7 / 35
シーツの下に蠢く夜話
蛾
しおりを挟む
ある日の夜に男は目を覚めた。男の話し声が聞こえる。ロシア語のようだ。その日は眠くて放っておいたが、毎日毎日聞こえるようになった。
男は窓から外を窺ったが誰もいない。1人暮らしだから、家の中には自分しかいない。ラジオはついていないし、テレビもついていない。だが、毎日そのロシア語は聞こえた。
「誰か……いるんですか?」
横になったまま勇気を振り絞って男が訊いてみると、突然そのロシア語は聞こえなくなった。
その日一晩聞こえなかったが、次の日からまた聞こえる。夜になると必ず聞こえた。
よく聞いていると、その声は誰かと会話をしているようだ。2人か3人いるが、1人が一方的に話している。
毎日聞いていると、だんだんと聞いているのが楽しくなってきた。ロシアのパインを使った家だから、外国の妖精を連れてきたのかと思うようになったからだ。男は、このロシア語を子守唄にして寝るようになった。
3月に竣工して数か月したある日、遂にもう1人の声が聞こえるようになった。2、3人だとは思っていたが、2人だった。しかし、同時にバサバサバサという音が毎晩聞こえるようになった。
この音に慣れることの出来なかった男は、聞こえる度に電気をつけたが、音の主は分からない。
何日も音に起こされては電気をつけて探し回り、見つからずにまた消して寝ていた。
しばらくしたある日、遂に音の主を発見した。
手のひら大の大きな蛾が2匹、寝室を飛び回っている。悍ましい気持ちになって、急いで殺虫剤を持ってきた男は、2匹の蛾に狙いを定めて噴射した。
バサバサバサとのた打ち回る蛾が死ぬのを待って、男はトイレットペーパーでくしゃくしゃに包んで、窓から捨てた。
その日以来、ロシア語は聞こえなくなった。
男が住んでいる家は、ロシアで角ログに加工されてから日本に持ち込まれたものだった。輸入時にたまたま蛾の卵がついていて、それが孵化したのだろう。
男は窓から外を窺ったが誰もいない。1人暮らしだから、家の中には自分しかいない。ラジオはついていないし、テレビもついていない。だが、毎日そのロシア語は聞こえた。
「誰か……いるんですか?」
横になったまま勇気を振り絞って男が訊いてみると、突然そのロシア語は聞こえなくなった。
その日一晩聞こえなかったが、次の日からまた聞こえる。夜になると必ず聞こえた。
よく聞いていると、その声は誰かと会話をしているようだ。2人か3人いるが、1人が一方的に話している。
毎日聞いていると、だんだんと聞いているのが楽しくなってきた。ロシアのパインを使った家だから、外国の妖精を連れてきたのかと思うようになったからだ。男は、このロシア語を子守唄にして寝るようになった。
3月に竣工して数か月したある日、遂にもう1人の声が聞こえるようになった。2、3人だとは思っていたが、2人だった。しかし、同時にバサバサバサという音が毎晩聞こえるようになった。
この音に慣れることの出来なかった男は、聞こえる度に電気をつけたが、音の主は分からない。
何日も音に起こされては電気をつけて探し回り、見つからずにまた消して寝ていた。
しばらくしたある日、遂に音の主を発見した。
手のひら大の大きな蛾が2匹、寝室を飛び回っている。悍ましい気持ちになって、急いで殺虫剤を持ってきた男は、2匹の蛾に狙いを定めて噴射した。
バサバサバサとのた打ち回る蛾が死ぬのを待って、男はトイレットペーパーでくしゃくしゃに包んで、窓から捨てた。
その日以来、ロシア語は聞こえなくなった。
男が住んでいる家は、ロシアで角ログに加工されてから日本に持ち込まれたものだった。輸入時にたまたま蛾の卵がついていて、それが孵化したのだろう。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
AstiMaitrise
椎奈ゆい
ホラー
少女が立ち向かうのは呪いか、大衆か、支配者か______
”学校の西門を通った者は祟りに遭う”
20年前の事件をきっかけに始まった祟りの噂。壇ノ浦学園では西門を通るのを固く禁じる”掟”の元、生徒会が厳しく取り締まっていた。
そんな中、転校生の平等院霊否は偶然にも掟を破ってしまう。
祟りの真相と学園の謎を解き明かすべく、霊否たちの戦いが始まる———!
[完結済]短めである意味怖い話〜ノロケ〜
テキトーセイバー
ホラー
短めである意味怖い話を集めてみました。
オムニバス形式で送りいたします。
※全て作者によるフィクションです。
タイトル変更しました。
深夜2時
まさみ
ホラー
ある男が見る累々と散らかる位牌の夢、絶対エレベーターに乗りたがらない友人、通学路で拾った泣き袋……。
日常と非日常の狭間に潜む怪異を描いた短編集。
オカルトからヒトコワまで原則一話完結でさくっと読めます。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる