猫のモモタ

緒方宗谷

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屋久杉の森のお友達

贅沢して余ったもの

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 別のヤクサルがやって来て言いました。
 「僕たちが、どんちゃかどんちゃか騒いでごはんを食べていると、その騒ぎを聞きつけて、どこからでもヤクジカたちは遊びにきてくれるんだ」
 「食べていない実を落としてあげれば、一番甘いところも食べさせてあげられるんじゃない?
  そうしたら、ヤクジカたちも喜ぶと思うよ」
 すると、ヤクサルは、とっても真剣な顔をして言いました。
 「なんのためにそんなことしてあげるの?」
 「え?それはもちろんヤクジカのためだよ」
 「ヤクジカは自分でごはんと取って食べられるよ。
木になってい実が一番おいしい時に、採りに上れないってだけさ。
  もし僕たちがいなくても、それなりに自分で何かをとって食べていると思うよ」
 「それはそうだろうけど、たくさん実はなっているんだから、自分たちもあまり甘くないところを食べて、甘いところをあげてもいいんじゃない?」
 「それで、ヤクジカたちが本当に喜ぶと思うかい?
  初めは喜ぶかもしれないけれど、最後には泣きを見ることになるんだよ。
  いいかい、考えてごらん。
  僕たちがごはんを全部世話してあげたら、彼らは自分でごはんを探そうとはしなくなるよ。
  そうしたら、他のお友達にごはんをとられて、彼らは食べることにも事欠くようになるだろうね。
  僕たちにおんぶにだっこ。僕たちなしじゃ生きていけない。それって喜ばしいことなのかな?
  僕は思うんだよ。食事に招待するのと、食事をめぐんであげるのとは違うんだ。
  僕たちは、曲がりなりにもお友達なんだ。
  別にヤクジカたちは僕たちの子分じゃないし、僕たちがヤクジカたちの子分でもない。
  恵んであげたら、ヤクジカは僕たちよりも下、子分になっちゃうよ。
  もし僕たちが、自分の食べる分も我慢して、甘い所をあげたら、僕たちがごはん探しに使われているだけの子分になっちゃう。
  そんなの友達だって言えないじゃない」
 確かにそうです。お友達とは対等な関係を言うのです。それが物理的であっても精神的であっても。
 ヤクサルは続けて言いました。
 「今の時期には、食べ切れないほどのたくさんの実がなる。放っておいたら、食べどきを逃して、落ちてしまう。
  落ちた実は、あまり甘くないところよりもおいしくない。
  だから、ヤクジカたちにとっては、お食事会の方が楽しいはずだよ。
  だから、お食事に招待するんだ。喜んでもらえると嬉しいし、僕たちにとっても、どんちゃん騒ぎをする理由になるからね。
  モモタの言うようにしたら、楽しいお食事会も楽しくなくなっちゃう。
  お行儀良すぎは、食べどきを逃しちゃうよ」
 モモタは、初めて贅沢って大事なんだなぁ、と思いました。


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