猫のモモタ

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
444 / 501
モモタとママと虹の架け橋

第九十話 第一勘

しおりを挟む
 第四景 募る想い

(シルチとアゲハちゃん、チムが、気を失ったオーサンを岩場に隠し、看病して行ったり来たり)

シルチ 「わたしは健気な女の子、献身的にお世話する。
     わたしは可愛い女の子、見ず知らずのイルカを助けるの」

侍女合唱「トゥルットゥー、トゥルットゥー」 
    
シルチ 「海草をたくさん持ってきて」

侍女合唱             「はい」

シルチ 「藻をたくさん持ってきて」

侍女合唱            「はい」

シルチ 「誰にも見つからないように、海藻で姿を隠しましょう。
     大丈夫よ、ここはわたしの遊び場なんだもの、誰も来やしないから」
(侍女たちに)
    「まだ足りないわ、姿が見えてしまいます」
(オーサンを撫でながら)     
    「体も冷たい、温めてあげなければ」
(体を寄せる)
    「ああ、可愛い寝顔ね、これが平穏の中ででしたなら、
     どんなによかったことでしょう」
(空を見上げて)
    「でも本当に、このイルカはいずこから来たの? 
     一番近いイルカの住処、それも深みのずっと向こう。
     フカの谷を越えた向こうだから、大嵐に遭ってさえなお、
     死なずにここまで流されてくることなんてありえない」

アゲハちゃん                     
       「まさか嵐の中を?」

チム  「ありえないわ(泳いできたなんて)」

シルチ 「もしそうだとしたのなら、なんという冒険心でしょう。
     憧れてしまうわ、だってわたしじゃ大海には泳ぎだせないもの。
     とても端整な顔立ちね、荒くれ者なんかじゃないのは確か、
     華奢なようでしっかししてるし、
     背びれと胸びれの曲線美、素朴であるのに優雅過ぎる、
     尾びれの優しいさまといったら、心を表しているようだわ」

アゲハちゃん
    「…もう陽が暮れる」

チム  「…空が茜色に変わり始める」

アゲハちゃん
    「シルチ様、シルチ様、もう帰りましょう、
     予定よりだいぶ太陽が傾きました」

チム  「両陛下もご心配なされていることでしょう」

シルチ 「そうね、夜の間に、流されないように、しっかりくるめてあげましょう」

アゲハちゃん
    「お会いする約束だった方々は、今どうしていることでしょう?」

シルチ 「はてそれは、誰のことだったかしら…、…、…、…
     そう言えば婿選び? だったかしら…。
     忘れていたけど、まあいいわ」

アゲハちゃん
    「ああ哀れ」

チム  「ああ哀れ」


 第五景 確信

(オーサンが隠されている岩場。夜更け。満天の星が天に瞬く)

オーサン「ああ、昼間の天使は夢だったのか、
     とても可憐で優しい声が囁いていた、赤子をあやすように。
     三枚に下ろされた姿をした死神どもから、
     身を挺して僕を守った、あの温もりは、微睡の中だけれども、
     しっかりと肌に残る感覚、とても夢とは思えない。
     暖かい水面のせいなのか、いいや違う、断じて違う、
     降り注いだ日差しが、残していった情けなのか、いいや違う、
     断じて違う」
(体に巻き付いた海藻を解こうと回転しながら)
    「夢じゃない、幻でもない、間違いない、現実だ、
     天使は本当にいたんだ、ここに。
     月明かりに照らされた、海にはサンゴが開いて広がり、
     岩に囲まれた浅瀬の内は、波穏やかな優しいゆりかご。
     あの大嵐の時でさえ、僕がもまみまかれて投げられたほどの、
     大波渦巻かなかったはず。
     こんなに豊かな海であるなら、イルカが住んでいてもおかしくない。
     僕を癒すために天使は、傷を塞ぐために天使は、
     この体に海藻を撒きつけたんだ」
(北の方角にひときわ輝く星を見やりながら)
    「北極星があそこなら、僕のお家は向こうの方だ。
     星の配列、月の満ち欠け、だいぶ遠くに流されたようだが、
     これならまだ帰れるぞ。
     朝一番で出発だ、まずは帰って傷を癒す、
     天使が…、微睡む瞳に焼き付いた天使が…、
     僕を救ってくれたのだ。
     まだ死ぬなってことだろう、これこそ運命、
     冒険の向こうに、まだ見ぬ君、待っていてくれ。
     僕を助けたのは、海に溶けた君の優しさ、
     君は気付かないうちに、僕を助けたんだ、そして奪った僕の心を」
(眠りにつく)

(徐々に暗転して、幕が下りる)
     








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~

友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。 全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

おっとりドンの童歌

花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。 意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。 「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。 なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。 「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。 その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。 道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。 その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。 みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。 ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。 ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミでヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。 ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?

剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?二本目っ!まだまだお相手募集中です!

月芝
児童書・童話
世に邪悪があふれ災いがはびこるとき、地上へと神がつかわす天剣(アマノツルギ)。 ひょんなことから、それを創り出す「剣の母」なる存在に選ばれてしまったチヨコ。 天剣を産み、これを育て導き、ふさわしい担い手に託す、代理婚活までが課せられたお仕事。 いきなり大役を任された辺境育ちの十一歳の小娘、困惑! 誕生した天剣勇者のつるぎにミヤビと名づけ、共に里でわちゃわちゃ過ごしているうちに、 ついには神聖ユモ国の頂点に君臨する皇さまから召喚されてしまう。 で、おっちら長旅の末に待っていたのは、国をも揺るがす大騒動。 愛と憎しみ、様々な思惑と裏切り、陰謀が錯綜し、ふるえる聖都。 騒動の渦中に巻き込まれたチヨコ。 辺境で培ったモロモロとミヤビのチカラを借りて、どうにか難を退けるも、 ついにはチカラ尽きて深い眠りに落ちるのであった。 天剣と少女の冒険譚。 剣の母シリーズ第二部、ここに開幕! 故国を飛び出し、舞台は北の国へと。 新たな出会い、いろんなふしぎ、待ち受ける数々の試練。 国の至宝をめぐる過去の因縁と暗躍する者たち。 ますます広がりをみせる世界。 その中にあって、何を知り、何を学び、何を選ぶのか? 迷走するチヨコの明日はどっちだ! ※本作品は単体でも楽しめるようになっておりますが、できればシリーズの第一部 「剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!」から お付き合いいただけましたら、よりいっそうの満腹感を得られることまちがいなし。 あわせてどうぞ、ご賞味あれ。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

理想の王妃様

青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。 王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。 王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題! で、そんな二人がどーなったか? ざまぁ?ありです。 お気楽にお読みください。

鎌倉西小学校ミステリー倶楽部

澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】 https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230 【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】 市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。 学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。 案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。 ……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。 ※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。 ※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。 ※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。 ※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)

処理中です...