁ、逆らう気など微塵もありませんからアァぁああァァァ~」
割れんばかりに声を張り上げ、ルイスが叫ぶ。挙げ句の果てには五体投地。
ローゼ「もうなんかどうでもいいや」見逃すことにした。
言下にキラリーン、ルイスの目が光る。隙をついて落ちていたサーベルを拾って、ローゼを襲う。
背を向けたローゼは、目だけで後ろを見やって頭を傾けて刃を避ける。サーベルを振りきったルイスを待ち受けていたエミリアが、右回し蹴りを顔面に見舞わせた。勢いよく転げていったルイスは、顔面から馬糞の上に落ちて、大股広げてうつ伏せにノックアウト。お尻だけが高々と上がっている。
すかさずカトワーズがパシャッと激写。持っていた悪魔牙団の名簿の裏に、綺麗なお粗末シーンが念写された。
立ち上がろうとするルイス。その目には怒りが見受けられる。糞まみれだけど。
「お、まだやるの?」と言うカトワーズ。「良いんだぞ、この念写紙(羊皮紙)複製して全世界にばらまいても」
コイツの財力ならやりかねない。中央亜大陸南部の死の大地にだって撒き散らせそう。
ヨロヨロと立ち上がった糞まみれ顔面のルイスを脅すカトワーズを前に、ワナワナ震えるルイスは撤退を決意。みんなに指示を飛ばす。
やっと一件落着、ホッと胸をなでおろすローゼ。だが勝って兜の緒を絞めろ、とはよく言ったものだ。愛馬に跨ったルイスは、気を抜いたローゼをひき殺そうと襲ってきた。
「危ない!」と叫ぶエミリア。しりもちをついたローゼは、ここまでか! と瞳を閉じた。その瞬間「ひひーん」嘶くルイスの愛馬。ローゼが目を開けると、眼前で前足を高々と上げている。踏みつぶす気か? だがその足まだまだ上がる上げすぎだ。いや、わざと上げてんの? 馬はそのままひっくり返ってルイスを背中で踏みつぶす。しかもさっき二度(足と顔で)踏んだうんこと馬のサンドウィッチ。何度もルイスの上でのた打ち回った馬は、しばらくしてから難なく起き上がって、走り去っていく。
「待てっ! ちょっと! 足が! 助けてー」
ルイスのブーツが馬の尻尾に引っ掛かって、パカパカ蹴られながら引きずられていく。そのまま視界の向こうに消えていった。
「少佐ー、待ってくださーい」と兵士とマフィアたちが追いかけていく。
唖然呆然。ローゼたちは見送った。
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